アニメな日々、漫画な月日

アニメ、漫画の感想・考察

「僕のヒーローアカデミア」は見た目に頼らない格好良さという「ONE PIECE」に通じる魅力を持つから熱いんだ

この記事は

「僕のヒーローアカデミア」を称賛したいだけの記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

格好良さとは何なのか

バトル系少年漫画は、やっぱりキャラが熱いとそれだけで面白いというのは言い過ぎでしょうか。
特に主人公ですよ。
共感できて、格好良くて、応援したくなる。
そういうキャラクターが描けたら、作品自体成功したと言っても良いんじゃないかな。
商業連載はそんな単純な話ではないですから、「成功」とは言っても長期連載を勝ち取れるという訳では無いんですけれどね。

さてさて、主人公の魅力の1つである「格好良さ」に焦点を当ててみます。
人はどんな人物にこの要素を感じるのでしょうか。

一番分かり易いのは見た目ですよね。
バトル系少年漫画のヒーロー達は、分かり易い程格好良い容姿をしてることが多い。

多くに見られる特徴は、髪型でしょうか。
悪く言えばボサボサの。よく言えば特徴的でワイルドな。
逆立ったツンツン頭が多い気がします。

これは見た目で派手さを演出しています。
どのキャラよりも目立たせたい主人公という立ち位置を明確にするために、派手で奇抜とも言える髪型を考えて自然とああなるのかなと。
どのキャラも単純にボサボサさせる訳では無く、格好良く見えるようなボサボサ加減になってますね。

怒った顔はキリリとして、特徴的な髪型をしている。
ジャニーズのような見た目イケメン顔の格好良さであったり、ワイルド系の格好良さであったり。
格好良さのベクトルは作品によってまちまちですが、多くの人が格好良いと思える容姿になってる事が一般的です。

だけれど、この見た目の格好良さというのは、やはり上っ面だけなんですよね。
物凄く好みの外見であっても、行動や台詞が伴ってなければ魅力は薄い。
格好良いも可愛いも人間慣れちゃうものですから、時と共にどんどんそのキャラクターへの関心は薄くなっていってしまうんです。

だから何よりも中身が大事。
そのキャラクターの持つ内面的な魅力に格好良さを見出せれば、見た目なんてカバー出来ちゃうんです。
「ONE PIECE」は僕にとってはそういう漫画の代表例だったりします。

「ONE PIECE」

僕は最初ルフィって格好悪いキャラという認識でいました。
当時の価値観で言えば、見た目も能力も「バトル系少年漫画主人公」の系譜からは逸れていたからです。

見た目に関しては、目の描き方。
多くが黒目がちで、きりっとした印象を持たせる目となっています。
現実でも「大きくて黒目がちな目」を良いとしてる事からも、漫画内に於いてもそのようなキャラが格好良い、または、可愛いに通じるという事が窺えます。
昔から少女漫画のヒロインは皆大きな目に、大きな瞳でしたからね。
それが可愛いとされ、今日の萌え絵に繋がっている。
少年漫画のヒーローもまた、同様に大きな瞳にすることで、格好良い見た目を形作っています。

そんな中、ルフィの黒目って「点」です。
一般的ではないから格好悪いという考えも安直ですが、第一印象は決して良くありませんでした。

少々話は逸れますが、この目の描き方に、尾田先生の拘りがあり、また、「SLAM DUNK」の井上雄彦先生は作品の成功の秘訣を見出されたという逸話があります。

尾田先生はルフィの目について、研究を重ねて意図的に「人の描いてない絵を描こうとして」作り込んだものであると発言されています。
詳しくは、「情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明」さんの下記エントリーを参照下さい。
参照:22:50 - 情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明

また、井上先生曰く

「井上雄彦ぴあ」より
「ONE PIECE」の凄い所はルフィの目が点なところ。
"面白いものはあれこれ足さなくても面白い"という意志表現の象徴

とのこと。
プロの目線はどこか違いますね。
僕なんかには到底達しえない領域です。

とまあ、「誰も描いてない目」は、瞬時に格好良いと思えるものではありませんでしたし、何より尾田先生自身が「分かり易い見た目の格好良さ」に囚われていないという証左にもなっているんじゃないでしょうか。
ルフィ以外のキャラもそうなんですよね。

麦わら一味の男衆を見渡してみても、ゾロの腹巻、ウソップの長っ鼻、サンジのぐるぐる眉毛と、どこかしら「ん?」と小首を傾げそうなパーツを持っている。
チョッパーは見た目は格好良いというより可愛さに振っているっぽいので除外するにしても、フランキーとブルックはもう見た目だけでは格好良いとは縁遠い容姿です。

