「呪術廻戦」はお約束の展開を巧みに外すから面白さが増してきてる
この記事は
「呪術廻戦」の記事です。
ネタバレを含みます。
段々と
「呪術廻戦」が面白くなってきてます。
掛け合いが楽しくて、バトルにも迫力が増してきた。
なによりもお約束の展開を悉く外すところが良いです。
そこで、今回はこの漫画について書かせてもらいます。
何故お約束の展開を外してくるのか。
そこにはきっと理由があるんじゃないかと思ったのです。
お約束
今のところ「お約束」は2つありました。
1つは1年生の死です。
悠仁、伏黒、野薔薇の1年生3人の何れかが死ぬという「予告」が5話で出ます。
5話です。
急展開です。
いきなりの死亡フラグですが、ネットで感想をざっと漁ると皆冷静なのよw
伏黒説と悠仁説が多くて、どちらかといえば悠仁説の方が上。
この後の展開予想までしっかりと的中していて、慧眼の持ち主が多いインターネッツですね。
僕個人は、「ぅおっ」ってなりました。
結構驚いちゃいました。
死の予告はなかなか無いし、集まったばかりのメインキャラ…しかも主人公含むうちから1人死亡。
「誰なんだ!?」ってなったんですよ。
当時の僕の予想は伏黒でした。
悠仁は主人公だから無いし、野薔薇はちらっと回想入った上に5話で死を受け入れている。
直後の展開でまた野薔薇が…ってなっても意外性は無いから、伏黒なのかなと。
悠仁がショック受けそうですしね。
なによりも3人の中では一番頼りになりそう(強そう)です。
実際6話では1番場馴れしている伏黒が悠仁から「頼りになる」と言われています。
バトル漫画に於いて味方のピンチを効果的に演出するには、「敵が仲間内で一番強いキャラを負かす」展開を作れば良い。
噛ませ犬なんて揶揄されることもありますが、噛ませ犬はある程度の実力があるからこそなんです。
例えば、噛ませ犬代表のヤムチャさん。
彼が本当に良い例です。
ヤムチャが初めて死んでしまった栽培マン戦を思い出してください。
先ず天津飯が栽培マンと戦います。
終始優勢に進めた天津飯は、あっさりと栽培マンを倒します。
観戦していたベジータが敗れた個体を抹殺すると、残った栽培マンに忠告します。
「あの栽培マンははじめにやつをなめてかかった…オレはいったはずだ おもいきりやれとな……」
ナッパもこれに続き、栽培マンを一喝します。
ビビる栽培マン。
前には敵、後ろにも怖い上司。
俄然気を引き締めざるを得ない状況です。
つまり、本気になったんですよ。
対する地球側はまだまだ余裕を見せます。
そりゃそうです。
尖兵をあっさりと倒したのですから。
強くなったという自信もそうさせるのでしょう。
油断がありました。
当然ヤムチャにも。
本気の栽培マンと油断してるヤムチャ。
それでもヤムチャが圧倒し、栽培マンを倒すんです。
これ、かなり凄いことですよ。
栽培マンの戦闘力1200はラディッツに匹敵するほど。
悟空とピッコロという当時地球最強コンビ2人を相手取って追いつめたラディッツと同等の戦闘力を有しています。
恐らく知力等の差で戦えばラディッツの方が栽培マンよりも強いのでしょう。
(ナッパの言う「パワーだけならラディッツと匹敵する」発言から推測してます)
それでもヤムチャよりも圧倒的に強かった悟空、ピッコロを追いつめたラディッツと同じくらいの強さの栽培マン。
その本気モードとぶつかって、余裕状態で勝っている。
ヤムチャがどれだけ強くなっているのかが分かるかと思います。
直後油断してるからこそ自爆で命を落としちゃいましたが、勝負自体はヤムチャが勝ってました。
ラディッツは悟空・ピッコロが束になっても敵わなかった。
そんなラディッツと戦闘力ならば互角の栽培マン。
