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「29とJK」第6巻感想 次巻から「俺の彼女と部下が修羅場すぎる」になりそう

この記事は

「29とJK」第6巻の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

コミカライズの「29とJK」も読んでるのですけれど、4巻おまけ漫画で疑問がありました。
「アヤちゃん大勝利~!!」を「本家のセリフ」と称していて「?」だったのです。
なんのこっちゃと思って調べてみたら、なんのことはない「俺修羅」でしたか。
忘れてた自分が恥ずかしい。

そういえば当時も「愛衣ちゃん大勝利~!!」は好きなセリフでしたわ。
もう忘れないように自戒とし、最新刊の感想を書きます。

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©裕時悠示/Yan-Yam

鋭二の彼女と部下が修羅場すぎる

5巻で物語的には一区切り着いたので第2部突入という形でしょうか。
あとがきにもあったように、Wヒロインが物語を回し始めましたね。

この1年で鋭二も権力者に盾突く平社員から出世して、自分が権力者側になりました。
今まで通りに権力者に向かっていく物語は終わったのかもしれません。
とはいえまだまだ中間管理職(しかも下から数えた方がまだまだ早い地位)なのでまた悪と戦い始めるかもですけれど。

一先ずは2人の物語が語られるっぽいですね。
ということで、全く同じ発想をするWヒロイン。
奇跡的な一致に、本当に似てるな~なんて長閑なこと考えてますけれど、鋭二さんは気づいているんでしょうか。

一度ならず二度までも花恋を「妹」として綾に紹介してしまったことを。
投稿の際に花恋の履歴書を送っていることを。
綾が賞に纏わる内部資料を閲覧できる立場にいることを。

修羅場しか見えねぇ(ー∀ー;)

詰んでんだよな~。
ラブコメ的に修羅場しか見えないですが、お仕事方面も暗雲立ち込めてる感じです。

「冷凍美人」の意図

「冷凍美人」の章を読んでいて、ふと「今巻は短編集的な形式なのかな」と思いました。
本編ではない番外編的な雰囲気を感じたのです。
でも違ってましたよね。
がっつりと本編でした。


それでも、この章がじゃあ、「あなたの隣を歩きたい」の章に関わってるかというとそうでもないです。
お話し的に前振りって訳ではないし、曽根親子が出てきたわけでもありません。
今のところ独立してるお話になってるんですよね。

でもこのタイミングでわざわざ回想を主とした物語を挟んできたのですから、意図はあるはず!!
ということで考えてみたのですけれど、誰もが考えたであろうことしか思い浮かびませんでした。


先ずは綾の成長を示す為ですね。
新人研修時のプレゼンには具体性が欠け、抽象的な夢しか語れないでいました。
経験がなく、知識しか無い状態であったため、曽根息子の破綻した精神論の綻びすら見抜けませんでした。

それが1年で具体性を伴った立案が出来るまでに成長。
主業務を熟しつつ、1人で草案から作り込んだのですから物凄い成長ですね。
知識に経験が付いたからこそなんだと思いました。

1つの巻で、「2人の綾」を一緒に見せることで、その成長具合を明確に示せているのだと思います。
これが意図の1つ目。


で。
2つ目。
コネ。

世界3億部はむりげー

御旗廉太郎。
モデルは三木一馬さんかな?

ラノベ編集者として、数々のヒット作をプロデュースした後、独立。
経緯がとても似ている(笑

んでも、中身までは似てないのでしょうね。

ただの善い人の訳が無い。
もうさ、怪しさマックス。
だって3億部ですよ、3億部。

ありえないっしょ。

例えばですよ、同じような立ち位置で現実の人物と言えば、樹林伸さんが思い当たります。
「週刊少年マガジン」編集部出身で、現在は漫画原作者です。

氏ですら編集として関わった作品を含めても3億部行ってるかどうか微妙なところです。

「金田一少年」シリーズ(9000万部)、「GTO」(5000万部)、「シュート!」(4000万部)
主だったところはこの辺でしょうか。
あとは
「サイコメトラーEIJI」(1200万部)、「Get Backers-奪還屋-」(1800万部)、「エリアの騎士」(1100万部)
1000万部超えしてる作品はこの3作品で、全て合わせて2億部中盤あたりでしょうか。(原作のみだと1億5000万部ほどかな?)

圧倒的に凄すぎるキバヤシ隊長でも3億という数字は及んでなさそうなのに、漫画界よりも市場の小さいラノベを主戦場にして3億部なんて夢のまた夢ですよ。
(本編中に「漫画原作者としても活躍し、アニメ化を成し遂げている」という一説がありますが、これを最大限考慮しても3億という数字は大きすぎると考えます)
例え「世界」累計発行部数だとしても…です。

この数字のあり得なさは実感していただけますか?

