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咲太の部屋の設定で振り返る「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」

この記事は

映画「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」感想です。
ネタバレあります。

2回目行ってきた

3週目の入場者特典のミニ色紙目当てもあり、2回目に行ってきました!!
色紙無かったけど、何度見ても良いものは良いです。
ラストシーンの翔子の笑顔で涙腺が決壊しました。
あのシーン、原作から何度泣いたか。

ほんと好き。

それと2年前に翔子が咲太の前に現れた意図がやっと掴めましたよ。
なんか勘違いしてましたけれど、「最初」はやっぱりあったんですね。
タイムリープ(正確には夢ですけれど)ものに付きまとう「鶏が先か、卵が先か」問題。

2年前に翔子と咲太が出会ったのが先なのか、咲太が事故死して翔子に心臓移植されたのが先か。
こんがらがってましたが、言うまでもなく、翔子の心臓移植が先なんですよね。

ならば、「最初の1回目」は「翔子を知らない咲太が江ノ島で事故死した」ことになる。
つまりは、2年前に翔子と咲太が会っていなくても、咲太は藤沢に引っ越していた訳です。
勿論日帰りで江ノ島に観光に来ていた可能性もありますけれど、それよか藤沢にかえでと一緒に引っ越してきたと考える方がスマート。
翔子関係なく、咲太はかえでを連れて、地元を離れる予定でしたからね。

ということはですよ、咲太がテレビシリーズで遭遇した変な事件の数々は、翔子と出会ってなくても必ず起こったことと言えます。
あとは、夢の残滓で「なんとなく募金活動」をしたり、ドナー登録をしたり(神社で麻衣と参拝してる時の咲太の財布の中にしっかりとドナーカードが描かれてましたね。芸が細かい。好き)。
麻衣も映画に出演し、それで世の中の気運が高まって、翔子は募金の力を借りて海外で移植手術を行えた。
歴史は見事に変わったわけで。
ああああ、超好き。

テレビシリーズではなかなかに苦い結末も多くて、だからこそ、こういう最高なハッピーエンドが余計に涙腺を刺激しますよ。
本当に助かってよかった。



さてさて、感慨に浸るのはこれ位にしまして、ちょっと咲太の部屋に着目してテレビシリーズを振り返ってみます。

咲太の机のカットに込められた意図に驚いた

何年か前から、「主人公の部屋の設定」で記事を書けないかなと考えていました。
面白くありません?
アニメの主人公の部屋って。

原作で詳細に書かれてる場合は別として、特に描写が無い場合は、アニメ化するにあたって丁寧に細かく設定が作られてるわけですよ。
部屋の持ち主のキャラクターを踏まえて、どういう部屋になりそうかを考えた上で、小物だったり家具の配置だったりを決めていく作業は、掘り下げることが出来れば面白いと思ったのです。
思ってただけで、全然出来なかったんですけれど。

でも今回、咲太の部屋で頑張ってみました。

先ずは第1話の画像をご覧ください。

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©青ブタ Project
初めて麻衣が咲太の部屋を訪れたシーンです。
シンプルな部屋で、目立つのは本ですね。
それも雑誌とか漫画ではなく、教科書や参考書の類に見えます。
咲太の勤勉な一面が垣間見えます。
注目は机上です。
ちょっとアップにしてみますね。
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©青ブタ Project
数学I+Aの参考書が見えます。

アングルを変えて、もう1枚机上の画像を。

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©青ブタ Project
数学Ⅱ+Bや古典の参考書、辞書などが並んでいます。

僕が着目したのは、この数学の2冊の参考書。
ざっと全話振り返りましたが、少なくとも6話まではこの並びで固定されていました。

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©青ブタ Project
以降、咲太の机が映されるカットはありません。
ちなみに、咲太の机に何が置かれているのかは、恐らく原作では描写が無かったと思います。
だから、(恐らくきっと)これはアニメ版の設定。
スタッフが「咲太の部屋」の設定を作った際に、作られた設定の1つと考えられます。


これを踏まえて、劇場版に話を戻します。
覚えている方もいらっしゃると思いますが、咲太の机上だけのカットが最低でも2回ありました。
1回目は、冒頭。
テレビシリーズでは、数学の参考書が置かれていた位置に、しかし、数学の参考書はありません。
あるのは量子力学の参考書でした。
それも2冊。

本の表紙の色を度忘れしちゃいましたので、断言はできませんけれど、多分黒は確定かな…?

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©青ブタ Project
3話で咲太が読んでいた量子力学の本。

もう1冊はなんだろう。

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©青ブタ Project
7話で理央が読んでたりしますが、これか??

兎も角、量子力学の本が2冊置かれていたことは間違いないです。
これ、大事なアイテムとして劇場版では効果的に用いられてたんですよ。


量子力学は、咲太にとっては厄介で、しかし、忘れられない学問です。
理央に教わるまで知らなかったことですが、咲太は量子力学のお陰で麻衣と出会えた…と言うと語弊がありますが、2人を繋ぐものであることは確か。
以降、朋絵や理央、のどかと4人のヒロインの思春期症候群に関わってきた存在であって、彼の1年間の思い出の品とも言えます。

言い換えれば、この本が咲太の部屋にあるということは、彼が4人の思春期症候群に関わってきたという証拠なのです。


咲太の机上だけが描かれたカットは、終盤にありました。
翔子を救いたいけれど、救えない。
そんな中で咲太と麻衣は病院の椅子で新年を迎えて…。

小学4年生の翔子が元気に「宿題」が終わったことを告げた、次のシーンで1月6日、咲太の部屋。
ここでも机には、量子力学の本が置かれています。


当たり前のようで、当たり前ではないんですよね。
この1月6日は、現実の1月6日。
咲太、高校2年生の正月です。

翔子の夢が醒め、3年前から「やり直し」て、咲太と翔子が出会ってこなかった「現在」。
それでも、咲太は麻衣達に出会って、思春期症候群を乗り越えてきたということが、この本で表現されているんです。


僕の妄想とかではなく、これ間違いなく意図的に仕掛けられていたことですよね。
多分探せば言及してるブロガーさんがいるんじゃないかな。
感想巡ってないので、僕は初回では気づけなかったですけれど、2回目でようやく気づけました。

芸が細かくて、本当に好き。
好き。
小さな設定にも作品への愛が溢れてる。

終わりに

行くたびに好きになる。
本当に良い映画。良い原作。素晴らしいスタッフ・キャスト。
好き。