「Re:ゼロから始める異世界生活」 第18巻 感想
この記事は
「Re:ゼロから始める異世界生活」第18巻の感想記事です。
ネタバレあります。
はじめに
土曜日に所用で横浜に行きました。
いつものようにメロンブックス、ゲーマーズ、とらのあなを巡ってたら、とら以外で「リゼロ」18巻が出てるじゃないですか。
25日が公式発売日ですが、ラノベなので公式発売日待たずに店頭に並んだのかもですね。
心の中で万歳三唱しつつ、ポイントカードを持ってるメロンブックスで購入。
特典はなんと書き下ろし小説です。
しかも主役はペトラ。
やっほーいと喜びページを捲ったら…。
続き物なんかい!!
16巻、17巻とメロンブックスで購入してないとダメなパターンなのね。
全然別の店で買ってたよ~。
まさかこういった店舗別特典で続き物に巡り合うとは…。
(ゲマズもオットーを主人公にした3部作の3話だったっぽいw)
同じ店で買い続けましょうと言う教訓かな。反撃開始の第18巻、感想です。
スバルのスピーチに泣かされた
進展の少なさで言えば、今までで一番だったと断言できます。
正直1ミリも前に進んでおらず、停滞の巻でした。
しかしながら、ここにたっぷりとページを使った事で、より強いカタルシスを感じる事が出来ました。
状況は未だ最悪です。
寧ろ悪化してしまいました。
必勝の態勢で臨んだ戦いに敗れ、エミリアが拉致され、ベアトリスを差し出す事を強要された。
4人の大罪司教に要所を握られ、街全体が人質に取られたために各個撃破は不可能。
全戦力を傾注して、それでもようやく勝てるかどうかという大罪司教を相手にするのに、戦力を4つに分散させなければならない。
まさしく八方ふさがり、絶望的な状況。
市井の人々は、勿論こんなことになってるなど知る由も無いけれど、魔女教に制圧されているというだけで十分な脅威ですよね。
水門を握られて、いつ水底に沈められるともしれない中、地下の薄暗い密室に軟禁されている。
ただでさえ精神は摩耗し、体力を奪われる状態で、悪辣なる権能によって負の感情を肥大化させられる。
僕自身経験が無いので、説得力に欠けますけれど、現実でも似たような環境に置かれる可能性はゼロでは無いですよね。
今年も、列島が様々な自然の脅威にさらされ、多くの方が避難所に待機する事になりました。
限りあるスペースの中、見知らぬ人たちと一緒にぎゅうぎゅう詰め生活を余儀なくされる。
プライベートはおろか、最低限の生活もままならない時間。
終わりが見えていれば、まだ耐えられるでしょうけれど、例えば大地震で家が壊滅してしまったならば、いつまでこの状況が続くのだろうと不安が募り、ストレスが溜まっていく一方。
僕だったら耐えられないですね。
考えるだに辛すぎる。
プリステラの人々は、その上で負の感情を増長させられて、かつ、死の淵に立たされている。
最後の一線を超えずに堪えてることだけで凄いと言わざるを得ません。
強いなと素直に感心します。
いっそ死んでしまいたいと思っても責められない中で、響く頼りない少年の声。
言葉は弱弱しく、気持ちを理解し、寄り添ってくれることが逆に辛い。
今欲しいのは、そういった共感じゃないですからね。
「他の人も同じなんだ」という理解が、より絶望感を上げる気がしますね。
「誰か、なんとかして」という微かな希望をも踏みつぶされるでしょうから。
しかし、「自分達と同じ弱い人間」だからこそ、「前を向いて立ち上がる」という言葉が響くのかなと。
説教でも強要でも無く、お願い。
君たちと同じ弱い人間だけれど、僕は悔しいから立ち上がる。だから、どうか一緒に前を向いて欲しい。
前を向くだけで良い。
それだけで、とても強いことだからと言ってくれる。
悪に負けず、生きて欲しいという懇願。
自分と同じ心境・立場の少年が言うのならと顔を上げたところで、それでも、不安は消えないですよね。
人によっては、そんなことしてなんになるんだという怒りも湧くかもです。
不安をかき消すには、まさに絶妙のタイミングだと思う。
大罪司教の1人を倒したという確かな実績を挙げ、全て任せて欲しい、必ず助けるという宣言。
確かに力強い一般的な英雄像とはかけ離れた存在。
頼もしさで皆を引っ張るという超人では無いです。
どこまでも頼りなくて、寧ろ、自分らとなんら変わらない存在。
自分達と同じ絶望の中にいるのに、心は屈服する事無く、立ち上がって「助けてやる」とまで言っている。
スバルの事を強いなぁって思いません?
