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「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」感想 親愛なる隣人の魅力で溢れた最高のムービー

この記事は

「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」の感想記事です。
ネタバレあります。

はじめに

見て来た!!!!!
MCUフェーズ3最終作にして、フェーズ4のプロローグ。
それでいてしっかりとスパイダーマンの物語を軸に据えたとんでもない傑作でした。

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©マーベル
ピーター・パーカー/スパイダーマンをより大好きになった!!
超面白かったので感想です。

「高校生ピーターの日常」はラブコメ楽しい

2002年にトビー・マグワイアを主演に迎え、サム・ライミ監督が手掛けた「スパイダーマン」が大ヒットするまで、恥ずかしながらスパイダーマンは日本の特撮ヒーローだという認識でした。
(昭和ヒーロー特集とかで知ってたレベル)
当時は何故日本でこんなに受けてるんだろうという認識だったのです。

今年「アベンジャーズ:エンドゲーム」がメガヒットを記録するまで、アメコミ映画は日本では鳴かず飛ばずの状態が続いていました。
現時点におけるアメコミ映画1位が件のサム・ライミ版「スパイダーマン」(75億円)なんですよね。
(ちなみにトップ3全てサム・ライミ版3部作だったりする)

東映版の影響!!
と東映特撮で育った僕としては言いたいところですが、実際は「日本人に身近な人間性」を持っているからなのかなと。

日本人は未熟なキャラクターの成長譚が大好物です。
人間関係に苦しみ、大きな力に翻弄され、将来に悩む。
精神的にも肉体的にも成長をしていく泥臭い物語にのめり込む傾向があると思っています。

対してアメリカは悩むくらいなら行動しようぜってイメージ。
描かれるヒーロー像も完成された大人が多くて、恋に仕事にヴィラン退治と人生を謳歌している。
故に日本人は敬遠してしまうし、奥手で学園生活を楽しめず、友人関係・恋愛・唐突な超人的能力に思い悩むピーターに惹かれたのは必然なのかもしれないなと思ったのです。

今回は、そんな日本人にとって馴染みやすい、まさしく「親愛なる隣人」であるピーターの魅力に溢れた一作。
「1人の高校生男子」としてのピーターの日常に主軸を置きつつ、スーパーヒーローチーム「アベンジャーズ」の次期リーダー候補としての葛藤が描かれていました。

もうね、序盤のラブコメが最高でしたよ。
特に飛行機内でのシークエンスは、お約束満点なんだけれど、だからこそ楽しい。
好きな女の子とのラブロマンスに思い巡らせ、修学旅行をどうしても続行したい高校生のパーカーの「奥手な高校生男子」らしい空回りは、非常にコミカルでちょっと情けなくて、そして親近感が湧いちゃう。
マリア・ヒルにスーツを着るために服を脱ぐよう命じられて、ズボンを脱いだ瞬間を恋敵に目撃されてしまうとか、最高過ぎてホント好き。

ラブコメ満載のピーターの日常を物語をコミカルに見せつつ、ピーターをアベンジャーズの軸に据えようと目論むニック・フューリーの「暗躍」を絡めてくる。
しかもそれすらコメディタッチにしちゃうところが憎いよね。
もう終始笑って笑って滅茶苦茶楽しんでたら、気づいたら深刻な事態に追い込まれている。

物語が綺麗に「高校生ピーターの日常」から「アベンジャーズのスパイダーマンの戦い」にシフトしていくんです。

「アベンジャーズのスパイダーマンの戦い」は成長ワクワク

「エンドゲーム」でMCUという壮大なサーガの柱を2本も失ってしまいました。
トニーの死とキャプテンの引退。
アベンジャーズを引っ張ってきた2人がいなくなった世界で、次のリーダーは誰になるのかは大きな課題となっています。
それは、映画内の世界の民衆においても、僕らファン目線としても気になるところ。

その中で最有力候補がピーターですよね。
なんたって、あのトニーが命を懸けて守った「愛弟子」なのだから。

ピーター自身、トニーに貰った大恩を返したいという気持ちと高校生としての日常を送りたいという気持ちの狭間で揺れ動いていて、そこが今作の最大の見どころとなっていました。
ともすれば、彼は「親愛なる隣人」としての面目躍如となる活躍を見せてくれたんですよ。

