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アニメ、漫画の感想・考察

作品のパワーインフレを抑えている王下七武海の存在感は偉大 「ONE PIECE」考察

この記事は

「ONE PIECE」の考察記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

パワーインフレに関しては幾度か記事にし、「ワンピ」についても触れたことがあります。
この作品はパワーインフレを巧く抑え込む事で、作品の長期化に成功している稀有な例であると思っております。

そのインフレを抑えている要因として様々な事があるのでしょうけれど、個人的に最近注目しているのが、王下七武海なのです。

バトル漫画に於ける敵キャラの扱い

では。一般的なというとやや語弊がありますけれど、多くのバトル漫画に共通する「敵キャラの扱い」に関して書いてみます。

一例として「DRAGON BALL」を引っ張り出してみます。

先ず、悟空の前に悟空よりも遥かに強い敵キャラが現れます。
ここでは、フリーザが現れたとします。

"通常状態"の悟空では、底を見せないフリーザに一歩敵わず苦戦。
仲間達の力を借りた元気玉でも屠るには至らず、怒りによって目覚めた超サイヤ人という"ドーピング"を持って、ようやく制しました。

時は流れ、地球に復讐に来たフリーザ。
傍らには彼よりも強いコルド大王を伴っていました。
終わりを覚悟するベジータ達ですが、突然現れたトランクスが一蹴。
遅れて地球に戻ってきた悟空も、既にフリーザらは敵では無いかのような振る舞い。

早くもこの時点で、嘗ての強敵が雑魚へとランクダウンした訳です。

その後、セルが出現し、さしもの悟空もこのセルにはとうとう敵いませんでした。
ここから原作を離れ、アニメ版に目を転じますと、悟飯に敗れ地獄に落ちたセルがフリーザらを従えて地獄で大暴れします。
これをアニメオリジナルキャラのパイクーハン(西の銀河最強の戦士)がいともたやすく成敗。
あっという間にセルまで雑魚キャラにされたわけです。

より強い敵が現れる事の多いバトル漫画に於いて、敵キャラは主人公勢に敗れた時点で「ライバル」という名の味方側になるか、「過去の敵」として弱体化して描かれるか。
このどちらかになります。

この論法で言うと、七武海は、とっくの昔に「過去の敵」なんですよね。

VS七武海を振り返る

最初にルフィらの前に立ち塞がったのは、ジュラキュール・ミホーク。
海上レストラン・バラティエを襲撃してきた首領・クリーク海賊団を追っての登場でした。

ただこの時はミホークが王下七武海という事は分かってませんでした。
初めて「王下七武海」という設定が披露されたのは、このもう少し先。
69話で、ヨサクが初めて口にしています。
ここでミホークもまた七武海の一人であると説明が入ったのですよね。

まあ、それでも初めての遭遇には変わりなく。
七武海がどれ程強いかは、このミホークが「最初の基準」となりました。

この時点で数々の海賊を倒してきたゾロを圧倒。
一撃すら浴びる事無く、三刀流を薙ぎ払ってしまいました。
この強さの海賊が他に6人もいる。
ルフィですら目を剥いて驚いていました。

この後、ルフィらはヨサク曰く「七武海のジンベエに匹敵する」アーロンを打破。
偉大なる航路(グランドライン)へと航路を進めると、遂に七武海とぶつかることになりました。
サー・クロコダイル。
王下七武海という表の顔の裏では、犯罪組織「バロックワークス」ボスMr.0として暗躍。
彼が表からも裏からも牛耳っていたアラバスタ王国の王女ビビに肩入れしたルフィらと激突したのです。

確かに、この時は「王下七武海」は「強さ」の象徴的な肩書でありました。
最初に見たミホークの強さの印象そのままに、同じ七武海のクロコダイルにルフィが二度も敗北したのですから。
特に緒戦は完敗。手も足も出ず・描写も無く敗れてしまいましたので、あの回のインパクトは殊更大きかったです。

