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「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」 第14巻 ネタバレ感想

この記事は

「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」14巻感想です。
ネタバレあります。

14巻読んだ

kindleが神だった。(正確には、GA編集部が神なんですが)
紙版発売前日までkindle版の予約ページすら無くて、もやもやしたのですが、発売日0時過ぎに見に行ったら、「即ダウンロード可能」となってて。
まさかの紙版と同時配信はメッチャ嬉しかったです。
お陰で、この週末たっぷりと堪能する事が出来ました。

ネタバレありで感想を書きます。

超濃厚

お腹いっぱいの巻でした。
シリーズ最高のページ数ですからね。
発売前に600ページ越えという情報は入手してましたけれど、実際本屋さんで目の当たりにすると変な笑いが出るもんですね。
「ブ厚w」ってなりました。
どこのホライゾンかなとw

ページ数がこれだけあるんだからという訳でもなく、中身もメッチャ濃かった。
山場が何度あったことか。
取り敢えず、前半と後半で大きく趣が異なる描かれ方でしたので、感想でも前後半分けて書きます。

ヴェルフの魔剣に唸った

アンフィス・バエナ。
ファミリアの首領であり、筆頭であるベルを欠いた中、初めてファミリアが臨んだ冒険。
その相手にしては、あまりにも強大な敵でしたね。

いくらアイシャが一時的に加わっていたとはいえ、彼我の戦力差も、彼らの状態も、そして、エンカウントした場所も圧倒的に不利だった。
絶望を演出するのに長けているこのシリーズに於いても、トップ5に余裕で食い込めるくらいには絶望的なシチュエーション。

これまでであれば、いや、王道の物語であれば、必ずや絶命の危機に颯爽と英雄が現れていたはずなんですよ。
強化モス・ヒュージを倒すべく仲間の危機に現れた我らがベル君のように。
その役割を今回は椿達が担うものだと思っていました。

いつ現れるんだろうと心待ちに読み進めていたものの、いっこうに現れない。
その間もどんどん追い込まれていく派閥連盟。
リリの作戦を起点とした攻勢で、一点大逆転かとなったものの、場所を利用された奥の手によって、遂には命が脱落。
悲しむ間もなく、リリ達を救う形で春姫まで業火の中に消え、うわ~~っとなりましたよ。
死んでても可笑しくない描写、寧ろ、これで生きてましたって有り得るんだろうかという有様になっても、現れない椿達。
どうなるんだと思ってたら、ファミリアの底力でやっつけましたね。

成果だけに目を向けると、ちょっと焦点を間違えてしまう気がするのですが、この戦いで殊勲を上げたのは、あくまでもヘスティア・ファミリアの団員。
リリが、命が、春姫が。
女性3人が最大の功労者です。

先ずはリリ。
レベル1の非戦闘員だし、指揮を取り始めたのも、この下層に来てから。
実力も経験値も誰よりも劣っていたと思う。それこそ春姫よりも。
それでもダフネの叱咤から瞬時に能力・状況を分析して効果的な作戦を捻りだし、的確な指示を出せた。
アンフィス・バエナの力を確実に削ぐことに貢献したのですから、偉業を達成したと見るに異論はありません。

春姫は、アイシャが最大級の賛辞を贈るほどに大きく大きく成長を示しました。
籠の中のお姫様では無くて、生粋の冒険者になった瞬間ですよね。
仲間を庇い、必殺の業火に身を投げた判断は、間違いなく冒険と呼べます。
その中でも生き残れるという勝算はあっても、中々実行に移せるものでは無いですよね。
一歩間違えば死んじゃいますもの。
また、自分の価値観を正当に評価して、経験を糧にマインドを振り絞って、歌を紡ぎ続けた。
その速度の熟達度含め、大きな成長であるし、やはり階層主撃破に多大な貢献をした。
偉業を成し得たことは間違いありません。

