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「2作目で化ける」ことを期待出来ちゃう!!「ジャンプ」読切「ドラコニル」が面白かった

この記事は

「ドラコニル」の感想です。

2作目の法則?

「ジャンプ」の編集長・中野博之氏のインタビューで2作目の法則について述べている部分がありました。
古舘春一先生、田畠裕基先生。
2作目は原作担当ではありますが、附田祐斗先生も含まれてたかもしれない。
近年は「連載2作目」でヒットを掴みとった作家が主力になっている的な内容だったと記憶しています。
違ったら御免です。
(…軽くググったけど、見当たらなかったので、中野氏のインタビューじゃ無かったかも…)

ま、いいです。
この導入は全く重要じゃないのでw
「ドラコニル」の小野先生も1作目が残念ながら打ち切りだったので、もし今作が連載したら…的に繫げようとしていただけです。
そんな先の事はさておき、面白かったので感想です。

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©小野玄暉

感想

卓球漫画「フルドライブ」から一転、バトル漫画に舵を切って来たので、読む前はどうなんだろうと思ってました。
やはり作家には相性とか好みとかあるじゃないですか。
ジャンル縛りとでも言ったらいいのかな。

1つのジャンルに拘りが合って、または、作風が合っているので描き続けている…みたいな。
高橋陽一先生のようなケース。
スポーツとバトルでは方向性が全然違うから、何故だか勝手に「この先生はこういうの描かない」みたいな先入観を持っていたのかもしれない。
故にあまり期待せずに読んだのですが、メッチャ面白いですね、これ。
このまんま連載として読みたいくらいのレベル。

ストーリー漫画の場合、読切漫画と連載の第1話では、話の構成が全く違いますよね。
連載では、「次を読ませたい」と思わせる事が大事です。
30ページ以上という纏まったページ数がある分、作品の核となる部分を魅せつつ、物語的には盛り上がりも含めていると尚good。
世界観の説明は必要最小限に留めて、その上で、先を見据えたフリがあった方が良いです。
壮大なボスキャラを暗示したり、長い旅を予感させたり。
「この漫画はこの先こう展開していきますよ」という予測を読者が立てられると、そこに興味を引かれれば、次も読んでみようかなとなりますよね。

読切漫画では、こうしたフリは、特に必要としてません。
それよりも、話としていかに纏まっているかの方が重要です。
起承転結がしっかりとあって、盛り上がるべきところで盛り上がれる。
ページ数が限られている中で、読者に必要な世界観を全て説明してあることも必要ですね。
結構やるべきことは多いです。

つまりは、「分かりやすい世界観」で「ワクワクドキドキ盛り上がれる」漫画は読切としては最高ってことですよ。

「ドラコニル」を見て行きます。
世界観は非常に分かりやすいです。
箇条書きにするとこんな感じ。

  1. 主人公は強大な魔法を封印されている。(あまりにも強い力の為、自分自身の肉体を滅ぼしかねないから封印が必要だった)
  2. 魔力でしか倒せない龍が居て、それを倒す魔法使いたちがいる。

基本はこれだけ押さえておけばOKでしたよね。

ワクドキ盛り上がれるというのは、バトルシーンでの迫力ですね。

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©小野玄暉
1コマ目、魔法で大きな槍を顕現させているシーンではハッタリが効いています。
いかにもな武器を出して、彼女が強そうに見えます。
コマ割が大人しめなのも特徴ですね。
まだキャラが動き出す前なので、恐らくわざと単純なコマで構成してるのでしょう。
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©小野玄暉
キャラのアクションと同時に、コマ割も派手になっています。
都度カメラを切り替えて、俯瞰とバストアップを織り交ぜることで、キャラクターの動きを分かりやすく描写。
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©小野玄暉
この戦いにおけるクライマックスなので、大ゴマでビシッと必殺の一撃を描いています。
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©小野玄暉
動から静へ。
またコマ割を大人しくして緩急をつけていますね。
師匠キャラが勝ったかと思わせてからの大ピンチになる転換となるページ。
1コマ目で大ダメージを与えてるようなコマで「師匠?の勝ち」を印象付けつつ、一撃でひっくり返されるまでをコンパクトに纏めてあります。
これで勝てなきゃ、この後どうなるんだろうって思いません?

書き文字に工夫が見て取れるのも、迫力を生んでいる理由の1つですよね。
1ページ1コマ目、槍の鋭さを現したかのような先を細くした「ドオン」。
2ページ1コマ目、龍の一撃の重さを表現したぶっとい線で「ドオオ」。
4ページ4コマ目、進化する龍の不気味さを「掠れ」で出している「ヌッ」。
コマに合せた表現をしているので、「ただ擬音を表現しているだけ」に留まらない演出効果があります。

「当たり前のことを当たり前にしてるだけ」とか冷たいこと思わないで下さいね。
そうかもだけれど、基本をしっかりと押さえてる漫画ってやっぱりそれだけで面白いんですよ。

読切ならではの世界観設定の分かりやすさと迫力あるバトルシーン。
それがしっかりと味わえました。

49ページで起承転結があるんです。
ちゃんと話の始まりから終わりまでが綺麗に収まってます。
読切としての体裁を守りつつも、「続きを読みたい」気分にもさせている。

というのも、連載の第1話として読んでも通じるからですね。
祖母の弟子だった屠龍を生業とする魔女のお姉さんが主人公の家に居座ることになったからです。
「全ての始まり」となったお姉さんがこのまんま去って行ったら、特にこの先への期待感って無いんですよ。
「ああ、龍はもう出ないんだろうな」で終わっちゃうから。

でも、お姉さんが主人公の周りに居続けることで、今後も龍が彼らの前に出続けることを想像させてくれる。
ほんの些細な違いで「物語の続き」の想像を掻き立てられて、続きを読みたいと思えちゃう。
連載用に設定を弄る必要もなくて、そのまんまキャラも設定も「連載版」に引き継げちゃう感じ。
寧ろ、引き継いでほしいくらい。


読切漫画って基本読まない人間なので、「今年で1番」とは言いづらいんですが。
ですが、今年1番って言いたいくらいの漫画でした。

必殺技についてちょこっと

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©小野玄暉
ただただ格好ええw
こういう分かりやすい王道の必殺技はやっぱり良い!!
エネルギー波とか霊丸、螺旋丸を彷彿とさせますが、それが良いんですよね。
斬新なものも勿論良いものは良いですが、やはり王道に勝るものなしって感じ。

ちゃんと冒頭の野球シーンが伏線になってるところもミソですよね。
一度行ったイメージの繰り返しだからこそ、「高等魔法」が可能だったんだろうなという補間が出来ます。

「力押しバトル」らしさもちゃんと出てますし、作品のノリや主人公のポテンシャル、複雑な事はまだ出来ない「未熟さ」まで表現された、凄く深くて素晴らしい必殺技だったと思います。

終わりに

去年の金未来杯の「除冷師煉太郎の約束」も凄く面白かったんですよね。
ただ、あの読切漫画は、連載が想像出来ない作りになってました。
読切の内容だけで完全に閉じた物語であったのです。

なので、「連載として読みたくなる読切漫画」としては、今作が近年でもトップクラスの面白さでした。
是非、このまんまで連載として読んでみたいです。
ブラッシュアップは逆にして欲しくないかもw