Mangaism

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クローズド・サークルものとして読み解く「ソードアート・オンライン」

この記事は

「ソードアート・オンライン」の考察記事です。
大層なタイトルですが、うっすい内容です。

はじめに

昔「.hack」のテレビシリーズを見て居た為、この手の設定には慣れていた事もあり、すんなりと作品に入れたのは大きかったですね。
ファンタジー作品を楽しめるかどうかは、設定を理解出来るかに掛かっていると個人期には思ってます。
まぁ、設定が分からなくてもなぁなぁで楽しめる事もあるっちゃありますが、やはり「理解しているかどうか」は大きいので。
理解していた方が絶対楽しい。…と思います。

で、1話を見て、設定をある程度呑み込めて。
すると、この作品がミステリのように思えて来て。
今回は「ソードアート・オンライン」のお話。僕は原作未読です。

クローズド・サークル

先ずタイトルにも書きました「クローズド・サークル」に関して簡単に書いてみます。
と言っても僕はそんなに詳しい訳では無いのですが。

元々はミステリから出た言葉であって、「容疑者を限定する為」に考え出された舞台設定だと思います。
嵐の孤島とか吹雪の山荘とか某S〇S団団長さんが小躍りして歓喜する状況などがこれにあたりますが。
共通しているのは、事件の関係者が外に出ることが出来ないという事ですね。

ある一定の空間に閉じ込められた容疑者達の周りで次々と事件が起きて…。
読者からすると描かれている登場人物以外を疑う必要が無くなるという、その為の設定ですね。

また、物語がクローズド・サークル内だけを描けばいい訳なので、非常に分かりやすい筋立てとなる。
これも利点と言えるのかもです。

ゲーム世界を舞台にした作品にとって最大の障壁

さてさて。
(オンライン)ゲーム中の事を中心に描いた作品に於いて、一番の障壁はプレイヤーをログアウトや一時的中断を
させないようにする事。
この一点に尽きると考えます。

プレイヤーがログアウトすると、そこで話の流れが止まっちゃうんですよね。
例えば。
主人公がボス戦を前に、「母ちゃんから飯に呼ばれたから落ちるわ」と言いつつ、ゲームから一時的にドロップアウトしてしまった場合。
主人公抜きでボス戦に臨むという展開になってしまいますw
そういう展開もアリっちゃアリですが、作品としては締まらないですよね。

「人間がゲームをしている」という状況は絶対な訳ですから、そのプレイヤー自身の生活臭というのは描かないと不自然となる。
どんなゲーム廃人さんでも、トイレに立つこともあれば、食事だってする。
食事しつつゲームは出来ますけれどね。
ただ、それを用意するという行為が発生する。
(他者に用意してもらうケースは除くw)

やはりゲームを一時的に中断したり、ログアウトする行為は「人間がプレイしている」以上絶対であり、ゲーム世界を中心に描く作品の性質上でこれは無視できない事であると思うのです。
勿論絶対では無いので、こういうのを無視する事も可能ですけれど、そうすると作品の舞台設定を「ゲーム世界」とした必然性が薄まってしまう。
異世界ファンタジーものにしたって良い訳ですから。

「リアルな人間がゲーム世界に閉じ込められた」という設定にしたのには、こういう設定の作品でしか描けないテーマがあるからなんじゃないでしょうか。
だから、設定上想定し得る事態(上記のプレイヤーの生理現象などによるゲーム中断という弊害)を無視する事は出来ないし、クリアすべき課題であると考えます。

「ソードアート・オンライン」では

これを早々にクリアしたのが、この作品であると考えます。
第1話。ログアウトできないという事実に突き当たったプレイヤーたち。
そうこうしていると突然チュートリアルが始まり、これはバグでは無く仕様であると告げられる。

更に、ナーブギア(音だけで判断して書いている為、間違っているかもです)を停止・解除すると、プレイヤー自身の脳を破壊し、死に至らしめるという。
また、ゲーム世界で「死ぬ(ゲームオーバーする)」と現実世界の肉体も死んでしまうという設定。

これによってプレイヤーの肉体は、ゲームクリアするか死ぬまで永遠にプレイを継続し続けるという状況になった訳ですね。
中断する事が許されない…というか中断が許されなくなった。

ナーブギアの仕組みとかそういう部分は、正直どうでも良かったりしますw
勿論現実の理論等々に則していればいる程、現実味も増して説得力が出るのですが、元来存在しない秘密道具ですからねw
そこが多少破綻していたとしても問題無い。
そういう理論部分は一先ず横に置いて、プレイヤーがゲーム世界に閉じ込められる理屈がしっかりしていれば良い。

その点非常に分かりやすく、しっかりしていたから、この作品は面白い。
余談ですが、最初にも触れた「.hack」(のどのアニメだかは忘れましたが)でも、似たような設定でこの問題をクリアしていました。

で。
これが「クローズド・サークル」的な手法だなと感じたのです。
嵐が来て、船が出せなくなった。
吹雪で山荘に閉じ込められた。
唯一の連絡手段である吊り橋が落とされた。
ミステリではよくある状況設定ですけれど、非常に似ている。

ゲーム世界と言う「事件現場」にプレイヤー=容疑者達を閉じ込めて、外部からの接触を絶って物語を進める。
勿論そうする必然性があっての事なので、「ミステリ的手法」を用いている訳では無いですが。

まとめ

それにしても上手いんですよね。
アバターが現実世界のプレイヤーそのままの姿になった所とか恐怖を覚えましたよ。
プレイヤーとアバターがより同一化し、よりゲームでの死が現実の死だという現実感が増したというか。

さらに、ゲーム世界に閉じ込められた理由についても開発者が何故こんな残酷な事をしたのかと言う疑問を残して、ストーリーの引きに使っている。
本当にただ観察する為だけなのか?
裏に何かあるのか?

物語を気持ちよく淀みなく進めるための設定として使いつつ、物語全体の謎に繋がる可能性すら残している。
分かりやすくて、説得力があって、更には物語の引きにもなっている。
また、「クローズド・サークルもの」として見ると、ミステリも真っ青の非常に緊張感のある命の駆け引きが展開されていて、ハラハラドキドキできる。

う〜〜ん。凄い作品ですね。