Mangaism

アニメ、漫画の感想や考察を書いてます

「この素晴らしい世界に祝福を!」の素晴らしいセリフ回し

この記事は

「この素晴らしい世界に祝福を!」の感想です。

「このすば」が面白い

「このすば」が面白い。
アニメ1期が話題になってた頃は、見てなかった僕。
2期放送開始の際に、話題になってたから見てみたのですが乗れず。
去年dアニメストアで1期1話から改めて見始めて嵌りました。
そんでここ数か月で原作本編既刊を全巻読破しました。

物語が急速にクライマックスに突入してしまって寂しいたらありません。
もっと読んでいたいのですが、なんとかなりませんかね。

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©暁なつめ/三嶋くろね
さてさて、そんな訳で、「このすば」の記事。
この面白さの要因は色々とあると思うのですが、やはりキャラが抜群に秀でてると考えます。
1人1人のキャラが際立ちすぎてるんですよね。
セリフににじみ出てしまうほどに。

言い回しでキャラ付け

言い回しでキャラ付けをする手法はメジャーです。
漫画では「ONE PIECE」なんかが代表例でしょうか。
一人称、笑い方、語尾や口癖。
「ワンピ」ほど徹底している作品も珍しいかと思います。

この手法ですが、漫画よりも小説の方が効果が大きいですよね。
漫画は絵がある分、誰のセリフなのかが一目で判別できることが多いですけれど、小説ではそうじゃありませんから。
セリフにキャラの独自性がにじみ出てれば、それだけで判別が容易になる為、やはり小説の方が効果が大きいと考えます。

ただ過剰にすると、どうしてもセリフ回しが不自然になります。
そんな笑い方する人間いねぇよみたいな。
「ワンピ」はそれを踏まえて、わざとそうしている節がありますが、それを避ける作品もあります。
このあたりの匙加減は、作品ごとによるので、何が正しいとか間違っているでは語れないところ。

「このすば」では、どちらかといえば自然なセリフ回しを心がけているように思えます。
一人称などで特徴を出さずに、性格を反映させて誰のセリフなのか一目瞭然にしようとされているんじゃないかなと。

という訳で、「このすば」。
メインヒロイン3人を例にとってみます。

先ずはアクア。
彼女は女神という出自に強い自尊心を持っており、自信過剰気味な言動が多く見受けられます。
けれどポンコツなので、ぞんざいに扱われることが多く、その度に「私は女神なのに」という感じで喚いています。
また、その自信過剰故にひとたび窮地に陥ると簡単に助けを乞う自称女神。
一番子供みたいな性格をしています。

続いてめぐみん。
勝ち気で血の気の多いロリっ娘。
爆裂魔法という異常な火力を誇る魔法を寵愛し、爆裂魔法が関わるとトラブルメーカーになる厄介なロリ。
それ以外では意外とまともで、頭も良いため、丁寧語で思慮深い言動を取るれるロリ。

最後にダクネス。
ドMの変態。痛めつけられることに快楽を見出して、それ故にモンスターからの攻撃から仲間を守ることを生業とするクルセイダーになった変態。
言葉責めも大好物で、妄想癖もあり、マゾなことに対して隙が無い。
本名で呼ばれたりすると本気で恥ずかしがったりするなど、常人と羞恥心の場所が違いすぎる変態。

以上を踏まえ、主人公カズマを踏まえた会話を本編から抜粋してみます。
尚、字の文は敢えて省略します。

「と、いう訳でお前も何か考えろ!何か、手軽にできて儲かる商売でも考えろ!あと、お前の最後の取り柄の回復魔法をとっとと俺に教えろよ!スキルポイント貯まったら、俺も回復魔法の一つぐらい覚えたいんだよ!」
「嫌ーっ!回復魔法だけは嫌!嫌よおっ!私の存在意義を奪わないでよ!私がいるんだから別に覚えなくてもいいじゃない!嫌!嫌よおおおっ!」
「……何をやっているんですか?……カズマは結構えげつない口撃力がありますから、遠慮なく本音をぶちまけていると大概の女性は泣きますよ?」
「うむ。ストレス溜まっているのなら……。アクアの代わりに私を口汚く罵ってくれても構わないぞ。……クルセイダーたるもの、誰かの身代わりになるのは本望だ」
「こいつの事は気にしなくていい。しかし………… ダクネスさん、着瘦せするタイプなんですね……」
「…… む、今、私の事を『エロい身体しやがってこのメス豚が!』と言ったか?」
「言ってねえ」
「おい、今私をチラ見した意味を聞こうじゃないか」
「意味は無いさ。ただ、俺にロリコン属性が無くて良かったと思っただけだ」
「紅魔族は売られた喧嘩は買う種族です。よろしい、表に出ようじゃないですか」
「話を戻すがクエストを受けるなら、アクアのレベル上げができるものにしないか?」
「どういう事だ?そんな都合のいいクエストなんてあるのか?」
「プリーストは一般的にレベル上げが難しい。なにせプリーストには攻撃魔法なんてものが無いからな。戦士のように前に出て敵を倒すわけでもなく、魔法使いのように強力な魔法で殲滅するわけでもない。そこで、プリースト達が好んで 狩るのがアンデッド族だ。アンデッドは不死という神の理に反したモンスター。彼らには、神の力が全て逆に働く。回復魔法を受けると身体が崩れるのだ」
「うん、悪くないな。問題はダクネスの鎧がまだ戻ってきてないことなんだが……」
「うむ、私なら問題ない。伊達に防御スキルに特化している訳ではない。鎧無しでもアダマンマイマイより硬い自信がある。それに、殴られた時、鎧無しの方が気持ち良いしな」
「……お前今殴られると気持ちいいって言ったか」
「……言ってない」
「言ったろ」
「言ってない。……後は、アクアにその気があるかだが………」
「おい、いつまでもめそめそしてないで会話に参加しろよ、今、お前のレベルの事……」
「……すかー…………」
アクアは泣き疲れて眠っていた。

第1巻「あぁ、駄女神さま」より

ダクネスの変態っぷりばかりが目立ってる気がしないでもないですが、本編で4人が会話してるシーンってなかなかに無くて。
2人ないしは3人ということはあるのですけれど、全員ともなると探すのも一苦労。
取り敢えず1巻から抜粋しましたが、アクアが殆ど目立ってませんね…。

とはいえ、アクアの子供っぽさとか女神(回復魔法が得意)であることにプライドを持ってるところとかはしっかりと出てると思います。

めぐみんもカズマの目線が自分の身体にいってることを察知して、急に切れてます。
短気な部分がよく出てますよね。

うん。
字の文によくある「このセリフは、○○です」という読者への説明を消してみても、どれが誰のセリフなのか分かるようになってます。
なってると言ったら、なってるんですよ。
決して僕が作品のファンで、全巻既読だからというだけじゃないはず。
キャラの簡単なプロフィールを知っただけでも、誰のセリフか容易に判別できるんじゃないでしょうか。


兎も角、セリフでキャラを表現することに長けている本作。
セリフ回し1つで、キャラの差別化が出来ているまでになっていて、だからこそキャラが異常に立っていると感じるのかなと。
面白さの所以はこういうところにもあると思いました。

終わりに

程度の差こそあれ、どの作品でも取り入れていることであり、殊更取り上げることではないのかもしれません。
でも、自然な会話を心がけつつも、徹底してセリフでキャラを表現してる部分に、僕は大きな魅力を感じたのです。
基本的なことなのかもですけれど、基本を疎かにせずに、それどころか1つの技術と呼びたいほどに高められた点は、とっても素晴らしいと思いました。