「ドラえもん のび太の月面探査記」感想 売れっ子作家だからこその説得力に脱帽
この記事は
「ドラえもん のび太の月面探査記」の感想です。
ネタバレあります。
はじめに
飲み会後に映画に行くべきじゃ無かったかもですね。
ぼーっと見てしまった。
でもね、面白かったですよ。
今回脚本に辻村深月さんを招聘されてますが、流石作家さんだなと。
色々な意味で凄いなと感じた作品でした。
伏線が活きた傑作だった
「コナン」もそうなんですけれど、面白い時って伏線がしっかりと活きてるんですよ。
「ドラえもん」も同じで、決まった尺の中で起承転結がしっかりと入るように作られているから、前半に後半で回収される伏線がしっかりと張られているんです。
今回で言えば、例えばモゾの甲羅がメッチャ硬いとかノビットがアベコベの発明品を作っちゃうとか。
そういうの。
前半のほのぼのコメディパートで非常にさり気なく提示されるんですよ。
ノビットの作ったカートにひかれてもへっちゃらなことで、甲羅の硬さを示す。
そのカートをモゾが運転することで、前進しようとしたら後退して、右にハンドルを切ると左に曲がってというドタバタ劇として魅せる。
どちらもしっかりとコメディとして違和感なく描かれていて、よもやクライマックスのシリアスな部分に活かされるなんて思わせない自然さがありました。
全てに無駄がなくって、コメディパートにすら重要な伏線を忍ばせておいて、終盤でいっきに回収する。
こういう脚本を魅せられると、当たり前なのかもですが計算し尽くされて書かれているんだなと感動しちゃうんですよね。
しかもですよ、ただ「物語を纏める」だけに留まらず、テーマの1つにまで関わってくる伏線があったので、「うわぁぁぁすげぇぇぇ」ってなりました。
ノビットのアベコベの発明品のことです。
想像力を大切にね
通説の大切さをドラえもんが説いていました。
今では常識になってる事も、昔は非常識だった事っていっぱいありますね。
作中でも出てきた地動説もそう。
地球が太陽の周りを回っているとする地動説は、昔は馬鹿にされていました。
天動説の方が信じられていたんですよね。
それこそ長すぎる年月、今とは逆転していたんです。
地動説が提唱されたのは、なんと紀元前5世紀頃まで遡るようです。
そんな大昔から今でいう常識が提唱されたのに、16世紀にコペルニクスが登場するまでずっと天動説が優勢でした。
(コペルニクスの説もしばらくは信じられていなかったようなので、地動説の方が優勢になるのはもっと後年)
なんだか話が逸れましたが、想像力を働かせて通説を説くことって「発展」に繋がる可能性があるってことですよね。
誰からも信じられない事でも、信じて研究や布教していけば、いずれ定説になる…こともある。
ドラえもんの説く通説の大切さは非常にスケールの大きなお話ですが、もっと身近で考えれば、小説家は「想像力が大切なお仕事」の1つですよね。
まさに、この映画自体がそう。
「映画ドラえもん」って、全くのゼロからストーリーが作られていることもありますが、原作の短編を下敷きにしてる事が多いですよね。
これは藤子F先生が原作を書かれていた頃からで、まさに1作目の「のび太の恐竜」がそうでした。
今回もてんとう虫コミックス23巻収録の「異説クラブメンバーズバッジ」が原案になっているようです。
「ドラえもん」の短編は、アニメにすれば1話10分ちょいです。
「異説クラブメンバーズバッジ」も同じはずです。
それを111分の長編にまで膨らませるんですよ。
半端な想像力じゃ出来ない業だと思うんです。
しっかりと「ドラえもん」らしさを含んで、友情と冒険と夢に溢れた物語に仕立て上げる。
作家さんって凄いなと感嘆しちゃいます。
小説家として長年第一線で活躍されているからというのもありますが、映画の脚本自体が素晴らしかったからこそ、辻村先生の書かれる「想像力を大切にね」というメッセージに説得力がありました。
終わりに
最近の若者は想像力が欠如してる…なんてお説教を耳にする事が多くなりました。
バイトテロ関連での話題でよく見聞きします。
食品を扱っている仕事で、不衛生なことをして、あまつさえSNSで配信したらどうなってしまうのか。
「クビ覚悟で」というのは配信者自身が言ってるので、そこまでは想像出来てるんでしょうけれど、その後のことが想像出来てないんじゃないかという批判ですね。
恐らくネットで炎上することも想定内。
けれど、個人情報を暴かれる事は想定出来ていたんでしょうか?
お店から訴えられてしまうことは想定していたのでしょうか?
将来の就職で不利になる可能性まで考えられていたのでしょうか?
当人にしか分からない事ではありますが、想像力を働かせれば、充分抑止になるというのは事実だと思います。
想像力って一般人にとっても大切な事で、決して他人事じゃないんですよね。
子供向けに「想像力を養うことは大事」だと訴えることは意義があるなぁと感じました。
ま、そんな説教臭いお話では無いんですけれども。
見方がおっさん臭くてダメっすね。