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「錆喰いビスコ」感想

この記事は

「錆喰いビスコ」の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

話題のラノベをようやく読めました。
前からイラストが格好良くて気になってはいたのですが、手を出さずにいたらこのラノ1位。
中身も良いのかってことで、やっと重い腰を上げた感じです。

なにかしらの後押しが無いと、手を出さないというのはいけませんね。
少しでも気になったら、自分から動いていかないとな…。

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©瘤久保慎司/赤岸K/mocha
ではでは、第1巻だけしかまだ読めてませんけれど、感想です。

マイナス点もあるが…

ちょっと癖のある文体で、読みにくいところもあって、スラスラと読めるって感じじゃないのは、率直に言って気になった部分でした。
また、キャラクター描写に揺らぎがあり、固まりきってないのかなと思う点もありました。
(ビスコのようなキャラが素直に「うん」って頷いてると、「ん?」とは思う。個性だし、それこそ型にはめ込んだ考え方だと自覚しつつも、そこは「おう」とかのほうがしっくりくる)
特に感じたのは主人公ビスコの相棒となるミロに関してですね。
「愛」がテーマとはいえ、男性同士で「愛してる」ってストレートに表現していたり、BL小説かなと感じるシーン(ほぼミロ×ビスコ)が散見されました。
ミロは女性遍歴が多数あり、ビスコと姉をくっつけようとしてるあたり、ビスコに対して恋愛的な感情を抱いているわけではないと読み取れます。
故にコンビ愛を描くための描写なのでしょうけれど、殊更BLを意識してない僕のような読者にも「BLっぽい」と思わせてしまうのは、キャラクターが固まりきってないのかなと思わずにはいられないのです。

と、批判的なことばかり纏めて書きましたが、こういった個人的にマイナスに感じる部分を覆い隠すほどには、勢いのある物語だったのは確かです。
世界観、物語展開、そして悪辣極まる悪役のキャラクター。
“一番ぶっとんでいる”という選評に違わぬパワーを持っていました。

世界観のオリジナリティが凄い!!

荒廃した世紀末を思わせる近未来の日本。
それ自体は手垢のついた世界観ですが、味付けが独特。

先ず、人類を蝕む錆び風(体内からどんどん錆びていって、やがて死んじゃう)に耐える進化を遂げた動物をさらに生体兵器に改造しちゃいましたって発想が凄い。
空飛ぶカタツムリとか、銃弾をも弾くカニとか。
こういった世界設定だと、大抵人類だけが滅亡に突き進んでいて、ほかの動植物が進化して適応してるってなってるけれど、その極みみたいな設定。

人間って裸だと弱いですからね。
肉食動物はおろか、草食動物にだって敵わないんじゃないかな。
昆虫だって、大きければ、人間なんてひとたまりもないと思うんです。
「新ジャングルの王者 ターちゃん」で昆虫が人間と同じ大きさなら、地上の生物で昆虫が最強って書いてあったから間違いないはず。
そんな訳で、妙に納得しちゃったし、その上で人間が改造してたら、そりゃ兵器としては高威力なモノになるだろうなと。
「動物兵器」が生まれたのは、錆び風で精密機械がすぐに駄目になるからというのも分かりやすい。
動物や昆虫独特の生態を用いた攻撃手法などバラエティに富んでることもあって、非常に面白い設定だなと感じました。


で、ですよ。
最も面白い設定はやっぱりキノコ守りですよね。
キノコを武器にするとか、前代未聞。
どこぞの配管工すら出来なかったことを、平気な顔してやってのけるキノコ守りすげぇ。

とはいえ、描写からすると結構えぐい武器として成立してそうなところが上手い。
キノコはカビと同じ菌類。
菌を矢に添付して射る。
矢が体に傷をつけると、そこから菌が体内に侵入。
特別に調合された菌は、体内でいっきに成長して、内から体を破って大きなキノコとなる。
えぐすぎ。

しかも、キノコは毒を持っている種も多いから毒矢としても使える。
逆に、薬としても使われるから治療も可能。
かじれば身体を急成長させるキノコもありますし、そう考えると武器としての適性は案外高いのかもしれません。

キノコ守りの設定は、作品の根幹だし、顔です。
かなり重要な位置にあるのですが、それに見合うほど練り込まれているし、世界観にもあっている。
オリジナリティも高く、応用も効く。
とっても凄い設定だと感じます。

骨太な冒険活劇

錆び風で蝕まれた人間を唯一治すことが出来るという伝説のキノコ「錆喰い」。
ビスコは師匠を、ミロは姉を。
それぞれ大切な人を錆から救うために、「錆喰い」を求めて冒険することになるのですけれど、この冒険が思った以上に濃厚。

埼玉から東北まで、様々な地で出会いと戦いを繰り返す2人。
いつしか最高のコンビとなり、成長し、縁を紡いでいく。
それらはやがて来る巨悪との決戦に活きていって…。


兎角ハードボイルドな冒険活劇を楽しめます。
錆に蝕まれ、矢を浴び、銃弾を食らい、血反吐を吐いて全身から血を垂れ流す。
それでもギラギラと燃える目で敵を射て、ズタボロの身体を引きずってでも己の牙を敵の肌に食い込ませる。

大切な人を守るための死闘は、肉体が滅んでも止まることはない。
あまりにも熱く燃え滾る死闘が繰り広げられます。


物語は本当に熱いです。
クライマックスの決戦までの冒険の1つ1つは、わりと少ないページ数でサクッと終わるんですが、内容がいちいち熱血。
子供だけの町での戦いや走る列車内での死闘などなど、どれもこれも満足できる物語。
その上で、それらすべての物語が収束する最終決戦は、敵の残酷さやしつこさもあって、胸やけしそうなほどの熱量を持っています。

男くさい骨太なラノベを読みたければ、迷わずに本書を手に取った方が良いです。
きっと満足できる物語が待ってると思いますよ。

終わりに

読了まで8時間ほどかかって、そういった意味でも満足度の高かった本作。
冒険活劇としても、バトルものとしても(心底むかつく敵の描き方も秀逸だったため)楽しめました。
終わり方も非常に爽やかで、読後感も良く、非常に良い読書体験をさせていただきました。