「弱キャラ友崎くん」 6.5巻ネタバレ感想
この記事は
「弱キャラ友崎くん」6.5巻の感想です。
ネタバレあります。
短編集
短編集はいつから「〇.5巻」表記になったんでしょうね。
気付いたら、多くの作品で統一して来てます。
別に普通にナンバリングしてしまって良いと思うんですけどね。
これが例えば「妹さえいればいい。」とかになるとどうなるんでしょう。
元々が短編集みたいな作品で「〇.5巻」とかになると、逆に長編になるとか意表を突いていて面白そうw
出オチなので、1度だけしか使えませんけれど、1回なんかのラノベでやってくんないかなw
「弱キャラ友崎くん」第6.5巻感想になります。
6巻の感想をコピペ
ちょっとワケあって、最初に僕の6巻の感想をそのまんま再掲させて頂きますね。
以下「ラスボス・日南さん」の項全てが6巻の感想部分に当たります。
ラスボス・日南さん
当然ですが、常に友崎の思考の一歩も二歩も先を行っている葵。
今回も見事に掌の上でしたね。
葵が匂わせていた告白フラグは、友崎はちゃんと気づいていたんでしょうか。
ここで個人的に「おっ」と思ったのが、友崎に誰が好きなのか尋ねたシーン。
6巻の中で、気になったシーンを挙げろと言われたら、にべもなく僕はここを挙げます。
「──風香ちゃん、みみみ、優鈴、花火。
そのなかであなたがいま付き合いたいのは、誰?それとも──私?」
(屋久ユウキ. 【Kindle限定 電子特典版付き】 弱キャラ友崎くん LV.6 (ガガガ文庫) より)
選択肢に葵自身を含んでいたのが衝撃でした。
この時点で、みみみの気持ちを悟っている葵。
近々彼女が友崎にアタックする事まで読んでいた可能性が高いです。
故に、友人が無駄に傷つかないように先手を打ったのでしょう。
結局この台詞は、友崎に自己肯定感の低さを正すように問うています。
弱キャラの核心を突いているんですよね。
友崎が変わらなければいけないのは、姿勢でも喋り方でも話題の広げ方でも人付き合いでもありません。
ここら辺は変わって当然の部分であって、本当に変わらないといけないのは、その考え方です。
「自分なんて」「自分ごときが」。
弱キャラは「周囲から必要とされていない」という思い込みから自己肯定感がやたらと低くなりがちです。
客観的かつ正当に自分を評価せずに、自虐に終始する。
その考え方の拙さは、水沢が端的に指摘しています。
自信の持てなさが、自分を必要以上に下げ、そのせいで彼を慕う人間の気持ちまで蔑ろにしてしまう。
つまり、「自分は選ばれる価値が無い」という間違った考えから、寄せられる好意を断り、それを誠意という言葉で正当化して誤魔化す恐れがあるってことですね。
誰かが正さない限り延々と繰り返しちゃいます。
強キャラになる為のボトルネックだし、みみみの想いを「間違った誠意」で台無しにされたくない。
効率的に攻略を進める葵らしい二重の効果を狙った台詞。
というのが素直な解釈です。
これを前提にしつつも、違った見方をするとちょっと面白いなと。
なんで攻略対象に自分を含めたんでしょうね。
意図はなく、からかい100%だったかもしれない。
ただ、そうじゃないんだとしたらと仮定して妄想しました。
みみみの想いを…というのが前提に合って、その上で「みみみと自分を選ぶようにさせたかった」のかなと。
2人同時攻略の対象をみみみと葵に絞らせる意図があると妄想します。
すると、優鈴を含めたのは、友崎に自分から以下の台詞を引きだたせる為になります。
「略奪愛になったのだとしても、それは恋愛という平等なルールの上で男としての魅力を競い合い、そのゲームに勝ったというだけの話。
恨まれるようなことじゃないし、お互いを高め合うという意味では長い目で見れば素晴らしいことであるとも言えるわ」
屋久ユウキ. 【Kindle限定 電子特典版付き】 弱キャラ友崎くん Lv.6 (ガガガ文庫)
結論から言うと、友崎に水沢と恋愛で競わせたいという狙いがありそうだなと。
自身への水沢の想いを利用しちゃう事になりますが、葵ならそれ位しちゃいそうだし。
水沢と恋愛に於いて競わせて、さらに男としての自信を持たせちゃう。
自己肯定感の是正とみみみからの想いの受け止め方。
さらには、水沢と競わせて自信を植え付ける。
3重の意図を含んだ問い掛けだった!!