格好良いの基準なんて人それぞれですので、ここで挙げた点も人によっては格好良く見えている筈です。
「こいつ何言ってんだ、ふざけんな」と思われてるかもしれません。
ただ、「少年漫画のキャラクターとしての格好良さ」とは一線を画しているのは事実と言い切りたいんです。
誰しもが格好良いと感じる外見を意図的に避けてデザインされているキャラクターが多い気がします。

続いて能力。
申し訳ないのですが、本音を言えば「ゴムゴムの実」は心底ダサいと思っておりました。
手足が伸び縮みする様に、一ミリも格好良さを見出せなかったんです。
今でこそ慣れて来たし、技によっては単純に格好良いものも出て来たので180度意見は変わっていますが、連載開始時は「なんて格好悪い能力なんだ」と零していましたね。

見た目からも能力からも格好良さを狙っていない。
それが僕の「ONE PIECE」に対する最初のイメージであり、だからこそ余計にキャラの内面に心揺さぶられたのかもしれません。

ルフィって、スゲエ格好良いんですよね。
行動が台詞が、本当に格好良い。
自分の夢に向かって全力で突き進み、信念を決して曲げない。
言動が見事に一致していて、ブレが無い生き様。
そこに惚れるんです。

特にルフィの仲間想いの点が素晴らしい。
挙げればキリが無いですが、「アーロン編」でのナミに対しての行動がやっぱり良かった。

女好きのサンジ以外仲間の誰もが「裏切り者」として認識し、ナミは切り捨てて次へと考えていた中、ルフィだけは違ってました。
ナミの過去や現状を認識する事を意識的に避けていた。
話を聞こうともせずにいたのは、ルフィの中でのナミの印象は、何を聞いても揺るがない・変えないという頑固なまでの信頼だった気がします。
「アーロン編」の前で既にルフィにとってナミは掛け替えのない仲間であり、全ての事情なんか知った事では無いという感じでしょうか。

ここで少しでもルフィがナミを疑う様な仕草を見せちゃダメなんですよ。
「裏切り者だったのか」なんてルフィに思わせてしまうと、読者もルフィの「仲間を想う気持ち」を疑ってしまう。
そういう懐疑的な面を一切見せなかったからこそ、ナミのSOSに対する「当たり前だ!!!!!」にも、アーロンを討った直後の「(ナミ)お前はおれの仲間だ!!!!」にも感動できる。
「ルフィは本当に仲間を信じてるんだな、格好良すぎるわ」となる。

内面の格好良さが見た目を十二分にカバーして、見た目も格好良く思えてくる好例なんです。

僕にとっては「僕のヒーローアカデミア」も同じなんです。
「ONE PIECE」のこの点を継承してるかなと。

「僕のヒーローアカデミア」

第1話からその良さが如何なく出ていました。
主人公・緑谷出久は個性を持たない珍しい少年。
出久と同世代の子供達は、その殆どが何らかしらの個性を身に付けている中、彼は何も持っていないという設定。
加えて体格が良い訳でも無く、ヒーローとしての素養は贔屓目に見ても持ち合わせていない感じです。

外見に目を転じれば、およそバトル系少年漫画の主人公らしからぬもの。
一言で言えば地味な少年。
ボサボサ頭はしつつも、普通の体型に普通の顔立ち。
少年漫画の主人公にはあまり見かけないそばかすまであって、少年漫画の主人公キャラとしては地味さを際立たせている。

然しこの外見はわざとなのでしょうね。
外見が見るからに強そうな・格好良さ気なものであると、この作品のやりたい事が薄れてしまいますから。
あくまでも、「力にも個性にも恵まれない少年が、ヒーローになりたいという気持ちとヒーローとして相応しい行動力を以て、最高のヒーローになるまでの物語」なのです。

主人公がどこにでもいそうな平凡な…悪く言えばモブキャラ・脇役のようなデザインだからこそ、映える物語。

振り返ってみれば堀越先生の描いてきた漫画のキャラクターは軒並み「分かり易い格好良さ」をしたデザインでは無かったなと。
「僕のヒーローアカデミア」にしても、格好良い外見してるのって、強いて挙げれば爆豪くらいかな。
次点で轟。
あとは、非常に個性的な外見をしている。

