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「百万畳ラビリンス」を読んだ。とんでもない傑作だった

この記事は

「百万畳ラビリンス」の感想記事です。
なるべくネタバレ無しで書きます。

はじめに

LINE漫画だったかな。
友人から面白いからと薦められて1話だけ読んだ漫画「百万畳ラビリンス」。
本日上下巻購入して早速読んだわけですが。

これは凄かった。
SFとミステリが高い次元で融合したまさに傑作。
全2巻という短さにとんでもなく壮大な冒険劇が詰まっておりました。
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まるで悪夢のような読後感

読んでいる間の感覚は、まさしく「悪夢」。
誰もが一度は夢で見たことがあるだろう「出口の無い迷宮」。

「不思議の国のアリス」のような世界感にも通じる怖さ。
意識が狂いそうになるほどの不安感。
そういう悪感情を煽るような世界に閉じ込められた2人のゲーム大好き女子大生。

どこまでも続く畳の間。
上も下も無く、無限に続く空間。

ここは何処なのか。
何故自分達は閉じ込められたのか。

「レベルE」の球児編を彷彿させるような…。
不可思議で怖くて、不安感を引き立てる世界を舞台に物語は進行します。

読んでいて、本当に不思議な気持ちになって、どんどんページを繰っていっちゃうんですよね。
あっという間に読んでしまったのですが、どうしてこうも面白かったのか。

2つの要素に分けて述べてみます。

ミステリな前半

悪夢の迷宮に迷い込んだ2人が、冒険を始めます。
とにかく主人公の礼香が思いついたらなんでも即実行しちゃう子。
一見無秩序に見える不思議空間のルールを見つけたり、バグのような抜け穴を発見したり。
上巻では「世界感」が提示されるのです。


以前別記事で、こんなことを書きました。

「ミステリを構成するにあたり、最も大事な要素は何か?」

人によって答えが代わる問い掛けかもしれません。
全ての人が納得出来る答えは無いかもしれない。
なので、敢えて「個人的には」という言葉を頭に付けさせて頂きますが、僕としては「世界観の提示」を挙げます。


例題を一つ出して、僕の考えの根拠を書かせてもらいます。


ある部屋で遺体が見つかった。
自殺、事故、殺人、全ての面から慎重に捜査が行われ、結果として自殺や事故、更にいえば病死の可能性は排除された。
およそ外部の介在が無ければあり合えない死に方をしていたからだ。
しかし、不思議な事に外と通じる全ての戸や窓には内側からしっかりと鍵が掛けられ、また、それらを外から施錠する術も痕跡も見られない。
壁や天井もしっかりとしており、抜け穴の類も発見されなかった。
完璧な密室。不可能犯罪。
殺人と断定される現場は、しかし、殺人とは考えられない状況に置かれていた。


稚拙な文章で、こんなミステリチックな状況説明を書いてみましたが、では、真相はどうなんでしょう?
単にこの文章だけを提示されれば、「何らかの人為的なトリックが使われたのではないか」と考えるでしょう。
現実的に可能と"思える"機械的、もしくは心理的なトリックを想像するのではないでしょうか。
ここにはそれを具体的に推理出来るだけの材料が提示されていない為、それ以上の考察は出来ませんけれど。


でも、でもですよ。
犯人がヤードラット星人だったならば話は別です。

瞬間移動など数々の超能力を使える彼らが犯人だったら、密室の説明は簡単についちゃいます。
もしも被害者がフリーザ様で、犯人が悟空だったら、やっぱり謎は謎で無くなっちゃうんですよ。


こういった類の「解決編」を何の説明も伏線も無しにやっちゃうと、それはもうミステリでは無くなります。
仮にミステリ小説として発表しようものなら、非難轟轟でしょう。
別の部分に面白味やミステリ的仕掛けが施されていようものなら、評価の対象に上ることもあるかもしれませんけれど、そうじゃなければ駄作。
「アンフェアである。」
ミステリ的に言えばこうでしょうか。
「推理する上で重要な条件が提示されていない」、「フェアでは無い」。
きっと、そういう評価しかされないでしょうね。


但し、こういう場合もミステリとして成立させちゃう術はあって、先にも書いたように「世界観の提示」の有無が左右してくるのかなと。
上の例で言えば、作品世界が「DRAGON BALL」と同じであり、その世界での密室殺人事件を扱っていると予め提示されていれば、何の問題も無かった訳です。

太文字部分だけ伝わればOKです。

先ずは世界観の提示が挙げられます。
といっても、ミステリなので、答えが提示されている訳では無く、そのヒントが提示されている訳です。
上巻にはそのヒントが至る所に仕掛けられています。

これらが下巻でいっきに収束する訳ですよ。

SFな後半

下巻のネタバレを少しだけ触れますと、不思議迷宮を抜けた先には、人間が住む世界が広がっていました。
しかし、そこは「僕達が住む世界」とは違う「世界」。
そこでは礼香達は認識されず、姿も視えず声も聞こえません。
果たして、その世界は何なのか。
迷宮空間との関係は?
謎があり、伏線があり、その上でSFとしての「説明編」が先ずあります。


僕が感嘆したのは、その後の「解決編」です。
作者が構築したSF設定がしっかりとしており、非常に分かり易く描かれています。
世界感の把握が容易なんですね。
だからこそ、礼香が実行した迷宮からの脱出計画があまりにも鮮やかに映って、思わず舌を巻きました。

なるほどねと。
その手があったかと。
上巻での伏線が綺麗に拾われて、非常に綺麗な解答を見せられるのです。


どこまでもフェアなんですよね。
作中に提示されたルールだけで、答えが構築されているから落とし所が綺麗です。

って、なんか抽象的な表現ばかりに終始していて、自分でも書いていてイマイチ感想になってないなと反省しつつ…。

まとめ

まとめとしては、面白いから読んでみて。
でしょうか。

全2巻。
内容的にも量的にも圧倒的にオススメしやすい漫画ですね。