だと面白いですね。
さておきまして、葵は友崎にとってラスボスになると思います。
それが恋愛としてなのか、単に強キャラになる為なのか、はたまた両方か。
兎角、ラスボス筆頭候補。
その為に友崎は葵についてもっともっと知らないといけません。
彼女は間違いなく過去に何かあったはずです。
過去の人生観を揺るがして、今の価値観を持つに至った理由が。
生まれた時から人生をゲームとして捉えて研鑽を積んできた訳では無く、そうなった動機があったはず。
そこに前回のたまちゃん騒動での葵の立ち振る舞いが関連してくるのでしょう。
たまちゃんをかつての自分とダブらせたのか。
かつて「正しくて」・「自分を貫いている」誰かを助けられなかったからなのか。
譲れない気持ちの根本を探れば、自ずと葵の仮面は剥がせる気がします。
きっとそういう展開が待ち受けている…。
今巻冒頭の2人のやりとりは、そんな布石にも思えました。
葵が友崎に実は惚れてて、自分の過去を暴いた上で水沢にも勝って欲しいと願ってたら、全て納得出来るんですが、そうならないかなぁ。
ここから6.5巻感想
ではでは、ここから6.5巻の感想を始めます。
ヒロインに分けて書いてみますね。
日南葵
6巻で僕が予想してた彼女の過去についてのエピソード。
もっとドラマティックな重い過去があると踏んでいたのですが、そうではなくて、(どちらかといえば)リアリティに溢れた、それでいて彼女らしい過去。
「なんの努力もしてこなかった人間が妬みなどの悪感情で努力した人間から成果をかっさらっていく」。
この構図に対する嫌悪を確かにするエピソードがあったと。
ま。確かに。
彼女の価値観がなんら間違ったものではないと思わせてくれるには十分なエピソードであったし、たまちゃんを支持した根幹が見えたものでした。
自分よりもすごい人がいたら、私はそれを認めて真似る。
もしくは教えを請うて学ぶ。
自分が欲しいものを持っている人がいたら、その人よりもすごくなって、むりやり奪い取る。
屋久ユウキ. 弱キャラ友崎くん Lv.6.5 (ガガガ文庫) (Kindle の位置No.288-290). 株式会社小学館. Kindle 版.
日南葵の全ての出発点となる思想ですね。
こういった過去を更に恋愛に絡めて来てるところが、巧妙なところですね。
恋愛に関する考え方が実に葵らしい。
なんでも人生経験だと捉えてしまう所がね。
中学の時は、恋愛に対して興味が全く無かった。
あくまでも自分にプラスになると踏んだから。
旨味が無いと悟ったら、あっさりと別れる。
こういう風に書くと葵が嫌な女に見えてしまいそうですが、「価値観の相違」とすればなんらおかしな理由ではなくなります。
彼女は互いに刺激し高め合える存在を欲していて。
自分を超えた存在では無いと彼として認められないとこの時の経験から学んだ。
これが知れたことは、とっても大きいです。
何故って、葵が目指す場所がおぼろげながら見えてきたからです。
少し脱線しましょう。
リア充というとどういう人を指すのでしょうか。
スクールカーストの上位に入ること?
彼氏や彼女がいること?
大成して、良い生活を送っていること?