オールマイトにしても外見は1人画風が違い過ぎて、格好良いというよりも「濃い」とか「アメコミか」とツッコみたくなる感じ。
通常時は、それこそ格好良いとはかけ離れてしまっていますしね。
主人公の周囲のメイン所を見渡してみてもキャラのデザインは、比較的皆一般的な格好良い系とは一線を画しています。
ここら辺も「ONE PIECE」に似ている。

物語性を際立たせる為に、敢えて出久は格好良い面を持たない意匠になってるのでしょうね。
さて、第1話の物語を子細に見てみます。

箇条書きでまとめます。

  1. 出久は無個性だけど、オールマイトのようなヒーローに憧れている
  2. オールマイトはナンバー1ヒーロー
  3. 出久はオールマイトから「個性が無いとヒーローは務まらない」と諭される
  4. 爆豪は出久を「デク(木偶)」とバカにし、幼少時から出久をいじめる嫌な奴

この4点で、3人の関係性を描いています。

出久は常に笑顔で人々を助ける格好良いヒーロー・オールマイトに小さな時から強い憧れを持っていて、しかし、個性を発現できない珍しい体質だと知らされてしまう。
中三になった出久は、けれどもヒーローになる事を諦めずにいて、日夜ヒーローの研究を欠かさない。
そんな折、オールマイトと出会った出久は、憧れのヒーローに「自分でもヒーローになれるか」を聞くも、無理だと断言されてしまうと。
ナンバー1のオールマイトだからこその説得力。
実際に実力がぶっちぎっていても、敵(ヴィラン)との戦いで命を落としかけたことも描かれていて、「無個性では務まらない」という言葉に実感が伴っていました。
医者に「個性は無い」と言われた時以上の絶望感がこの時の出久にはあったんじゃないかな。

で、爆豪少年ですね。
1話では、本当に悪い子という印象しか持ちえない様になっていました。
なんか言ってる事は小さいし、正義の為にヒーローを目指しているようにも全く見えないし。
出久をそれこそ幼いころから苛めている様子も描かれていて、「助けたい」と思える要素が皆無。
出久自身も爆豪に対して決して良い感情は持ってなかった筈です。

そんな最中、爆豪がヴィランに乗っ取られちゃう事件が発生。
この事件で重要なのは、名だたるヒーローの誰もが「相性が悪い」だの理由を付けては、爆豪を助けようと動かなかった点。
かくいうオールマイトでさえ、活動限界が近いという理由で観客に徹するかのような姿勢を見せていた。

嫌味な奴が人質に取られ、個性を持っているプロのヒーロー達でさえ手をこまねいている状況。

この状況で、ヒーローになれないという現実を突き付けられた直後の出久が、ただ1人、助けようと走ってしまう。
何故助けようと動いたのか本人にすら判然としない。
ただ、爆豪が助けを求める顔をしてたからという理由だけで動いていた。

死ぬかもしれない。
いや、確実に死んでしまう状況なのに、助けに入った。
自分を苛める只管嫌な奴を助ける為に。

根っからのヒーロー気質ですよ。

出久って読者が憧れを抱くようなタイプの主人公ではありません。
そういう物語では無いから。
どちらかと言えば共感を覚え、応援したくなるタイプの主人公です。

ヒーローに憧れ、しかし、苛烈な現実を突き付けられ、挫けてもおかしくない状況なのに。
嫌な奴が人質に取られているのに。
それでも助けに走ってしまう。

「TIGER & BUNNY」の虎徹と一緒なんですよね。
彼はNEXT能力を失いかけ、力の無い時でも正義の為に敵わないと知りながらも犯罪者に立ち向かっていた。
人々を守りたいという気持ちだけで、ボロボロになりながらも立ち向かう彼に、僕はヒーローとしての格好良さを見ました。

出久もおんなじ。
力が無いからと何もしなかったり、力があっても人の為に動こうとしなかったり。
まして、力が無い事を盾にして「無謀だから」と何もしない自分を正当化しちゃう人間より、よっぽど出久の方が格好良い。

格好良くて、直向きな姿に共感できて、応援してしまう。
読んでいて、ついつい熱っぽくなってしまう。

内面の格好良さから、見た目も格好良く見えてくる。
外面に頼らない作品の良さが滲み出ているから、僕はこの漫画を面白いと絶賛してるんです。

終わりに

毎回のように熱いシーンを挟んできて、ノリにノッてる「僕のヒーローアカデミア」。
面白さの秘訣はキャラにあるのかなと。

見た目に惑わされない格好良さを放つ出久少年の魅力がとても大きいですね。

僕のヒーローアカデミア 1 (ジャンプコミックス)

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