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「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」ネタバレ感想

この記事は

「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

舞台挨拶で見て来たよ~♪
ただ残念なことに、先行申し込み期間が終わってから知ったので、一般販売分でチケットを購入。
舞台挨拶なのに後ろから数えたほうが早い列に。
お陰様で、お顔が全く見えなかったorz

どうして、どうして僕は近視なんだちくしょおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!
双眼鏡持っていくんだったな~。

でも、生黒沢ともよさんは、とってもちっこかったことだけは分かりました。
登壇者の中で一番ちっこかったです。
生ボイス聞けたので良しとしよう。

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©「響け!」製作委員会
ではでは、本編の感想です。

衣擦れの音

「リズと青い鳥」の時も印象的だったのが衣擦れの音です。
思い起こせば京アニには欠かせない効果音ですね。
今作でも実に印象的に使われていたなと。

パッと頭に思い浮かぶのは、久美子と奏の邂逅シーン。
2人の出会いは、この映画の始まりを象徴しているので、非常に大事なシーンです。
そこで、一挙手一投足に至るまで、細かく丁寧に衣擦れのエフェクトが掛けられておりました。

何故なのでしょうか。

ちょいと調べたところ、人間の「聞く」には3段階があるそうです。
最初は「聞く」で、「自然に耳に入ってくる状態」を表します。
次に「聴く」は、「意識して聴いている状態」。

映画に当て嵌めますと、BGMは意識せずとも耳に入ってくるので「聞く」。
セリフは意識を集中させるので、「聴く」でしょうか。

最後の段階が「訊く」。
心の中の会話すら黙らせて、積極的に聞き耳を立てている状態で、最も集中している状態でもあるとのこと。
この状態に入るには、耳に入る中で最も小さな音に集中する必要があるようです。

僕にとって、最も小さい音が衣擦れの音だったんですよね。
なんか気になった。
気になって、集中して意識的に聞くようにして。
なれば、衣擦れの音よりも大きな音量であるセリフは、必然耳に入ってきますよね。
「聴く」よりも高い集中力をもって「訊いて」いたのだと思います。

先ほども書いたように、2人の会話は観客に集中して欲しい大事なシーン。
より集中して「訊いて欲しい」シーンだったのではないでしょうか。
だからこそ、ここに「小さい音」である衣擦れの音を多用していたと解釈しました。


衣擦れSEの意図は兎も角として、僕はこんな感じで、スクリーンの中の世界にずっぽりと嵌っちゃいました。
そこからはもうあっという間。
酸っぱくも爽やかな青春譚を堪能しました。

奏を通して久美子の変化を描き切る!!

もうね、やっぱり作劇が上手すぎですよね。
今回のメインテーマとなっていた「努力が報われるか否か」の描き方とか、もう最高。
いきなり奏のドラマの核心を描くのではなくて、美玲でワンクッション入れてるところが憎い。


美玲の「自分よりも下手な同級生や先輩との接し方」というのは、部活系あるあるですよね。
レギュラーには実力ではなく、学年で決められていくという「一般常識」は、いつの間にか刷り込まれてしまうものです。
特に学校の部活動は「時間制限」と「教育としての側面」を持ち合わせている分、社会人(プロ)よりも強く意識しがちになるのかもしれません。
美玲の抱えた悩みは、驕りとかではなくて、広く普遍的な感情といえると思います。

奏は、かつて自分がぶつかった壁の前でもがく美玲に少なからず同情していたんじゃないかな。
その上で、葉月よりも美玲のほうが選抜メンバーに相応しいと久美子に認めさせ、その後に自身もすんなりと夏紀を抜いて選抜メンバー入りできるように画策してたのかなと。

結果はご覧の通りでしたけれど。
思惑通りに久美子が動いてくれず、美玲も美玲でかつての奏が取らなかった道…下手な先輩を認めるという道を選択。
見事に計画倒れになってました。


事前に奏の本音に繋がるエピソードを入れてくれていたので、より奏自身のドラマが濃く映えていたと思いました。
その奏のドラマですが、こちらも部活系あるあるの代表格ですよね。
努力は報われるのか。

否、ですよ。

よく大人が「努力は報われるから、ちゃんと頑張りなさい」的に説教として使用しますけれど、これは勝者の驕りか弱者に対する欺瞞ですよ。
努力しても報われない時は、普通にありますよね。
そりゃそうです。
努力してる人がみんな報われるんなら、この世からトーナメントとか消え失せます。

努力は報われない。
でもね、報われなかったら何も残らないかというと、そうじゃないと思うの。
少なくとも、久美子にとってはそうに違いありません。

悔し涙は、必死に努力した者しか流せない特別な涙ですよ。
中学時代の久美子が流せずに、麗奈が流せた特別なもの。
久美子の出発点。

「努力しても意味がない」という結論に達した奏にそれでも努力することを強く説いて、一緒に頑張って。
ダメ金を通じて、奏に悔し涙を流させる。
描写的に久美子自身が泣いた訳じゃないけれども、久美子が悔し涙を流したことに等しい意味が奏の悔し涙に溢れていました。

中学の時の麗奈の気持ちを知って、久美子はこれで1つ大きくなれたのかなと。


本気で悔しい思いをして、涙まで流した経験というのは、今後に活きていく気がします。
僕はそういう経験がないので、ちゃらんぽらんな人生でしたけれど、悔し涙を流したことがある人は「二度と同じ気持ちを味わいたくないから」と一層真剣に・必死で取り組めることでしょう。
入学当初の奏のように、そのまんま逃げる人生を歩む人もいるかもですが、夏を経験した奏も、そして部長になった久美子もそうじゃないはずです。

流れからしても、「今度こそ」となっている部活の部長を拝命したのです。
久美子は、間違いなく変われたのです。
「頑張って無駄じゃないもの」。
久美子が手に入れたのは、こういうことなのかもです。

1期から描かれてきた久美子の物語の根幹がついに今作で結実したのです。
シリーズの締めくくりに相応しい、非常に見ごたえのあるドラマでありました。

終わりに

待った甲斐のある素晴らしい1作でした。

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黒沢ともよさんの公式twitterより