パッと思い描くのは、どれもステータスについてなんですよね。
で、ラノベとか漫画、アニメだと大抵は「スクールカースト上位」か「彼氏や彼女がいる」を指しています。
さらに読み解けば、このいづれも「コミュニケーション能力が高い」という点に行きつくんです。
空気を読む。話を広げる。笑いを取る。主導権を握る。
対人スキルの長けたキャラクターが大抵はスクールカースト上位にいて、殆どが彼氏または彼女を持っている。
(しかも多くが美男美女カップル)
このコミュ能力は一種の「天賦の才」なんかでは無いんだよ、努力をする事で向上できるんだよというのが、この作品の根幹。
それを体現して、教え導く立場にいるのが葵で、生徒役が友崎。
これがこの作品のベースですよね。
じゃあ、葵は何故友崎を指導してるんでしょうか。
実はこれについては1巻で語られている様で、語られていません。
あまり納得出来る理由では無かったんですね。
「自分に勝ってる尊敬すべき人間がくだらない奴だったのが許せない」
葵のキャラとしては理屈が通る主張ではあるけれど、だからといって、そこまでするほどなのかという疑問も残る主張。
この疑問が氷解したんです。
当時の友崎は、葵に嫉妬してきた先輩3人と同じなんですよね。
「何の努力もせずに努力を重ねた人間を妬む」という点に於いて。
これだけならば、きっと葵は友崎を罵倒してさよならしていたでしょう。
けど、先輩連中と異なるのは、葵がどうしても勝てない一芸を友崎が持っていた事。
どんなことであれ、葵は自分より秀でた能力を持っている相手を尊敬する事を誓っていたというのは大きな事実ですね。
nanashiを尊敬していた。けれど、nanashiが友崎だと知って落胆もした。
綯交ぜの感情の中、尊敬していた事実を捨てきれない葵がいたのだと思います。
そこで、ちょっとした駆け引きをしたのかなと。
徹底的に罵倒した。
落胆した事実を隠そうとせずに、その理由を吐き捨てた。
アタファミのことで熱くなっていたからというのもあるのかもですが、葵的には、先輩3人にとった態度も取れた筈なんですよ。
心の中だけで罵倒して、表面上は取り繕うことも可能だったはずです、葵の能力があれば。
それをせずに罵倒を繰り返したのは、「友崎に反骨精神があるか試した」のだと思います。
「……ちょっと待てよ。自分だけ言いたい放題言いやがって」
日南葵が足を止め振り返る。
「まだなにか?」
つい口走った形で引き止めたため、正直なにも考えていない。
焦りでイマイチ日南葵の表情が読めない。
嫌悪しているようにも期待しているようにも見えてしまっている。
屋久ユウキ. 弱キャラ友崎くん Lv.1 (ガガガ文庫) (Kindle の位置No.378-382). . Kindle 版.
第1巻で友崎が葵の態度に反抗した瞬間は、このように書かれてます。
葵の表情に「期待感」を見たのは、友崎の勘違いとかでは無くて、事実そうだったのだと解釈出来ます。
努力をせずにただただ諦めただけの人間では無かった。
努力しようとする気持ちを秘めていた。
その努力の仕方を知らないだけ。
なら、教えよう。
教えて、自分が尊敬したnanashiに相応しい人間にしよう。
きっと友崎ならなれる。
アタファミで自分がどんなに努力しても越えられないのだから。
それは、アタファミでは自分以上に努力を重ねている証左なのだから。
互いに切磋できる相手になれる。
nanashiがアタファミで1位を保つべく努力してる云々は実際に葵が口にしてますので、思考の流れとしてはこんな感じなのかなと。
切磋琢磨出来る相手を求めていて、友崎にその可能性を見た。
故に鍛えている。
そういう風に考えられるようになりました。
さてさて、では、それだけなのか。
将来的な彼氏として友崎を意識してるかどうか。
ここは正直分からないですよね。
でも、可能性としてはゼロじゃないことが示唆されたのかなと。
時系列的には、夏休みの合宿⇒ブックオフショッピングなので、話前後しますが、この順で見ていきますね。
合宿の時点で、「好きな男子」の中に既に友崎が含まれているというね。
勿論選択肢を与えられた上での話でしたが、これは大きいですよね。
6巻感想で「水沢と競わせる可能性」について推測しましたが、その方向性があるのかもと身を乗り出しちゃいましたw
彼氏として、水沢を超えさせたいという意図があるんじゃいかと期待しちゃいます。
ブックオフショッピングなんて、もう唯のデートにしか見えません。