それを倒したヤムチャは強い。
当然天津飯たちもヤムチャと同等の強さであり、それを軽々と一蹴するナッパのヤバさが際立つ。
そのナッパを顎で使うベジータの強大さも演出出来ている。
ヤムチャは立派に噛ませ犬としての役柄を全うしていますね。
長くなりましたが、噛ませ犬は強くないと務まらないのです。
話を戻します。
伏黒が斃されることが一番特級のヤバさが際立つ。
だから、伏黒なのかなと考えてました。
2つ目は第11話でのこと。
五条先生の死亡フラグが立ちました。
そもそも10話で呪物が人類との戦争に勝つには、悠仁を仲間に引き入れ、五条を封じることとしています。
噛ませ犬の話ではありませんが、この先悠仁を活躍させ、人類を危機に陥れるには五条の退場は1つの王道プロットでもあります。
分かり易く「主人公サイドのピンチ」を演出出来ますので。
五条は常々、自分を最強と言ってます。
事実宿儺(指1本分)を軽くあしらえるだけの実力の持ち主。
これだけである種死亡フラグが立ってるんですよね。
最強の師匠は得てして序盤で斃されちゃいます。
それなのに、この流れです。
五条の退場が主人公サイド最大の危機だと分かる⇒漏瑚(じょうご)では倒せないと夏油(げとう)が忠告⇒漏瑚は宿儺の指8,9本分の強さ
一見すると、噛ませな敵が五条の強さを浮き彫りにするような流れです。
しかし、「五条が最強」という前振りが効いていて、漏瑚の方が勝ちそうな気配があるんです。
「漏瑚では勝てない」というのも五条が「勝って当たり前」のように思わせられますからね。
長くなりましたが、この2つの「お約束」が今の面白さに繋がってるんです。
五条の嘘・器の真実
そもそも器って何のことでしょうか。
宿儺の指を飲んでも耐えられる人間のこと?
死にもせずに乗っ取られもせずに自我を保てる人間が器?
それで、20本全ての指を飲み込ませて器ごと殺して宿儺を葬るのが目的?
指同士は共鳴するので、器である悠仁が協力するのも理に適っている…と説明されてましたが…。
これ嘘でしょ。
共鳴の部分は本当でも、目的は嘘。
理屈が通りません。
この言い方では、
器になったから探知機になった。
↓
何故なら身体の中の宿儺が力を取り戻したいから
↓
力を取り戻したいのは、器の意識を奪えるから
となります。
1行目が真っ赤な嘘です。
器だから、探知機になった訳ではありません。
指を飲んだから探知機になったのです。
これは同じようで全く異なります。
指を飲んだ人間が、
- 自我を保てている⇒器である
- 自我を保てない⇒宿儺になる
の2パターンがあり、何れにせよ、探知機として作用します。
宿儺にも自我があり、宿主の意識を自分のモノにしようとしています。
それは五条だって上の幹部連中だって知っていること。
探知機云々を知ってるのだから、この辺り知らない訳がない。
当然、力を求めて他の指を探すのだから、もしも宿儺の抹消が目的なのであれば、指を飲んだものが器かどうかなんてどっちでも良いはずです。
五条は指1本程度の宿儺ならば倒せるのですから、
1.適当な人間(仮に「被験者A」とします)に指を飲ませる
↓
2.被験者Aが自我を保てたら指示を出して指の捜索。乗っ取られたら泳がせる
↓
3.被験者Aもしくは宿儺が新しい指を見つけたら、被験者Aごと抹殺
これを繰り返していけばいい。
「被験者の命を軽んじている」という倫理的な問題がありますが、全人類の為という大義名分もある。
なんなら死刑確定囚でも使うとか(それでも問題ありですが)方法はある。
器なんかいなくても、宿儺の討伐は可能なのですよ。
あ。
「宿儺になったら、五条でも倒せないのでは?指を破壊できなかったのだから」というのはナシですね。
