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「ソード・オラトリア」 第10巻 感想 大きな満足感を得られた2つの理由

この記事は

「ソード・オラトリア」第10巻の感想記事です。
ネタバレを含みます。

読んだ

「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア」第10巻を読みました。
第3部開始です!!
9巻の物語があるからこそ、アイズの葛藤の大きさが見て取れます。
まさしく「ベル・クラネルの被害者」視点でのお話でした。


感想です。
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大きな満足感を得られた2つの理由

僕の希望通り、本編第9巻~第11巻「第3部:異端児(ゼノス)編」の裏側を描いたお話となりました。
特に11巻に焦点を当ててますね。

何故あの時、あのタイミングでロキ・ファミリアがベル達の前に姿を現したのか。
ダイダロス騒乱の裏側で、ロキ・ファミリア(特に団長のフィン)がどう動いていたのか。
そして、アイズが下した決断の裏側の葛藤はどうだったのか。

本編とは視点を変えて描かれています。

視点を変えて「物語の裏側」が描かれる事は、本作に限らずよくあります。
本作に於いても初めての事ではありません。
こういった場合、物語に面白味は見いだせても、驚きは無いんですよね。

誤解を恐れずに記すならば、"所詮は"裏側なのです。
本編本文から省かれた、本来は「見なくても良い部分」。
バックステージはファンならば楽しめますが、そうでは無い場合はあまり楽しめません。
ファンが物語の真の理解を得たい為だけであれば、極論「エピローグ 少女の結末」さえ読めば事足ります。
外伝9巻とこのエピローグで、本編11巻でのアイズの決断の裏にあった葛藤が把握出来て、正しい意味での解釈が出来ると思います。

ここまでだと、外伝のみのファンにとっては、やはり満足感は得にくいと思います。
いくらロキ・ファミリアを中心にした物語にしても、「舞台の裏側」なのですから。
ここから面白味は見出せますが、その先にある驚き…「予期しない展開」とそれに伴う「喜び」を得ることは少ないからですね。

しかしながら、この外伝10巻は、そんな「矮小な概念」をも飛び越える満足感がありました。
本編の補間以外の意味合いと外伝の物語をきちんと進行させたからですね。

ベル君の被害者・フィン

前者については、この10巻のテーマを「ベル君の被害者」に集約させていたことが大きい。

やはりベルを筆頭としたヘスティア・ファミリアはどこかおかしいのだと思います。
団員全員がモンスターとは別の場所に「心の傷」を抱えてる事が大きいのでしょう。
故に、ベルの「愚行」に(リリを筆頭に)異を唱えつつも、ゼノスの味方に付けた。

対してロキ・ファミリアは「モンスターへの復讐者」で構成されているといっても過言でないほど恨みは深い。
団長のフィンを含め、アイズ、ベートなどモンスターを「心の傷」の理由としている者が多いです。
それもあって、彼らのモンスターに対しての恐怖・殺意は、「一般的な感情」なのでしょうね。
人とモンスターの間には、どうしても受け入れられない溝があり、殺戮という方法しか在り得ない。
ベルの行動は異常としか映らなくても不思議じゃありません。
「ベル君の被害者」とは的を射まくった表現です。

先に僕が書いた「本編の補間」というのは、この「ベル君の被害者」達の正当な感情の描写ですね。
ロキ・ファミリアを通して、モンスターへの嫌悪・憎悪が十全に描かれてました。
彼らの世界の常識がしっかりと書かれていました。

今巻はこれ以外の意味合いが有ったと思います。
ここでスポットが当てられたのが、団長のフィンです。

ロキ・ファミリアの強さの象徴にして、絶対なるリーダー。
いついかなる場合でも、団員を鼓舞し、道しるべとなる。
統率力、指導力、純粋なる戦闘力。
全てに於いて団の大黒柱です。
彼の「成長」なくして、この先に待ち受ける一大決戦は絶対に乗りきれないでしょう。

