Mangaism

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「おお振り」、「ジャイキリ」、「グラゼニ」 スポーツ漫画の新機軸は青年誌故に成功した

この記事は

「おお振り」、「ジャイキリ」、「グラゼニ」の記事です。
少年誌ではこうはいかない。

青年誌の特徴をフル活用

青年誌と少年誌に掲載されている漫画の違いって何処か。
1つはバイオレンス描写・性描写の差ですね。
少年誌では抑え気味な描写でも、青年誌ではより過激に描写できます。
これは大きな違いと言えるでしょう。

もう1つは、チャレンジ精神でしょうか。
青年誌の方が新たなチャレンジを積極的に出来るんじゃないかと見ています。
件のスポーツ漫画を例えとして出してみます。

例えば、バスケットマンガ。
90年代当時はバスケットマンガは当たりが無いジャンルとしてタブー視されていたそうですが、「ジャンプ」で「SLAM DUNK」が大ヒット。
以降少年誌で多数バスケットマンガが始まりました。
これは少年誌の功績ですね。

しかし、少年誌で「リアル」は連載できないと思うのです。
主人公が障害を持った車いすバスケットの世界感は少年誌では間違いなくウケないでしょう。


王道のマンガならば少年誌でも挑戦が出来るんです。
主人公が健全な肉体を持つ学生(場合によってはプロでも有り)であって、主人公として目立てるポジションにいるのならば。
野球で言えば、ピッチャーや4番打者。(そういう意味で「ドカベン」は珍しいパターンと言えるかもしれません)
サッカーで言えばフォワード。
知名度の無いスポーツマンがであっても「少年誌の枠組み」さえ守っていれば挑戦できる。

しかし、その枠からはみ出してしまうと途端に難しくなる。
そういうのは青年誌の領分です。

代表作として「おおきく振りかぶって」、「GIANT KILLING」、「グラゼニ」を1つ1つ見ていきます。

「おおきく振りかぶって」

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主人公の廉はピッチャーなので、ポジションだけで言えば少年誌の主人公としてもやっていける。
しかし、このマンガの凄さは、「地に足を付けた高校野球を見せる」ことです。

練習の描写からして少年誌のマンガとは一線を画します。
とにかく繊細で細かいんです。
高校生男子の筋肉の付け方を科学的なアプローチで以て最善の方法で取り組むとか。

試合になると本領を発揮します。
相手打者1人1人との対決を心理的駆け引きを中心に丹念に描いている。

2巻、三星学園との練習試合。
相手4番・織田の3打席目。
キャッチャーの阿部は、これまでの織田への配球を全て頭に入れているコマがあります。
それをもって、織田の得手不得手を念頭に置きつつ、廉をリードします。

試合相手が強くなるにつけ、こういった駆け引きの描写が増えていくんですよね。
従来の野球漫画にはない丹念な心理描写は、このマンガが興した革命です。


これは少年誌では出来なかったはずです。
絶対にウケないって分かりますもの。

分かり易さを求める少年誌では、豪速球を投げる主人公が相手打者を力でねじ伏せるマンガが求められるんです。

「GIANT KILLING」

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元プロの青年監督・達海が主人公という時点でやはり異例でした。
監督視点で、プロサッカー界を描いている。

試合になると、当然選手が主役になるので、「選手側の主役」ともいうべき椿が「主人公格」として描かれる点は、少年漫画然としているのですが、あくまでも達海が主人公。
戦術から試合の駆け引きなどは達海がコントロールしていきます。


少年誌だったら、椿が主人公になるんでしょうね。
達海はメインキャラの1人に「降格」して。
若しくは、ダブル主人公制を取るか。

監督目線のサッカー漫画というのは本当に新鮮で、非常に面白く、またスピーディーに試合が進むので読んでいて面白かった印象しかありません。


クラブ運営を運営人視点で描くというのも異例かな。
ただ単に試合を熟すだけではなく、サポーターとの確執、選手との契約など裏側の描写が多いのも特徴の1つ。

やはり少年マンガでは削られてしまう要素を丹念に描けるのは、青年誌故の強みだと感じます。

「グラゼニ」

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少年誌では絶対に連載できないという意味では、この作品がダントツで一番でしょう。
主人公はピッチャーはピッチャーでも、エースでも無ければ先発ですら無い中継ぎ要員。

実際のプロ野球でも、中継ぎピッチャーで有名になるのは本当に大変。
やはり投手ならば先発。つぎにクローザ―やセットアッパーでしょう。
中継ぎ投手がヒーローインタビューのお立ち台に呼ばれる機会は年間を通じても数試合あるかどうか。
それ程スポットライトが当たりにくい役職なんです。

そんな中継ぎピッチャーを主人公に変え、しかも題材はお金。
1人打ち取ったら、いくらになるとかマウンドで考えながら投げている。


プロ野球というと、一部の選手が何億モノ年俸を貰っているので華々しいイメージを持っているかもしれません。
けれど、それは一握りの選手。
一般的な会社員の年収と大して変わらない選手はゴロゴロいるのが現実です。

そういう現実に目を背けずに地に足を付けて描いている。
格差社会の下の方に居る中継ぎピッチャーの現実をシビアに描いているのが特徴です。


これはもう企画段階から少年誌では無理でしょう。
子供が興味持たないでしょうから。

まとめ

現代でこそ、大人も少年誌を読むのが一般的になってますが、それでも主要な読者層は変わらず子供。
子供が楽しめて、夢見れる作品で無いと通用しません。
そういう意味では、ここで挙げたような新機軸とも言える目新しいチャレンジ精神溢れるマンガは、なかなか難しいのかもしれません。

そこいくと大人が読者層である青年誌は、強い。
躊躇なく実験的なマンガを投入できるのでしょう。

青年誌だからこそ連載出来、そして、受け入れられた。
こういうのもまた、少年マンガにはない青年誌マンガ特有の面白さなんだと思います。