首級というならば、文字通りの意味で桜花とアイシャになります。
けれど、彼・彼女が階層主の首を討ち取れたのも春姫の魔法があり、そして、命の魔法があったから。
特にダメージを負っていたとはいえ、五体満足なアンフィス・バエナを捕縛した命の功績は非常に大きかったと思います。
自らの死を厭わずに、階層主をその場に縫い付けた。
スキルによる貢献もさることながら、最後の最後の活躍は、ある意味最も大きかったんじゃないかな。

誰1人欠けても討ち果たせなかったことなのでしょうけれど、特に3人の貢献はランクアップに相当する物だったんじゃないかな。
助っ人が入っていたら、彼女らの貢献度もまた低くなっていたのでしょうから、派閥連盟だけで冒険する事は必定だったのかもです。
この戦いは、前半のクライマックスの1つでしたね。


前半もう1つクライマックスがありました。
表紙で一番目立つ位置にヴェルフが描かれていて、最初はおや?と首を傾げましたが、成程ですね。
ヴェルフの成長はデカいわ。

壊れない魔剣という発想は正直僕には無かったです。
散々壊れるのが当たり前という常識を刷りこまれていましたので。
こういった成長の方法は見当すらしてませんでした。

だからこそ驚きましたし、なにより、超納得でした。
まさか神様のナイフが伏線になっていようとは。

持ち主のマインドを吸って力に変え、吸う量が多ければ多い程威力が跳ね上がる。
持ち主を「動力」にしてるから壊れないし、持ち主の成長と共に成長する。

分かりやすいし、単純にワクワクする設定。
まだまだ始まりの一本目という位置づけなのも興味深いです。
ここまで方針を提示されても尚、僕は未だに「この先」が見えてません。
この剣を上回る魔剣ってどんなのがあるんだろう。
充分「最強」と呼べるんじゃないかなと思っちゃってるんですが、更に上の魔剣が出て来る事が示唆されていて、どういう剣になるんだろうかとワクワクなのです。
本来の能力では扱いきれない材料を錬成出来たことで、鍛冶師としての成長がしっかりと描かれており、彼もまた偉業を成したエピソードになりました。

課題であった(勝手に課題と思っている)ファミリア全体のレベルアップをこの上なく納得感いっぱいに描かれていたので、もうここだけで満足出来ちゃいました。

リューが仲間になるまでの条件を整理

僕はこれまでの感想で、リューが仲間に加わると書いてきました。
この考えは今でも変わっていないのですが、ここで改めて彼女が仲間になるまでの条件を纏めておきます。
以下13巻感想からの抜粋。

リューがコンバージョンするには、2つの障壁があります。
1つは、過去の清算ですね。
仲間を殺された復讐という昏い炎。
未だリューの心を蝕む傷を癒す事。
これが障壁の1つです。


新しく仲間を得るにしても、過去を乗り越えない限りは、本当の意味での仲間にはなり得ませんからね。
そのためには、やらなければいけないことがあります。
「自分が仲間を殺した」という誤った認識を正さないといけません。
仲間を死に追いやった直接の原因との再戦。
ジャガーノート登場は、それだけに意味がありますね。


2つ目の障壁は、リューに懸けられた懸賞金を無くすことですね。
これがある限り、彼女は表舞台に立てません。
彼女の汚名をそそぐには、生き証人が必要になります。
ボールスです。
ボールスは必ずリューの評判を回復させてくれる。
そう確信しています。

2点挙げてみましたが、もう1つあったんですね。
それは後で書くこととして、後半の感想に移ります。

窮地の乗り越え方がスバラ

前半が大昔かのような錯覚を覚えるほど、後半だけでも濃密な展開の連続でした。
厳密には、濃密な危機の連続。
本当に、良くもまぁ、こんだけ圧倒的な絶望を描けるものだと感心します。