そう断言できる根拠があります。
クリーチャー・レヴィスに敗北したことがそうです。
ことの重大さはラウルを通じてアキの口から語られていました。
精神的にも戦力的にも団員から絶大な信頼を寄せられるフィンの敗北は、そのまま団の敗北に繋がります。
いくらアイズら幹部が強くても、ロキ・ファミリアとはそういう団であることが描かれてきました。

そんな中心的存在のフィンが敵の最大戦力であるレヴィスに敵わなかった。
しかもその上には、さらなる脅威が待ち受けている可能性が高い。
三大首脳陣の連携でならばレヴィスと渡り合えても、意味がありません。
この先アイズが成長しても、恐らく勝てない。
前人未到のレベル8に達するのならば、勝機はあるかもですが、それは現状考えられません。
とすれば、団の顔であるフィン自身が成長する必要があります。
「フィンのファミリア」であるから、フィンが成長してくれないと説得力が出ません。
勝っても「なんで勝ったの?」って思っちゃいそうです。

とはいえ、成長と云っても、ランクアップをしないとという意味ではありません。
なんでもいいんです。
分かり易く「変わった」「良くなった」と読者が実感できれば。

今回、フィンは「成長」しました。

「勇者(ブレイバー)」という「人工の英雄」としての「フィン」の限界はもうとっくに達していたのでしょうね。
フィアナになることを夢見て、レベル6にまで上り詰め、ファミリアを「オラリオの2大派閥」の肩翼にまでした。
努力と意地とプライドと頭脳で確固たる地位を築き、今や片隅でひっそりと過ごす貧民街の同胞の少年にまで憧憬を抱かせている。
他者には真似すら出来ない程の力と名声を得てきました。
限界とは言っても、十分な成長と見て取れます。

けど、これではまだ足りない事は先に記しました。
この先にある偉業を成し遂げることは出来なかったのではないかな。
レベルで言えば、オッタルに並ぶ事は無理に思えます。

「フィアナになること」を目標とした「人工の英雄」で限界が来たのなら、「フィアナを超える」本物の「英雄」になればいい。
ああ、分かり易いです。
勿論これで本当にフィンが成長するのかは分かりませんけれど、「成長した場合の理屈」としては納得感があります。


物語を終着させる為に必要条件であったフィンの成長を「本編の裏側」に絡めて表現していました。
ベルの冒険を目にして心を燃やした。
冒険心に火をつけた。
これが「2度目」だったのも上手いです。
2度ともベル君vs猛牛(アステリオス)であり、同一の対戦カード(アステリオスは、本編1巻でベルと死闘を演じた猛牛の生まれ変わり)で心を動かされた…と。
「1度目」があったからこそ「2度目」があっても不思議では無い。
モンスターへの憎悪という常識を放棄させてまで変革させた。
「ベル君の被害者」が「ベル君の理解者」に変心するまでを浮き彫りにしていたので、とても満足感が高く、そして納得出来ました。

外伝の物語の進行

フィンの成長という観点だけでも、物語としては大きく前進しているのですが、それ以上に「クノッソス攻略」に一定の目途がついたのは大きいです。
ベル達を見張りつつ、ゼノスを追いつめ、その裏でクノッソス攻略作戦まで進行していたとは。
現時点でも充分フィンは本物のバケモノですね。

無茶とも思えるリーダーの作戦に付き合えるファミリア自体も相当ですけれど。

幹部は勿論レフィーヤを初めとした一般団員が目覚ましい活躍をしていた今回。
なかでも個人的に良かったのは、リヴェリアとアキ。

先ずはリヴェリア。
つっよ。
レヴィスじゃないですが、僕も侮ってました。
中核メンバーとして欠かせない存在であることは認識してましたけれど、よもやここまでとは。
妖精部隊(フェアリーフォース)。
ロキ命名の名前が格好良すぎる上にしっくりくる。
字面だけ見ると、3人の妖精達騎馬がリヴェリアを騎手にして中央に陣取り、周りを残りのメンバーが固めて突進するイメージを持っちゃいましたが、うんな訳無いか。
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でも、そんなイメージを持っちゃうほど、「戦車のような鉄壁の防御力と底知れぬ破壊力」を見せた部隊。
痛快な快進撃を見せる部隊を指揮し、最前線に立てちゃうリヴェリアの恐ろしさと言ったら、もう。
よもやこれほどとは。
今までの鬱憤を晴らす活躍は、読んでいて爽快でした。