本作は、実際の「お仕事ラノベ」として、この辺のバランス感覚が傑出してるんですよね。
誰でも突っ込めるくらいのフィクションを入れ込んでくることで、ラノベとして成立させているのでしょう。

うん。
この「現実でのあり得なさ」は当然わざとなのでしょう。

けれど、「作中世界ではあり得ること」として成立させる必要性があります。
それを踏まえて、僕の妄想。
御旗廉太郎はコネクションを使いまくっている。

コネを使ってるという妄想

沙樹が認めているのですから、彼の編集者としての実力は申し分ないのでしょうね。
原石を見抜く目も、磨く技術も優れているのだと思われます。

けれど、だからといって必ずしもヒット作を量産できる訳ではないのが、エンタメの世界。
アニメ化=ヒット作という定義は正しいわけではないですけれど、それでも「関わった作品が必ずアニメ化」なんてあり得ないこと。

「そのミハタというのがどれほどの人物かは知りませんが、出版にせよ映像にせよ、エンタメというのは『人気商売』です。
そして、人気商売に〝 絶対〟などという言葉は存在しない。
もし『自分の作品は絶対ヒットする』なんて言うクリエイターやプロデューサーがいれば、それは詐欺師以外の何者でもない。
違いますか?」

裕時悠示. 29とJK 6~あなたの隣を歩きたい~ (GA文庫)

まさに魔女が言うように、この言葉が、この作品世界内でも真理であると鋭二自身認めています。
ならば、その真理に反した「あり得ないこと」をしてる御旗はあり得ない手を使っているのでしょう。

それがコネなのだとしたら。
アニメ界と太いパイプを持っていて、それを使ってるのだとしたら。

若い頃にコネ無しで当てた時の作品で出来たパイプ。
そのパイプを全面的に利用して、打ち切りレベルの売上でもアニメ化してしまう。
アニメになれば、本は自動的に刷られる訳なので、体裁だけの「発行部数」は整います。
あとは、それでも赤字となるようなら読者に悟られないように打ち切ればいい。


作者は儲かる、出版社も傷を負わない、自身の名声は上がり、読者も「好きな作品がしっかりと終わって」満足する。
「誰も傷ついてないんだ理論」の完成。


傷ついている作者はいる筈なんですけれどね。

銀行が出資してる意味

兎も角「お仕事小説コンテスト」が胡散臭すぎるんですよ。
特に

コミカライズ、アニメ化、ドラマ化、その他メディアミックスを確約します!

ってところ。

自社で賄えるなら、コミカライズは確約出来るでしょう。
ビビッドブルーが漫画部門を持ってるかは知りませんけれど。
他は普通は無理ですよ。

通常であれば、コミカライズも元を取れる人気は必要だし、アニメ化、ドラマ化は言うに及ばず。
それを新人の未発表作に出来る約束じゃありません。
いくら「有名人」が主催する賞の副賞としてでも、不可能に思えます。
賭けにすらなってないというか。

そんな大博打に銀行が噛んでるの?
本当に?
あの、剣野がいる花菱中央銀行が?

出資自体がフェイク…な訳は流石に無い(訴えられるし)から、「銀行が回収できると踏んだうえでのプロジェクト」ということなのでは。
ならば、アニメ化かドラマ化が確定している。
しかも、どんな原作であっても大ヒットが見込めるようなスタッフ陣が決まっているのだとしたら…。


詐欺師に銀行はお金を貸しません。
なら、「こういった陣容でアニメ又は映画を作る予定です」と具体的かつ「貸したお金の回収が見込める」書類を出さないとなりません。
銀行がスポンサーに名を連ねているということは、そういうことなのでしょうね。

花恋に迫る圧倒的なウツ

さて、鋭二は御旗がコネで採否をしないという前提で物事を考えています。
花恋ともその前提で話をしている感じです。
だからこそ、花恋との間に摩擦が起きそうなのです。

御旗は花恋が「出資者の1つの社長の孫」と知りえる立場。
履歴書があるんです。調べれば簡単に分かりますしね。
当然「よりヒットを固くするため」に彼女の作品を内容に関わらず受賞させます。

花恋は「コネ」で受賞したと知れば、ショックを受ける筈です。
内容で選ばれなかったのだと。
恋も、仕事ですら「おじいちゃんの力」なのだと思い込んだら、彼女の落ち込みようは想像に難くありません。
今回以上に落ち込むのは明白。

鋭二も落ち込むでしょうね。
「想像できていて、事前のフォローができなかった」のだから。

鋭二の違和感の正体って、結局は「銀行が出資してる点」なのでしょうから。
おかしいと思っていて、けど「憧れ」がその考えに蓋をしてしまっていた。
ならば、鋭二のミスですよね。

2人の間に摩擦が起きそう。

終わりに

なにげに沙樹の過去も気になってます。
それを含めて、今までにないほどどんよりとした重い展開になりそう。