3つのエピソードで葵と友崎の関係について妄想逞しくさせてくれましたが、やはりメインヒロインとして、こと恋愛に於いても、葵には前線に立って欲しいと思いました。
泉優鈴
「なんだよお前」からの「泉優鈴です」の返しが可愛すぎる。
お話としては、もう王道中の王道。
ラブコメの1つや2つ読んでれば、必ず同じようなプロットがあるよねって位定番のシチュエーション。
だから読んでいても、驚きとか何にもないんだけれど、優鈴らしいなとは思ったのです。
例えば、これが葵の周りで起こったお話だったなら、葵ならすぐに気付いた筈なんですよ。
彼氏が何故自分の誘いを拒み、女性といるのか。
そして、そのことを伏せているのか。
冷静に思考して、正しい答えを導き、その上で「気付かないフリ」をしてあげるのだと思う。
そこまでしてくれている彼氏の想いを汲んで。
でも、それじゃダメなんですよ。
このシチュエーションは、「彼氏が自分と別れようとしている」と心から信じ込んだヒロインではないと意味が無いんですよね。
面白味が無いんです。
そういった意味で、葵だったら絶対に成立しないプロットなのです。
今回のプロットを活かすには、「友崎くん」のヒロインズでは、優鈴が最適かな。
(次点がみみみ。)
といった理由で、優鈴らしいと感じました。
菊池風香
風香が友崎を意識していたのは何故なのか。
その理由について、彼女の過去と共に明かされました。
マイケル・アンディ作品を好きになった理由であったり、その本の中身であったりを知れたのは、風香という女の子の理解を深められたという点でとても良かったですね。
友崎に興味を抱いた理由がスッキリしました。
風香の中では、ポポロと友崎がダブっていくという流れも綺麗に説明されていたのかなと。
ただ、この流れだと恋愛戦線からはやや脱落したのかなと。
というか、最初から参戦してなかったというか。
あくまでも友達候補という認識で友崎を見てた感じで。
今後その気持ちが変わることもあるでしょうけれど、今のところは違う感じなのですね。
七海みなみ
みみみが友崎に惚れるまでの変遷を掻い摘んで。
なんだけれど、多分、一番重要なのは「葵に勝った」という点。
みみみはどこまでも葵のライバルになろうと努力を重ねたんですよ。
きっと葵にとって、彼女史上最も自分を意識して対抗意識を燃やしてきた人。
それがみみみで。
だけれど、嫉妬という負の感情を拠り所としていたからなのか、みみみは葵には結局及びませんでした。
これまでは。
天性の負けず嫌いのみみみ。
遂にはフラットな心で、葵を負かせたんです。
たった1勝。されど1勝。
この勝ちは、大きな価値がある気がします。
それは恋愛面に於いて。
ここから妄想100%になりますが、近い将来。
てか、7巻で友崎とみみみは付き合う事になる気がします。
友崎が女子と付き合う事を目標に定めている葵が反対する訳もないので、すんなりと付き合う事になるんじゃないかな。
で、その先が重要なんだけれど、葵は「友崎の彼女を巡る争い」でみみみを正当にライバル視する事になる気がします。
6巻までの関係性だと、葵にとってみみみは単なる友達の1人に過ぎなかったはずなんです。
全力で立ち向かって来た相手だけれど、結局は完全に負かしてますからね。
でも、6.5巻で「1度自分を負かせた相手」となった。
葵の中でみみみは単なる友達から1つ上の位置に昇格したんじゃないかな。
その上で、男として意識しつつある友崎を取っていったら、それは「自分が欲しいものを持っている人」になりますよね。
葵にとってみみみが完全なるライバルに変わる瞬間でもあります。
自分が欲しい者である「友崎」を持っている「みみみ」をみみみより凄くなって無理矢理奪い取る。
葵の宣言通りの展開に発展するんじゃないかなと。
(最終的に葵が友崎をゲットできるかはまた別の話として)
こういった展開にスムーズに繫げる為に、みみみを葵に勝たせる話が必要だったのかなと思いました。
終わりに
長くなりましたが、一先ず感想はこれで終わります。
今回発見だったのは、葵の思考パターンを読めたことです。
経験や洞察力をフル活用して、最適な会話を紡ぎだすテクニック。
その一旦を知れて、なるほどなと普通に感心してしまいましたw
なんだか良く練り込まれたミステリを読んでるような感覚で、「どうすれば適切な会話を作れるか」という問題提起に対する論理的な思考を堪能致しました。
自分も会話とか苦手なので、参考になりますw