アキも良かった。
彼女の有能っぷりを堪能させてもらいました。
フィンの作戦だったとはいえ、あのリリがここまで掌の上で転がされるとは。

ただ、彼女の良かった点は、その有能さだけではなくて、仲間想いの点。
同期のラウルを想って、本気で怒れる点ですね。
これはラウル自身を慮ってでもありますが、ラウルが盲信するフィンを彼女も信じているからではないかなと思う。

信頼を寄せる友人が、信望している対象を、自分が良く想えなかったらば。
賢い頭脳と優れた観察眼で相手を見抜き、信じるに足りない人物と評したならば。
友人の想いを尊重しつつも、友人の為に「信望の対象を見直したほうが良い」と助言を送れるんじゃないでしょうか。
高潔な人物ってそういうイメージ。
アキはそういう猫人(おんなのこ)だと見てます。
この場面で彼女自身フィンを尊敬に足る人物と考えていることが窺えました。

すると、今後のことを考えると非常に大きいです。
フィンが危惧してますが、団員にゼノスを受け入れさせることは必須のテーマとなりました。

幹部は問題無いです。
最大の懸案事項だったアイズは、ベルとの和解(本編11巻より)を以て、受け入れる土壌が出来た。
ベートも春姫とアイズの影響できっと大丈夫。(この為に春姫を外伝6巻で予め出していたのでしょうか。構成能力が凄すぎる)
ティオナは可愛いし(このシーン、マジ好き)、ティオネは妹に説得されている。(これも本編11巻)
リヴェリア、ガレスは言うまでもないですよね。

問題は一般団員です。
レフィーヤはベルの「冒険」に当てられました。
ベルの心情を理解した時点で問題無いでしょう。
アリシアを筆頭とした妖精部隊のメンバーも直ぐには無理でも、時が経てば理解してくれそうです。
(アリシアは団でも上位メンバーかつ高潔なエルフ達の中でも年長。彼女が折れれば、他のエルフも続きそう)

あとは、第二軍の中核を成すアキとラウル。
そしてそれ以外のメンバーでしょうか。
二軍の中心である2人が納得するかどうかって、結構大きそう。
一般メンバーにとってフィンは絶対的な信頼を置くリーダーですが、立場上遠くて、より身近なアキ達の感情に左右されそうな気がするので。

とすれば、ラウルはフィンの指針に疑問を挟まず従うでしょう。
「裏切れない象徴」なのだから。
フィンを敬い、ラウルが信じる者の言葉に、アキも同調するはず。

2人が理解を示せば、下の者は拒み辛い空気が醸成されます。
それでも離脱者・理解を拒まれる団員も出るかもですが、「ファミリアを瓦解させる程の影響」は無いのかなと。
ラウル以下「主力」にこぞって抜けられちゃう可能性は低そう。

こういった予想が出来ちゃうだけで、アキの活躍は大きかったように思います。

終わりに

あぁ、面白い。
これだからこのシリーズは止められないんです。
面白くて仕方ありません。

あとがきでも触れられてましたが、大きく大きく前進しました。
準備が終わり次第、最終決戦に持ち込めそうな段階まで来た気がします。

ココまで来ると、改めて敵の粘りっぷりに驚嘆しますね。
「強すぎる」ロキ・ファミリアを相手取って、よく10巻以上も粘ったなとw

だけれど、そろそろ終わりそうですね。
フィンを覚醒させちゃいましたから。(覚醒させたのはベル君で、闇派閥の悪手じゃないけど)
クノッソスを攻略後も外伝は続くかもですが、一先ずの終わりに向かって盛り上がっていきそうで、ワクワクします。

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア10 (GA文庫)

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア10 (GA文庫)