「涼宮ハルヒ 七不思議オーバータイム」感想(「ザ・スニーカーLEGEND」所収新作短編)
この記事は
「ハルヒ」シリーズ最新短編の感想です。
ネタバレ含みます。
はじめに
5年振りですって。
僕にとっては「涼宮ハルヒの驚愕」以来なので、実に7年振り。
うわ~あれそんな前になるのか。
そろそろリブートして欲しい所ですね。
やっぱり抜群に面白いもの。
そんなこんなで久々のハルヒですが、その感想を書いてみますね。
企画記事についての所感もちょろっと書きます。
カラーページ
ここのところ、声優陣によるSOS団の活動が活発になって来てます。
去年アニサマにサプライズ出演したり、先日はスニーカー文庫の30周年イベントに登壇したり。
にわかに活気づいてきてる周辺をよそに、本丸は静寂を守っていたのですが…。
企画のカラーページでは、メインキャスト5名のQ&Aが掲載。
男性陣の受け答えが相変わらずで好きですw
杉田さんの淡白な返しに小野さんの「キョンへの想い」がやたら重いとことかw
あと、「若手にハルヒを見て役者を目指しましたと言われる」云々を読んで、改めてそんなに経ったのかと感慨に耽ったり。
僕のようなオッサンにとっては、つい最近って感じなんですけれどね。
更に堀口悠紀子さん(白身魚名義)の描き下ろしイラストも。
順当に考えれば、池田晶子さんの方が適任な気がしないでもないけれど、より「レア感」を演出したかったのかな?
堀口さんは京都アニメーションを離れてしまったらしいですから、確かに今や貴重ですけれど。
ま、堀口さんの絵、僕としては大好物なので良かったのは確かです。
あいも変わらずぷにっとした柔らかそうな筆致が素晴らしいです。
「七不思議オーバータイム」
新キャラの正体が分からなかった。
なんだろう?
スターシステム?
それとも文字通り本当の本当に新キャラ?
わざわざ短編の為に?
後者として考えるのであれば、これは完全に新作への布石と見て間違いないですよね。
だって、明かされて無い不思議な事ばかり起こして、嵐のように去って行ったのだから。
みくるを見て「不思議の一つ」と呟いた真意は?
校内でメイド服を着てたから??
それは確かに不思議かもだけれど、それがハルヒの欲している「不思議」にならないことくらい、2か月半同じクラスで過ごしただけとはいえ理解してるでしょう。
だって、ハルヒの事を愛称で呼ぶくらいだし、ハルヒからも「あの娘」なんて親しげな感じで扱われてるんだから。
「ただの人間」を路傍の石位に見てるハルヒから認識されてるんだから、大したものですよ、これ。
兎も角、んじゃあ、何故みくるを見た瞬間に「ハルヒの求める不思議の一つ」と下したかと言えば、考えられるのはみくるの正体を看破したってことくらいでしょうか。
パッと見で、未来人だと悟ったのだとしたら、このミステリィ研部員はただものじゃありません。
もう1つの謎は、有希が読書をストップしてまでこの娘の話を聞いたこと。
キョンや古泉が驚くのも無理からぬこと。
有希がここまで興味を示すのですから、これは「ハルヒの観察」上不可欠な事と認識するのがスマートです。
やはり「ただの人間」では無いのでしょう。
なんせ交換留学生ですからね。
時期外れの転校生に匹敵するくらいハルヒの興味対象になってもおかしくない気がします。
金髪のミステリ研。
ただのゲストキャラなのか、今後に関わるキーパーソンなのか。
是非後者であって欲しいし、続編に取りかかって下さっていると思いたい。
ゲストの妄想語りはこの辺りにしまして、本編は、今までにない展開。
常に後手に回っていた・回らざるを得なかったキョン達が先回りして、ハルヒの思考を潰していくというもの。
キョンと古泉があーだこーだと七不思議をでっちあげていく様が、非常に地味な作業なのに、とても面白い。
「実際に起こっても問題無い」ことを「こじつけや屁理屈」で外堀を埋めて行く作業は、SFやミステリ好きには堪りませんね。
個人的には、古泉のミステリ講釈を大変楽しませてもらいました。
古文にはそんなミステリめいたお話があったのですね。
(一応調べてみましたが、今作の作り話では無く、実際に「今昔物語集」に収載されているものでした)
「鬼というフィクション上の生き物などおらず、現実的な解釈が可能」という推理は目から鱗だし、論理的にはとっても綺麗。
こういった逸話をただ披露する訳では無くて、ハルヒ対策に充てこんでいるところがポイント高いですよね。
ミステリ研の部長考案の謎解きクイズといい、1人のミステリファンとして大変楽しませて頂きました。
勿論、散々苦労して作った七不思議をハルヒの突飛な発想によって一蹴される「らしい」展開まで含めて楽しめました。
「"8つ目"の七不思議」なんて発想は、常人には不可能だわw
こりゃいくら頭を巡らせても回避不可能案件ですねw
「涼宮ハルヒの一手損角換わり」
まさかのトリビュート短編は、さがら総先生が執筆。
「教え子に脅迫されるのは犯罪ですか?」第3巻は12月25日発売です!!
クリスマスのプレゼントとして皆さん、買いましょう。(巧妙なステマ)
事前に先の短編を読んだ上で、執筆されたのでしょうか?
非常にタイムリーです。
さがら先生は将棋好きで有名なので、将棋をチョイスしたのは自然な成り行きに思えます。
それにしても、偶然にしては符合してます。
「七不思議オーバータイム」では、ハルヒが校長と将棋を指していたことになっていて、戦法も実にハルヒらしい。
王将で玉将を詰みにかけるとか、勇ましすぎだろ(汗
よくもまぁ、入玉まで行きましたね。
通常は、王将を逃がすために入玉するはずなんですけれど、相手を追った結果が入玉って。
とってもハルヒらしい。
で、このまんまな発言を今作でハルヒに取らせている。
だからまぁ、納得の展開だった。
序盤の地味さを嫌ったハルヒが知らず知らず派手で攻撃性の高いルールに変更していたとか怖すぎるw
有希がいなかったら、いとも容易く世界は改変されちゃうのでしょうね。
記憶まで整合性保つように改変されちゃうとか、地球人には対処のしようが無いし。
オリジナルの直後なので、どこか同人的なノリを感じたのは確かです。
ただ、オリジナルに通じるハルヒらしさが根底にあって、彼女らしい複雑な乙女心が密接に絡まった物語となっていたので、納得感が高かったです。
オチまで含めて楽しく読めました。
終わりに
最初は2000円たっけぇなと思ったんですよ。
ハルヒの短編だけに2000円は、流石にパスだなと。
けど、ここで逃したら、永久に読めなくなる可能性があった。
シリーズの刊行が定期的に続いている様なら、まだ望み高かったですが、そうじゃないですからね。
文庫新刊は7年も出ていません。
そう考えなおして買ったのですが、うん。
今は満足してます。
誌面では25ページですが、文庫換算すれば50ページ以上はありそうなボリュームでしたし。
カラー企画やトリビュート小説もあって、決して損はしなかったと信じてます。
さてさて。
最近アニメを見始めた「このすば」。
原作を初体験してみます。
面白かったら、文庫に手を出してみよう。