なによりも高校生活を大事にする。
好きな子を、友人・クラスメートを守り抜く。
決して諦めない。
ここを譲らないのが、ピーターらしいし、彼の良いところ。

それでいて、世界を守るヒーローになるという決意を固めたと思うのです。
正体を隠してヒーローを続けている現状から脱して、次のステップに進む決意を固めたのですから。
その決意も、思わぬ形で壊されちゃいましたが、決断したことは事実ですから。

フェーズ3の「トニーに守られた新人」からフェーズ4の「新しいリーダー」への橋渡し的な作品としての意義が確かに存在したと感じました。


バトルパートはまだまだ見どころがありました。
トニー最大の理解者の1人であるハッピーの目線で、ピーターとトニーを重ねるシーンも凄く良かった。
ロンドンに向かう機内でスーツを組み立てているピーターのところです。

確かにあの姿はトニーそのものだった。
ただ与えられるがままに着ていた頃の駆け出しヒーローはそこにはいませんでした。
トニー程最新鋭技術を駆使するという訳ではないものの、自分に合った、状況に適したスーツを自身の力だけで組み上げていく。
そうして作ったスーツを着て、ヴィランに立ち向かう彼は、もうリーダーと呼んでも良いくらいのヒーローでした。
(道路標識をヴィブラニウムの盾に、投影装置?をムジョルニアに見立ててドローンに突っ込む姿は、あのサノスとの最終決戦時のキャプテンのオマージュでしょうね。痺れた)


さらに、ヴィランの存在もね。
今回のヴィランは、仮想トニー・スタークなんですよ、きっと。
かつてトニーの下で働き、あのニック・フューリーをも騙した最新技術と応用力は本物でした。
幻影とはいえ、無敵のスーパーヒーローを見事演じていたのですから。
トニーの遺した「E.D.I.T.H.」を手に入れたヴィランは、まさしくトニーの幻影でした。

けれど、トニーでは無い。
トニーには劣っている。
何故なら、彼は1人じゃなかったから。
多くの部下(同士)の力を借りて、ようやく一人前。

それでも新人からリーダーへの成長過程であるピーターには十分な脅威だったと思います。

そんなヴィランに、ピーターは1人で立ち向かいました。
やはりトニーの遺した技術を1人で駆使して、スーツを作って、勇敢に戦いを挑んだのです。
挑み、守りたい皆を守り抜き、ヴィランを倒して世界を救った。

この1人でというところが本当に良い。
厳密にいえば、ハッピーの助力なくしては出来なかったけれど、基本は1人でした。
今作には、サム(ファルコン)を2代目キャプテン・アメリカとして登場させるシナリオも検討されていたということですが、出てこないで正解。
1人で戦い抜いたからこそ、ピーターの成長がくっきりと見えましたので。


兎も角、「親超え」とか「師匠超え」といった分かりやすい指標を今回のヴィランには持たせたのかなと。
「仮想トニー」としてね。
その上で、ピーターにヴィランをやっつけさせる。
まだまだトニーの領域には立ってはいないけれど、次期リーダーとしての資格を得たと認めさせるには十分な勝利だったと感じました。

バトルパートに流れるトニーのヒーローとしての成長には、大いに納得し、心から楽しめました。

そしてフェーズ4へ

濡れ衣を着せられてしまったピーター。
果たしてどのようにして汚名を注いでいくのか。
ヒーローとしてリーダーに近づいた彼の今後の活躍に益々注目せざるを得ない終わりになっていて、本当にこのシリーズはずるいな~と。
こんな終わり方されたら、フェーズ4が楽しみで仕方なくなるじゃないですか。

しかもですよ。
エンドクレジットでの驚きのネタばらし。
唖然でした。

え???ってなった。

ニック・フューリーが簡単に騙されたのをもっとおかしいと思っておくべきでしたか。
にしても彼はどこで何をしてるのか…。
大きな謎を残して、これもフェーズ4で明かされるんでしょうね。

終わりに

MCUの個別作品の中では、ダントツに好きかもしれません。
面白すぎた。
少なくとも「シビル・ウォー」と同じくらい鑑賞後に気分が高揚しました。

もう本当に面白かった~。
気が早いけれど、3本目に期待しちゃうな。