前半の「あ、これ詰んだ」感も相当でしたが、後半は何回「オワタ」となったか。
物語に於いて、キャラクターの危機は乗り越え方とセットなんですよね。
勿論それが全てでは無いですし、乗り越えられず死んでしまうエンドもあるんですが、今作は基本的には乗り越えてくる。
危機の乗り越え方がしっかりとしてないと、連動する危機も薄っぺらくなります。

今作の面白さって、この乗り越え方がしっかりしてるからというのもあります。
今回一番凄かったのは闘技場の死闘。

数の暴力。
これは本当に何度も何度も描かれてきたシチュエーション。
冒険者のスキルがモンスターを圧倒していても、相手が群を成したらあっさりと優劣がひっくり返ってしまう。
まさに前半の籠城戦がそうでしたよね。

ルームに押し寄せられたら、簡単に軍門に下るしかなくなるというのは、ここでこってりと描かれてました。
もしヴェルフの鍛冶が少しでも遅れてたら、全滅してたんでしょうね、間違いなく。
この辺結構シビアな設定してますよね。
ヒーロー物だと、雑魚にやられるのなんて序盤くらいじゃないですか。
強くなれば、以降は一切寄せ付けなくて、群れてこようと難なく蹴散らしちゃうところがあります。
でも、この作品は違うんですよね。
どんなに強くなっても、数で来られると敵わなくなっちゃう。
(流石に上層のモンスターがいくら群れて来ても、第二級以上なら蹴散らせるんでしょうけれど)

そんな中で、元々強いモンスターが群れてきたら。
それどころか、倒しても斃しても無限に湧いてきたら。
考えるまでもなく…な状況をあっさりと提示するのだから怖い。

深層とはいえ、その入り口みたいな階層です。
まだまだ奥が深いダンジョンで、今後そこに挑むであろうことが予想されるのに、ここでそんな最終ギミックみたいな脅威を出してくるなんて。
闘技場の設定は、本当にえげつないもので、どうするんかなと。

素通りに近い乗り越え方もアリかなと思ったものですが、ガッツリと罠に嵌っちゃいましたね。
英雄ベルによるリューの救いという圧倒的なドラマをこのタイミングで絡ませつつ、乗り越え方があまりにも規格外。
これ、本編には記述がありませんでしたが、「闘技場がモンスターを埋めない程破壊すれば良い」ってことだったのでしょう。

こう書くと簡単な事みたいに映るから不思議ですね。
そんな簡単じゃないよって前提で書かれてたので、全く考え付かなかったんですが。

実際にモンスターを生み出している闘技場そのものの大きさは不明ですが、中心に聳える柱の直径はバベルに近しいという記述がありました。
オラリオの象徴たるバベルと同じくらいの太さの場所から無限にモンスターが生まれてくる。
極太の柱を完膚なきまでに破壊しないといけない。
1人の冒険者の火力では無理という想像が容易く出来ます。

そうやって、思考の檻みたいなのを作られたからこそ、それを超える方法に驚けるんですよね。
あのゴライアスを、あのモス・ヒュージを。
歴戦の化物を屠ってきたチャージの圧倒的な威力。
物に付加する事を知恵としてきたベルだからこその乗り越え方。
彼のスキルがあったからこそのまさかの手法。

ただでさえ高威力の火炎石にフルチャージして、「普通は壊せない」程の建造物を「尋常じゃない」威力でぶっ壊す。

幾度となくベルの危機を救ってきた必殺を応用したあまりにもダイナミックな乗り越え方。
「これしか無いな」と言える方法と可能と思える納得感。

"まさに"な乗り越え方は本当に圧巻でした。

今回ベルの最大の偉業は多分これなんでしょうね。
ジャガーノートと互角に渡り合ったこと。
深層から生還したこと。
最低2つはランクアップするだろうなと自信を持って言えることを成し遂げてましたが、その中でも闘技場の攻略は最たるものかな。
第一級冒険者でも近づきすらしない場所をとんでもない方法で(ソロでは、ベルくらいしか出来ないんじゃないかという方法)クリアしたのですから。

リューが救われた!!

