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地獄の傀儡師・高遠遙一の考察 「金田一少年の事件簿」考察

この記事は

「金田一少年の事件簿」の考察記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

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以前高遠について書いた事があります。
nuruta.hatenablog.com
あれから時間が経ち、高遠には腹違いの妹と実父の存在が明かされるという驚きの事実が判明しました。
更には彼が主役のスピンオフまで作られるまでに至りました。
もう一度高遠遙一について考察してみたいと思います。

この記事には「薔薇十字館殺人事件」、「高遠少年の事件簿」の真犯人に関するネタバレを含みます。
ご注意ください。

今回のテーマ

以前書いた記事では、高遠と彼の実母である近宮玲子との関係にスポットを当て、「探偵学園Q」のハデスと同様の運命を辿っているのではないかと持論を述べました。
つまりは、近宮玲子が自らの復讐を高遠にさせ、そんな近宮の影響を受けて殺人プランナーの道へと進んだのではないかという考え。
親の影響という外部要因によって生まれた犯罪者なのではないかというものです。

この自説が、「薔薇十字館殺人事件」以降の新事実によって"真相"に近いのではないかと最近感じているんです。
ただし、近宮玲子の影響という大前提が間違っているのかなと。
では一体高遠は誰の影響を受けたのか?
今回書くべきテーマの1つがコレです。


また、この「親の影響」というのは、違った観点から捉えても十二分にあり得る説であると自負しております。
前回の記事内で僕はこのように書きました。

この作品はやはり「人を信じる」事を信条にしていると思うのですね。
「根っからの悪人はいない」という事を謳っている。

「犯罪コーディネーター」という一面が、彼自身の本意などではなく、彼自身すら気付いていなかった母から影響された事であるという事が最後に暴かれれば…。
多少は「悪人」から「敵役」に戻れるんじゃないかなと。

何度も書いているようですが、この作品は基本的に「性善説」を謳っていると考えています。
主人公のハジメ自身が「根っからの悪人はいない」と考えていますし、同じく性善説論者と思しきキャラクターで溢れている。

親の影響というのは、先程も書きましたが「人格(性格)を形成する外部要因」となります。
人格は、生まれ持った気質からくると考えられている内部要因と生後の環境によって齎される外部要因の2つから形成されるという考え方があります。
この考えに照らし合わせると、高遠は環境によって犯罪者になってしまった。
転じて、「根っからの犯罪者では無く、外部の悪影響のせい」という事となり、やはり「性善説」の枠内に収まるキャラクターであると見做す事も出来るのです。

故に「親の影響」は十分にあると思っているんですね。
ですけれど、この事は作中で高遠自身の口から否定されていたりします。
何故高遠は親の影響を否定するのか?
2つ目のテーマとして掲げてみます。


「高遠は誰の影響を受けたのか?」
「その影響を何故彼は否定するのか」
以下、持論を綴ります。

高遠は誰の影響を受けたのか?

「薔薇十字館殺人事件」。
「20周年記念シリーズ」のトリを飾った本作は、高遠を語る上では外せない事件になりました。
ここで彼に関して重大な事実が判明したからですね。
異母妹と実父の存在です。

これまで高遠は近宮玲子とエリート商社マンの父(以下、養父と呼称)の間に生まれた子供であるとされてきました。
幼少よりイギリスで育った高遠は、基本的にその厳格な父と暮らしていたと描かれています。
ずっとこの男性が実父だという事になっていたのですが、ここに来て新設定。
他に実父が居たという事になりました。

この実父が訳ありっぽいです。

「高遠少年の事件簿」では、養父が作中に初めて台詞有りで登場。
都度、おかしな言動を取っています。
台詞を抜粋してみます。

養父「遙一のやつ 母親のお前にはちっとも似ていないぞ玲子‥‥」
養父「日増しにそっくりになりやがって‥あの悪魔にな!!」
高遠「父さんは昔からそうだ 何かおかしな事件が近所や学校で起こると僕が関わってるんじゃないかとすぐ疑う‥」
養父「くそっ!!やっぱりそうだ‥!あいつは‥あの悪魔の‥‥!」

ここから推察するに、高遠の実父は「悪魔」と罵られるような人物であったという事ですね。
しかも、その子供(高遠)が「犯罪に手を染めてはいないか」と疑い深くなるほどの犯罪者だった可能性も高い。
以前の考察での結論とした「近宮玲子の影響で高遠は犯罪者になったのでは」というのは完全に否定されたわけです。

実母では無く、実父の影響を受けた可能性が提示されました。
今高遠は、そんな実父の影を追っているようです。
「自分探し」。
自らのルーツを探るべく、実父が遺した館を探して回っている事が描かれています。
近い将来、再び実父が関わる事件にハジメと高遠が巻き込まれる事も示唆されております。

その影響を何故彼は否定するのか

養父が危惧するように、高遠は実父の血の影響を受けて犯罪者へとなったのではないかという仮説が立ちます。
しかし、これを高遠自身が否定します。
「薔薇十字館殺人事件」に話を戻します。
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この事件では高遠の腹違いの妹が真犯人として登場します。
彼女は高遠が実の兄だと知った上で、彼をスケープゴートに利用する計画を立て、連続殺人を遂行。
兄が犯罪者であるから自分でも出来ると信じ込んでおりました。
「実の兄が殺人鬼っていう事実は私に勇気をくれた」
この台詞に、高遠は何を想ったのでしょうか。

僕は、その答えが次の台詞に出ていると感じたのです。

高遠はこう言います。
「犯罪者の係累がみんな罪を犯す運命ならこの世の中は犯罪者だらけでしょう
彼女を殺人者に仕立て上げたのは御しがたい復讐心であって私の存在は単なるきっかけにすぎない
(中略)
彼女は私に少しも似ていませんよ」

犯罪者の子は犯罪者であるということを否定します。
これは高遠の優しさですね。
妹は自分とは違うんだという。
ただ、これは逆を言えば、高遠自身は血の影響を濃く受け継いでいると自覚しているとも言えます。


とはいえ、否定の言葉を高遠に取らせたのは大きいことです。
彼もまた心の底では「性善説」を唱えていると考えられるからです。

終わりに

自分は何故犯罪者になったのか。
勿論高遠には犯罪者としてのプライドがあり、流儀があり、それに則って活動を続けている。
その一方で、自分の中に流れる血が自分を悪の道に引き摺り込んだのではと考えているのだとしたら…。

ルーツ探しは、彼の中の「性善説論者」の部分が「自分は根っからの悪ではないんだ」と叫んでいる証左なのかもしれません。
はじめは、それに気づき、高遠を暗闇から救い出せるのか。
「金田一少年の事件簿」最大のテーマがここに集約されるのかもしれません。