もしも被験者が宿儺になってしまい、五条でも倒せないのでしたら、3話で悠仁に2本目の指を飲ませていません。
飲ませる前までの時点では、悠仁が器かどうか五条の中で確定では無く、宿儺に乗っ取られる可能性があったからです。
宿儺になったら倒せない場合、そんな危険犯さないでしょう。
だから、「20本全ての指を飲み込ませて器ごと殺して宿儺を葬る」という目的は嘘。
器というのは、それこそ世界を救えるような救世主を指すのでしょう。
以上より五条は、悠仁に大きな嘘を吐いていると思っています。
「器の真実(?)」とお約束を破る展開の関連性
さて、この嘘を踏まえて、お約束2つを見てみます。
2つとも僕の予想外の結末がありました。
1つ目は、1年生の死が伏黒だと思っていたら、悠仁だった件。
主人公死んじゃうのかよ…と唖然としました。
お約束を破ったかのように見えましたが、「器の真実(?)」を踏まえると、これは当然の帰結に見えてきます。
器が救世主を指す場合でも、宿儺が身体の中にいるという事実は消えませんし、宿儺の力を器が自分の力で引き出せるようにならないと意味がありません。
ならば、宿儺を従わせる必要があります。
その為の布石なのでしょう。
いきなり宿儺が従順になるとおかしい。
故に、1つ契約という縛りを挟んだ。
勿論これには宿儺の陰謀が張り巡らされていて、いずれこれが原因となって悠仁の意識が宿儺に乗っ取れられてしまう展開が待ち受けているのでしょう。
だけれど、その更に先では、この契約を切欠に悠仁と宿儺は協力関係になるんだと想像してます。
2つ目は漏瑚が勝つんじゃないかと考えてたら、簡単に負けた件。
五条の圧勝でした。
悠仁を見学させても勝つという余裕っぷり。
宿儺が5割程度の力では、五条の足元にも及ばないということが分かりました。
「最強」と言葉で語る以上の説得力があったんです。
確かに強いです。強すぎです。
これも「器の真実(?)」を踏まえて、何故この展開になったのかを考えてみます。
すると、滅茶苦茶強い五条が器を欲するほどの脅威が待ち構えていることが窺えます。
まだ見ぬ圧倒的な力を携えた呪物の存在を臭わせてくれました。
漏瑚が逆に噛ませ犬だったのですね。
味方の強さを際立たせるための敵。
五条が器を欲する理由だけが不明でしたが、これでハッキリした感じです。
まとめ
物語が作られて1000年以上は経ってますかね。
物凄い長い歴史があるので、「誰も見たことの無いプロット」を紡ぐことは最早不可能です。
どんなに新鮮味溢れた物語でも、ミクロな視点に細分化するとどこかで見たことのあるものに落ち着きます。
1つ1つは小さな「王道展開」でも、話の繋ぎ方を工夫する事で、読み手に驚きと共に新鮮味を与えているんですよ。多分。
ようは「読者の予想」を裏切れる「ミクロな王道展開の繋ぎ方の工夫」で魅せているところが大きい。
こう考えると、先の2つのお約束は見事に予想を裏切ってくれてます。
若しかしたら、僕は少数派なのかもしれません。
大方の人にとっては予想通りの展開なのかもですが、少なくとも僕は驚きました。
これは、ミクロな王道展開の繋ぎ方が巧いからなのかなと。
読者に「これはお約束の展開だろう」と信じ込ませて、それとは別の道を用意する。
王道を外す展開は、そこに「そうなる道理」が無いと「超展開」と揶揄されますが、そうはならないように上手に理屈をつけている。
短い間隔でこの王道を外す展開を繰り返すことで、面白さが生まれていると思ったのです。
出足は少々合わないかなと感じた漫画ですが、どんどんと面白味が増してきてます。
このままの勢いに乗って人気作の仲間入りを果たしてくれるとジャンプを読むのが一層楽しくなりそうで期待しています。