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「ゲーマーズ! DLC」2巻感想 負けてない負けヒロインの物語

この記事は

「ゲーマーズ! DLC」2巻の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

本編も残り1冊となっている「ゲーマーズ!」ですが、その外伝たる「DLC」の第2巻が発売されました。
「霧夜歩編」の後編が収録された2巻の感想です。

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©葵せきな/仙人掌

負けヒロインの物語

恋愛やラブコメは多くの場合、複数のヒロイン・ヒーローが登場し、誰が主人公と付き合うのかということに焦点が当たって、物語が進行する構成を取っています。
今作も例に漏れず、メインヒロインの天道花憐の他、多くのヒロインが登場してきました。
千秋、亜玖璃、心春と何れも魅力的で、正直誰が景太と結ばれてもおかしくなかったし、誰と結ばれても楽しく読めていたはずという自信があります。
メインヒロインを食っちゃうレベルの可愛さを三者三様で発揮しておりました。

けれど、悲しいかな。
心春が言う様に景太はエロゲ主人公じゃありません。
ハーレムエンドを望むような少年では無くて、どこまでも真摯で心優しい実直な性格をしています。
だからこそ皆景太に惚れているんですが、だからこそ彼は1人しか選ばないんですよね。

そうやって本編11巻で彼は「1人」を決めて、他のヒロインは涙を飲んだわけです。

結ばれなかったヒロインを好きな読者にとっては、仕方ないとしても、頭で理解はしていても、心で納得できない部分がどうしたってありますよね。
そのヒロイン視点では、どう取り繕ったところでバッドエンドにしか見えないからです。
失恋は新しい恋の始まり…なんて誰しもが前向きに捉えられる訳じゃありません。

そんな負けヒロインのゴールに一石を投じる意味が、この「霧夜歩編」にあった気がしました。


歩にとってあまりにも楽しかった景太との日々。
それは「同様に楽しかった筈」の千秋や亜玖璃とのゲーム実況とは異なるレベルの楽しさを伴った日々だったのでしょう。
景太とゲームを出来ないという現実は、それ程までのショックを歩に残していたように描かれていました。

ほんのちょっと的なニュアンスでしたが、もうずっぽりと恋に落ちていたんですよ。
他のヒロインズに負けない恋心を景太に抱いていただろうことは容易に想像がつきます。

そんな歩は、景太との恋人関係よりも景太とゲームをする関係を選びました。
景太との恋人関係だって有り得たのに…です。

歩自身そこまでの「勝算」を持っていた訳ではありませんが、少なくとも碧や亜玖璃はそう考えていましたよね。
特に亜玖璃の見解は分かり易かったです。
歩を「天道さんみたいに高潔で、ほしのんみたいに優しくて、祐みたいに笑い、亜玖璃みたいにもったいないことしちゃう人で、あまのっちよりゲーム馬鹿」と評したのだから。

花憐も千秋も祐も亜玖璃も、皆景太が敬愛する人物です。
その上でゲームに対して、景太と同じ、かつ、景太よりも強いスタンスを持っている。
彼が惚れるには十二分な要素を持った女性なんですよね。

この辺の事情こそ分かりようも無いけれど、それでもどちらかと言えば勘の鋭い歩も、相応の「手応え」は持っていたんじゃなかろうか。
ならばこそ、恋愛に走る道だって取り得たのに、それをしなかった。
恋愛を選択しなかった理由は、本書に書かれていた通りとして、僕が注目したいのはその後の歩の感情ですね。


後悔とかはたっぷりとしてますが、悲愴感はこれっぽっちも無かった。
景太との間にしこりとか気まずさとかも残さずに晴れ晴れとして笑い合っている姿で締め括られている。

恋愛面に於いて、振った訳でも振られた訳でも無いですが、歩は立派な負けヒロインと言って良いと思います。
亜玖璃に一番近い立ち位置であって、「独り」という意味では、千秋や心春に近いとも言える。
他の負けヒロインズの心情をも投影できる絶妙な位置に居て、そんな彼女は、負けて尚、嬉しそうに景太と談笑している。
ゲームを話題に花を咲かせ、良好な関係を築けて終わった。


歩を通して、千秋たちも決してバッドエンドじゃないんだということが言いたかったんじゃないかな。
実際、「最終巻の後の時系列」としても有り得るエピローグでの景太とヒロインズの様子は、実に微笑ましいものでしたから。
振った振られたがあったとは思えない程の関係性を保てていて、ここからもバッドエンド感は感じられませんでした。


雑誌連載を纏めたものではありますが、この「DLC」が本編最終巻前に発売された意義もあった気がします。
悲劇性とか感じる事無く、笑って楽しいだけの気分で読めそうだからです。
歩も碧も良いキャラしてて、非常に楽しい外伝でした。

終わりに

今回もなかなかに笑わせて頂きました。
シリーズもあと1冊を残すのみですが、あとがきにあるように「DLC」3巻が実現してくれたら嬉しいな。