肉体的な強さでは無くて、精神的な強さを素直に覚えるんですよね。
「大罪司教を倒した」という言葉には、力が無いんですよ。実際。
人々にとって見たら、なんの裏付けも無いですから。
ここはあくまでも決定打にはなり難い部分。
人々の絶望を希望に塗り替えるには、材料として及ばない言葉。
だから、これを前面に出していたであろうアナスタシアの草案は、空回っていた気がします。
まぁ、巧妙に人心を掌握しつつの構成だったことは窺えますので、「それなりの」効果はあったでしょうけれど。
あくまでも「それなり」。
スバルのアドリブ演説程人心を昂ぶらせる事は出来なかったと思う。
正直ね、途中から僕自身「プリステラの住民」になっちゃってた。
幼い少女に"同化"してた。
スバルの言葉が熱を帯びる毎に、内側から込み上げてくるものがあって、名乗りの時点で涙腺が決壊しました。
熱いなぁ。
スバルらしい英雄像。
スピーチにカタルシスを感じたのは初めての経験かもしれません。
繰り返しますが、プリステラの人々の状況は、完全なる絵空事では無いんですよね。
自然災害の多い国に住んでる以上は、僕にだってあり得る状況。
勿論、ヘンテコな魔物が跋扈することも、超常的な力を有した魔人に命を握られることも無いですけれど。
彼らと全く同じストレス下に身を置くことは無いと言えますが、近い状況になることは可能性としてはあるし、想像も難くありません。
そんな中で力強く「なんかする」という希望が差せば、縋りますよね。
全力で応援しますよ。
小市民のスバルだからこそ、誰よりも上手く街の人々の心を掴んだのでしょうね。
始めはリリアナが最適、彼女しか居ないでしょうくらいに思ってました。
歌姫の歌で、ストレスを軽減させて、解決するのがベストなやり方でしょうと。
でも、こんな心揺さぶるスバルの言葉を聞いちゃうと、もうそんな考え霧散しちゃいますね。
彼が周りから信頼を寄せられる理由が、やっと分かった気がします。
洪水を起こしたのは誰なんだろう
スバルが指摘してましたけれど、確かにオカシイですね。
考えてみれば、最悪な状況って今じゃ無かったのかもなと。
「全員を救う」スバルにとって、最も悪い状況は、街中で暴動が勃発する事だったんじゃないかな。
人々が自分達の命惜しさに、血眼になって「魔女の遺骨」、「叡智の書」、「人工精霊」を探し始めたら…。
自分(や家族)が助かる為という大義名分を掲げた人々が、ライバルである人々を襲い始める。
至る所で、殴り合い、殺し合いが始まり、血で血を洗う争奪戦が起こってしまう。
もしもこんなことになったら、スバルたちの手が足らなくなります。
スピーチで抑えられたかどうか。
けど、こうはならなかったのは、洪水のお陰ですよね。
これによって人々は退避を余儀なくされ、スバルにとっての最悪は起こらなかった。
洪水を起こした真意が、スバルたちを助けることではなく、こちらにあった可能性もあるのかなと。
たまたまタイミング的にも状況的にも、スバルたちを助けることになっただけで。
こう考えると、スバルたちよりも街の人々の命を優先する人間。
それが魔女教に入り込んだネズミの正体なのかもなと。
最有力なのは行方不明のキリタカかな。
タイミング的にも、彼ならばバッチリ実行可能ですし。
他に候補者もいませんからね。
彼の私兵団の1人が魔女教内に潜伏していて、情報をキリタカに渡す。
先を読み、人々の暴動を危惧した彼が、その可能性を潰すべく予め避難を誘導した後で街に水を流し込んだ。
ん~~、どうなんだろ。
真相が気になりますね。
終わりに
短編集4巻が出るんですね。
ということは、3月までに短編集既刊を読み終えなければ…ですね。
買ってからもうじき1年。
未だに積みっ放しなので、どうにかしたい。
さてさて、動きが無かった分19巻は激動の予感。
激闘の予感。
5か所同時進行でのバトル編。
どこも見所がありますが、個人的には、オットーの局面が最も気になります。
彼がどうこの難局を切り抜けるのか。
一番弱いからこそ、最も応援したい。
彼の大活躍に期待ですね。
- 作者: 長月達平,大塚真一郎
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/12/25
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