「アリスと太陽」は松井優征先生を唸らせたに違いない
この記事は
「アリスと太陽」の記事です。
ネタバレあります。
はじめに
「約束のネバーランド」以来、久々に新連載が良かったので、感想を書いてみます。
ネタバレを含みますのでご注意ください。
冒頭が凄いよ!!
なんかケバイ!?
今号のジャンプ表紙を見た最初の感想です。
表紙は新連載の「アリスと太陽」。
「ジャンプ」では珍しい音楽を題材とした漫画です。
描かれているのは、主人公コンビ。
左が涼木太陽。
自身作曲の曲をピアノで演奏。何れキーボード担当になるのかもです。
右は篠原アリス。
帰国子女でボーカリスト。
この2人の出会いから始まる青春譚。それが今作ですね。
んで、個人的に目が行ったのがアリスです。
なんだかメイクが濃いような感じがしました。
モテないオッサンの戯言だと流して欲しいのですが、僕はナチュラルメイクが好きです。
メイクをしてると意識させない程度に抑えられていると素の美しさを引き立たせているように映ります。
特に若い子は薄くしてる子の方が印象が良いです。
女子高生くらいの年齢ならすっぴんでも問題無いのに逆に勿体なく感じるんですよね。
もっと素材の良さを出していこうよ!!(マツ〇カ風に)
ナチュラルメイクは、男女によって解釈が違います。
女性側の場合、「自然な感じに仕上がるようにしっかりと時間をかけて化粧をしていないように可愛く見せるメイク」ですよね。
でも男性は「すっぴんに近いメイク」という考えの方が多いようです。
おっとぉ。
女性にとってのナチュラルメイクって意味が違うのか。
気を付けよう。
話し戻してアリスの特に「目」がケバイなって感じたのですよ。
上に貼ったリンク先記事にも書かれてますが、第一印象は「目元」で決まるというのはあながち間違いでは無いのかもです。
アリスの目元からは、派手で遊び慣れてる肉食系女子ってイメージを持ちました。
正直苦手なタイプです。
あぁ、どうしよっかな。
読むのやめよっかな…とか思っちゃったんですよね。
これだけで(汗
主人公のイメージは、作品全体のイメージに直結するからです。
典型的な陰キャな僕は、イケてる女子が苦手です。
イケてる女子がキャッキャする漫画が自分のような底辺を這いつくばるような人間に合うとは思えなくて。
取り敢えず冒頭だけでも読んでみるか…。
1ページ1コマ目。
ちょっとホッとしました。
太陽少年はどちらかと言えば「こっち側」か。
彼が語り部ならまだ馴染めるかもしれない。
少し希望が湧きました。
2~3ページ目。
見開きで扉です。
アリスの目元はやっぱり派手。
メイク濃いなぁ。
この子はやっぱり苦手かもなぁ。
再びテンションが下がります。
4ページ目からモノクロページになります。
5ページ目。
!!!!!
清純派アイドル、キターー!!!
素晴らしい漫画だよね。うん。
ヒロインのアリスがマジ美少女。
異国の地で差別に苦しんでいた時期に太陽の作ったボカロ曲に励まされたというバックボーンがマジ泣けますね。
いや~冒頭数ページで掌返しっすわ。
冒頭大事だわ~。
冒頭は漫画にとって大事だよね。
実感した。
読み切り漫画の心臓部は、「描き出し」だと思っています。
なので、この賞の審査員のお話を頂いたとき、二つ返事でお受けしました。
漫画新人賞の審査をさせて頂く時よく目にするのが、「展開が遅い」作品です。
酷い時には、10ページを超えるまで主人公が出てこない時もあります。
新人さんの読み切りでは、「この漫画はどういう漫画で、こういう要素が売りなんです」という事を始まってすぐに示せなければ、お客はすぐに読むのをやめてしまいます。
だからこそ、読者を引き付ける強い「描きだし」が必要なのです。
もちろん、才能ある方はどんな描き出しだろうが最後まで読ませられると思います。
ただ、「どんな手段を使ってでも世に出たい」と考えている新人さんがいらっしゃったら、手段のひとつとして、こういう賞にチャレンジされてみるのはいかがでしょうか。
ハッタリでも、出オチでも、勢いだけでも、後先考えてなくても構いません。
とにかくインパクトのある描きだしを作ってみて下さい。
整合性など後からどうとでもなります。
そんな細かい事より、最初の数ページで読者を引き付ける事の方がずっと価値がある事だと思います。
「この漫画、最後まで読んでみてえ!」と思わせられるか、それだけがこの賞の選考基準の全てです。
このコンセプトに共感して頂けるのであれば、ぜひとも力作をお待ちしてます。
なるほど。
表紙で「ケバそう。陰キャの僕には合わなそう」と思わせておいてからの本編冒頭での「清純派ヒロイン降臨キター!!」でのギャップ萌え演出ですね。
「美少女ヒロインが登場する漫画は読むべし」という世の中の絶対的原則を巧みに利用した緻密な構成。
新しい漫画賞と結び付け、最適なサンプルを新連載で行うという野心的な知略。
これは松井先生も唸っちゃうね。
まさに「冒頭が大事」を体現した漫画の登場だ!!!!!
