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「ソード・オラトリア」 第12巻 感想

この記事は

「ソード・オラトリア」第12巻の感想記事です。
ネタバレを含みます。

読んだ

「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア」第12巻を読みました。
最終巻かと思いきや、違いましたか。
ですが、1巻から続いてきた長い戦いに終止符が打たれたのは確か。

驚きに次ぐ驚き、感動に次ぐ感動。
そして、痛切なラスト。
あまりにも、あまりにも壮大な最終決戦!!

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©大森藤ノ・はいむらきよたか
感想です。

まさかの入れ替えトリックに唖然

ペニア…だと…。
最初、「誰それ!?」ってなりました。

振り返ってみると、7巻で登場した貧窮を司る老女神。
ダイダロス通りを根城にした神で、確かに初登場時にワインを持ってる!!
非常に細かい、まさかの伏線に驚愕。

思ってもみなかった大どんでん返しですよ。
主神を子供たちに気づかれないように入れ替わるトリックとか、考えもしませんでした。
(ちょっとだけ「容疑者Xの献身」を思い出してしまったw)

もしも、もしも僕がギリシア神話に明るかったら、気づけていたかもしれません。
ディオニュソスのモデルとなったギリシア神話のディオニュソスは「豊穣と葡萄酒と酩酊の神」なのだから。
今更知ったところで…ですね。


レフィーヤの抱いていた違和感についても、全然気づいてませんでした。
だから、本当に心からフィルヴィスは惨殺されたのだと信じて疑ってませんでしたが…。

真相解明編は、僕にとっては驚愕の連続でした。
小さな、本当に小さな伏線がいくつも収斂していき、思いがけない真相が白昼に晒されて目が点。

レフィーヤが生き残ってたのが最大の違和感とか言われても(苦笑
彼女はメインキャラだから、そういうものだって考えて、ちっとも疑問に感じてませんでしたよ。
なんちゅーかメタ視点で物語を読んでちゃダメなんだよという一種の教訓だったのかなと。

そうこうして、真相が分かって、後は真犯人をとっちめて無事解決!!
って単純な話だったらどんだけ楽だったか…。
読んでて辛かったです。

フィルヴィスが生きていたことは素直に嬉しかったです。
怪人に首の骨を折られ、モンスターに喰われてなかったんだ、良かった…と。
あとは彼女が罪を償ってくれれば…。

楽観視しすぎでしたね。
彼女は、既に6年前・27階層の悪夢で殺されていて…。
亡骸に魔石を埋め込められ、怪人として無理矢理蘇生。
死ねない体となり、妖精の潔癖を汚されてしまっていた…。
凄惨過ぎる過去に、どんよりとした気分になりました。

前回の凌辱と同等か、あるいはエルフの高潔が踏みにじられ仕舞っていた分、より残虐な事実が明るみになっただけというか。
兎も角、辛すぎて・重たすぎる真実。
レフィーヤじゃなくとも、受け止めきれない衝撃の真相でした。

英雄を待ち望んでいた。

「ダンまち」本編と「ソード・オラトリア」。
どっちが好きかと尋ねられたら、僕は迷うことなく本編と答えます。

別に「ソード・オラトリア」がつまらないわけではありませんし、物語として本編に劣っているとも思っておりません。
単純に「ベル君の物語」が好きなんですよ。

最弱のルーキーが馬鹿にされ、笑われながらも、悔しさを噛み殺して憧憬に近づこうと直向きに努力し、周囲を驚かす速度で成長していく。
いつしか最強の一角の首魁にも一目置かれるまでになったベル君の冒険譚に純粋にワクワクするんです。

外伝は彼の物語ではない。
ただそれだけの理由なのです。

それでも。
それでも、毎回僕は心のどこかで、頭の片隅で彼の登場を心待ちにしていました。
外伝は彼女たちの物語であることを承知の上で、颯爽とピンチに現れる英雄を待ち焦がれていたんです。

普通に考えればあり得ないことなんですけれどね。
だって、ベル君よりもアイズたちの方が圧倒的に強いのだから。
僅差でとかではなくて、主人公補正では覆りようがないほどの実力差があるのだから。
アイズ達が危機的状況に陥ったところで、ベル君が出て来ても焼け石に水。
状況の打破に至るドラマが作りがたいのです。

そうして迎えた最終決戦。
ヘルメスがジョーカーの存在を仄めかせた時点で、これは!!と滾りました。
まさか。

フィンがバベルの上階に足を運ぼうとしたので、フレイヤ・ファミリアの参戦は予想してましたが…。
まさかまさかのオラリオ全戦力の傾注!!