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©大森藤ノ/ヤスダスズヒト
この口絵、好き。

リューの過去は辛かったなぁ。
分散して書かれていた分、ずっしりと来ることは無かったですけれど、それでも重かった。
彼女が慕う団長達のキャラが立てば立つほどその最後が辛くなる。

殺され方も悲惨そのものでしたからね。
年頃の女の子が生きたまま咀嚼されたり、四肢を寸断されたり。
惨すぎるでしょ。

トラウマになるのも分かるし、復讐に生きるのも仕方ないなと同情できます。
でも、だからこそ、半端な同情や慰めなんて何の意味もないどころか、逆撫でしかないなと感じたのです。
諭す方向で救おうとしたら、絶対失敗するパターンだった気がします。

故に、ベルの救い方は凄く良かった。
彼らしいし、リューが救われるのも分かるし、なにより惚れるのは仕方ないよと思えます。
完全に陥落されたじゃないですか。
全てのヒロインを超えるほど堕ちたんじゃないかな。

なんだろう。
ギャップ萌えが凄い。
歴戦の戦士から恋する女の子に変身した過程がとっても分かることもあって、余計に可愛く見える。
リューエンドはアリだなぁ。


さてさて、後回しにしていた、彼女がコンバージョンするまでの条件。
1つ、ジャガーノートを斃して、敵を討つ。
これまたこれ以上無い演出。
ジャガーノートを知り尽くしたからこそのアイディアとなんとしてでも斃すんだという信念と覚悟が溢れた決戦でした。
カタルシスの塊でしたね。
(変な表現ですけれど、凄かったというのが言いたいのです)

2つ、懸賞金を無くす。
流石ボールス、期待に応えてくれる単純な男だぜ!!
予想が当たったからという訳じゃないですけれど、納得感いっぱいの展開でした。

心も罪も、過去の清算が済みました。
さぁ、これでヘスティア・ファミリアに!!
行かないみたいですね…。

そっか。
忘れてました。
アストレア様まだ地上に生きてるんですよね。
女神に改めて話をつけないと、全てをゼロには出来ないですね。
かつてヴェルフ達がウォーゲームの時にベルの元へ駆けつけたように、今度はリューが一大事に駆けつける事態になって…。
全く同じような展開にはならないでしょうけれど、アストレアと再会するエピソードと絡めて、その時に彼女は正式に仲間になるんじゃないかなと予想。

というか、早く仲間に加わって欲しい。

ファミリアのレベルアップ。

今回の件で、全員レベルが上がると思います。
それは、リューも同じで、アストレア登場と同時に上がるのかなと。
レベル5以上になって、リューは合流しそうです。

ただ、以前も書きましたが、まだまだ足りません。
先ずもって人数が圧倒的に足らない。

恐らくタケミカヅチのところから、桜花と千草が合流する事になる気がします。
これを機に命も「仮」から「正規」になるんじゃないかなと。

あとは、回復薬が致命的にいないことも今回痛切した感じです。
ミアハからカサンドラが正式に参加。
彼女が慕うダフネも半ば強制的にヘスティアの下に来るのかなと。
2人は元々一度はヘスティア・ファミリアに加入しようとした位ですから、抵抗感は無いでしょうし。

リュー含めて、今後彼女達が同時に加入する大きなエピソードがある!!
と良いな(笑

終わりに

ところで、シルは何故酒場から走り出てったのでしょうか。
ここが明かされなかったですね。
絶対に何かしらの伏線になってると思うのですが。

闘技場の謎も何となく気にかかります。
何故こんな施設がダンジョンにできたのか。
意味が無いとは思えなくて。
30年前というのがキーワードになるのかな?

なんとなく蠱毒を思わせる施設だったので、強化種をシステム的に生み出す為とか?
実際強化種いたって書かれてますし。

壮大なエピソードがしっかりと完結した一方、小さな謎が残って、そこが気になりました。