真面目に面白いと思うよ
まぁ、メイクじゃなくて、そういう着色の癖ってだけなんですけどね。
ふざけたこと書いてたら3000文字超えて来てビックリ。
気を取り直して、ちょっと真面目に書きます。
「ジャンプ」新連載で久々に面白かったのは事実です。
太陽の秘密はまだまだベールに隠されていましたが、ヒロイン・アリスの魅力が十二分に出てましたね。
それが物語と密接にリンクしていたので、とても良かったです。
そこで、この物語の目指すべきゴールについて少し語ってみます。
音楽で世界征服!!
ミュージシャンならば誰もが一度は夢見る野望なんじゃないかな?
音楽は人を救うんだ!!
あるよね。
音楽で心救われるって。
よく「音楽は国境を超える」って言いますが、これは言語の壁を超えるって意味合いが強い。
「何を歌ってるのか理解出来なくても、心に響いてくる」。
きっと、アリス自身がその体験をしたんだと思うの。
太陽の曲で。
彼女が何歳からアメリカで育ったのかは不明です。
なので、一部の台詞からの推測なのですが、彼女は「この2年の間で日本語を習得した」んじゃないかな。
「アメリカ育ち」
「英語ぺらぺら」
「差別」
これらの単語から、日本人街(ロサンゼルスのリトル・トーキョー等)の日本語学校を中心に育ったという訳では無く、多民族が日頃から触れ合う環境下で育ったのかなと。
英語しか知らなかった2年前のアリスが偶然ネットで1つの音楽に出会った。
恐らく歌詞も付いていたのでしょう。
少年が直接歌っていたのかもしれないし、別に誰かが歌をつけていたのかもしれない。
何れにせよ、日本語の歌詞のついた歌がアリスを救った。
1つの曲に救われた彼女はどう思ったのでしょうか。
歌詞の意味を知りたくなったのかもしれません。
両親から日本語を学んだのかもしれない。
自分を救う程の素晴らしい曲を作った環境に身を置きたいと考えたのかもしれない。
単身従姉妹の家に身を寄せて、日本の高校に転校してきたのかも。
全部作中の表現を借りたただの推測に過ぎません。
事実は異なる可能性が高いです。
んでも、行間からこんなことを想像して、超納得しちゃったんですよ。
自分が救われたから、音楽で世界を結べると信じてでっかい夢を持ったのかもなって。
誰よりも才能を信じる「天才」にも偶然出会えたのですし。
アリスの動機から行動力、夢まで想像が膨らんで、非常にしっくりくる僕なりの解釈が出来ちゃった。
これはこの漫画のパワーです。
少女の過去・現在・未来を想像させる力があるから、僕もイメージ出来たのです。
大きな大きなパワーの詰まった第1話からは、輝かしい未来が確かに見えました。
是非成功を収めて欲しい漫画です。
太陽に何があったのか?
2年前に一度はネットにアップするまでに至った彼。
「1人だけの孤独な趣味」の範囲を超えたことをしたのは何故か?
寧ろ今が「変わった後」なのでしょうか。
この辺の事は今後明かされていくのでしょうけれど、1つ確かなのは「ちょっとした趣味」の範疇では収まらない時間の割き方をしてきたんだろうなってこと。
手元(鍵盤)が見えなくても問題無く弾ける。
相当弾きこまないと無理だと素人目には思うの。
1人1人を救う才能があって、努力もしてきてる(跡が見受けられる)。
既に「大成する」下地が描かれているので、早いテンポで物語が進んでも彼が「音楽面のレベル差」で振り落とされる事は無さそう。
終わりに
「ジャンプ」には珍しいタイプの作品に見えます。
パッと見、王道ジャンプ漫画では無いので苦戦するかもですが、頑張って欲しいです。