この展開で燃えないなんて男じゃないでしょ。
カーリー・ファミリアやニョルズ・ファミリアまで巻き込んでの総決算。
「まさにクライマックス」
「これぞ最終決戦」
という盛り上がりを見せる中、遂に遂に我らがヘスティア・ファミリアが!!!!!!
ベル君が参戦してきたときには、目頭が熱くなりましたよ。


もうここからは僕の中のテンションが爆上がり。
リリが司令塔として立候補して、血液が滾り。
命がフツノミタマの詠唱をしながら、ガレス達の危機に参じたところで、心拍数が上がり。
ヴェルフがウィル・オ・ウィスプと不滅の魔剣「始高・煌月」でリヴェリア達エルフの度肝を抜いたシーンで、手に自然と力が入り。
ラウル達を疾風怒濤の速攻で助けに入るベルに喝さいを叫ぶ。

勿論、カフェで読んでいた手前ここに書いたのはあくまでもイメージですけれど、目頭を熱くさせて、ニヤニヤしてしまったのは事実。
もうさ、これだけでも割かし満足で、希望が叶ったとニマニマしてたらさ、最悪の罠が露見したわけじゃないですか。
フィン達すら見誤っていた最悪の上を行く最悪。

冒険者を一網打尽にする爆弾。
決して間に合わないリミット。
割けない余剰のない戦力。

「ロキ・ファミリアが遭遇した嘗てない危機的状況」が訪れたわけですよ!!
もうさ、最高だよね、このプロットは。
こうも自然と、こうも論理的に、「ベル・クラネルしかロキ・ファミリアを救えない状況」を生み出すんだから。

フィンが幾億もの読みを入れた先に、ベル君という切り札を閃いた瞬間、心の中の僕は絶叫してました。
これだ!!
これが見たかったんだ!!!!!
ベルの音を冒険者が感じ取った瞬間、僕は感動でマジ泣きしそうになりました。


そうはいっても、この物語は彼女たちのもの。
ベル君の物語ではないんです。
そこを履き違えてしまうと、いくら望んでいた展開でも、1つの物語として冷静に判断すると「否」なんです。

けれど、そこは安心安全の大森ブランド。
大森藤ノ先生は決してそんな愚行は犯しません。

ここでベル君の英雄願望のトリガーが「初めからこの為に設定されていたのではないか」と穿ちたくなるほど、すっぽりと嵌ってました。
アイズを含むロキ・ファミリアの一級冒険者達への憧憬。
彼らの様な英雄になりたいという想いの強さが、力へと代わってチャージされていく。

ロキ・ファミリアがオラリオを救おうと先陣を切っていたからこそ、ベル君は伝説の竜を屠れるほどの力を行使できたのでしょうね。
そうじゃなかったら、無理だったんじゃないかなと。
そう思わせてくれる描写がありましたので、敵の最後の切り札を倒したのはベル君でも、物語の主役がベル君になってなかった理由なのかなと思いました。

フィルヴィス

フィルヴィスは、僕には敵とは認識できませんでした。
それは、フィルヴィスもエインもどちらの彼女も。

ディオニュソスは間違いなくクソ野郎です。
こいつだけは許してはならない悪に違いない。
けれど、そんな悪とはいえディオニュソスにエインが救われたのも1つの事実。

絶望の底にいたフィルヴィスがディオニュソスの甘言に唆されたのを間違いだとは言えませんから。
そこは、もう同情しちゃいましたよ。
それが悪魔や死神だと分かっていても、延ばされた手を掴んでしまうことを誰が避難できるのか。
その後に犯してきた罪自体は看過出来ないけれど、彼女がそうならざるを得なかった切っ掛けについては同情しちゃいます。
故に悪とは言えません。

フィルヴィスはわざわざ僕が語るまでも無くて。
彼女がどれほどレフィーヤに救われ、レフィーヤを想っていたのかは、これまでの物語を読んできた僕としては痛いほど理解できます。
そこに嘘偽りが無いことも。


怪人として再登場したフィルヴィスには複雑な想いがありました。
11巻で殺されていた方が、良かったのかもなんていう考えも過ったのですが…。
うん。
今回の方が「幸せ」な結末であったと考えを改めました。

だって、最期はエインとしてもフィルヴィスとしても笑って逝けたのだから。


絶望に打ちひしがれたまま殺されるよりかは、大好きな人の腕の中で笑って死ねる方が、彼女にとっては幸せだったに違いないなと。


ハッピーエンドとは程遠い、あまりにも苦味が強すぎる結末。
けれど、エルフとして最後の最後で救われつつ逝けたフィルヴィスは最期に報われたのかなと思います。

終わりに

本編最終バトルでは、今回の盛り上がりやスケール感を上回れるのであろうか?
そういうふとした疑問を残すほど「最終決戦に相応しい決戦」でした。
あとがきで大森先生自身が触れていらっしゃったので、恐らく杞憂に終わるのでしょうね。

13巻から始まるという第4部「妖精覚醒編」とはどんな物語になるのか。
アイズの中の妖精が目覚めるのかしら?

実は謎だけ残して斃されたレヴィス。
そこは語ってから逝けよと突っ込んだのは内緒だw
怪人が遺した伏線がいよいよ回収されるのかな。
回収されて欲しいな。

本編がある程度進んでから開始ということで、暫くは続きを読めませんが、その時まで楽しみに待ちたいと思います。