しかし、「スナスナの実」の弱点を突いたルフィは、3度目の戦いにて辛勝。
王下七武海の一角を倒したわけです。

通常ならばこれで「七武海もルフィらの敵じゃ無くなった」となる筈で。
というか、僕自身ずっとこの気持ちでいたんです。
例えば、モリアが出て来た時も、「今更また七武海?」って感じで読んでいました。
一度ルフィらが倒した事で、七武海全体を格下扱いしてしまっていたのは事実です。
「四皇」という七武海の上位互換とも思える海賊が次第に描かれ出したというのも大きかったかな。

勿論七武海と一括りにしてるとはいえ、メンバー個々の実力には大きな開きがある事は確かなのでしょう。
試しに彼らの懸賞金を調べてみました。

七武海のメンバーに懸けられていた懸賞金

この世界で言う懸賞金は単純な強さの数値化では無く、世間への影響度等総合的な見地によって弾きだされている事は作中で説明されており、また、政府公認の七武海には懸賞金は懸けられていません。
判明している懸賞金額は、七武海に入る前の物であり、余計に強さの尺度には使えないのですが…。
まあ、無いよりマシなので。
あくまで参考程度にはなりそうという事で。

メンバー 懸賞金額(単位:ベリー) 現役有無
トラファルガー・ロー 4億4000万
ドンキホーテ・ドフラミンゴ 3億4000万
ゲッコー・モリア 3億2000万  
バーソロミュー・くま 2億9600万
ジンベエ 2億5000万  
サー・クロコダイル 8100万  
ボア・ハンコック 8000万
マーシャル・D・ティーチ 0  
ジュラキュール・ミホーク 不明

※ジンベエは、七武海加入前の懸賞金。現在は4億以上

こうして並べてみると、モリアは懸賞金の割には大した事なかった印象が強い。
オーズの方が強かったという印象が根強く、登場当時から「強い敵」とは思えませんでした。

逆に、懸賞金0だったティーチの強かさと実力は、「彼がラスボスなのでは?」と思える程。
ルフィとの因縁という意味でも、この漫画のラストを飾るに相応しい敵になりそうだし、強さ的にも十分かと思えるのです。

何にせよ、メンバーによって実際の強さも、我々が持っているであろう強さへのイメージも全然違う事は確か。
確かなのですが、それでも一括りにして「格下」と思っていた。

けれど、そうでは無いよという事が描かれてきているのが最近の「ワンピ」だったり。

謎深まるドフラミンゴの恐怖

七武海は雑魚では無い。
そう思わせている最大の要因は、やはりドフラミンゴなのかなと。

目的こそ海賊王だという事が描かれた物の、彼が何を思い、何をしているのかは未だ全容が掴めていません。
初登場時から印象深く、謎めいた発言を繰り返しているドフラミンゴが、いよいよ本格的に牙を剥いてきそうになりました。

ドフラミンゴの"強大さ"は、彼に対する呼称からも見て取れます。
先ずは「ジョーカー」という呼び名。
裏社会のブローカーとして、人造悪魔の実を作り出すSADを開発させ、広くこれを売り払おうと計画。
自分が海賊王になる道のりの障害となりそうな事を何故わざわざしているのか?
その理由が見えてこない事をやっていたり。

そして「若様」という呼称も。
彼のバックに強大な財力なり権力なりを有した存在が居るんだという事を臭わすには十分な呼び名で、実際それっぽい老婆もチラッと出てきました。

そもそもヒューマンショップを展開したり、政府の上層部と繋がりを持っていたり、多くの海賊団を束ねていたりと、彼のやっている事・持っている人脈や組織力は、相当大きいと推測できます。

底知れぬドフラミンゴの力と野望。
彼一人の存在が、七武海そのものを未だに脅威たらしめている。

通常ルフィに敗れた時点で雑魚化するところ、踏みとどまるどころか、未だに脅威の対象として読者に印象付ける事に成功しているんじゃないかなと。

パワーインフレというモノは、次々に強い敵を出す事で成り立っていて。
"過去の敵"が敗れても尚、"強く居続けている"事で、このインフレを抑え込んでいる。
七武海は、パワーインフレを抑える役割を十二分にしているんじゃないでしょうか。

くまから推測する七武海の作品上に於ける重要性

作品を読み解く上で、七武海って実際僕なんかが考えるよりずっと重要な位置にいるんじゃないかなと。
というのも、くまが加入しているからですね。

世界政府転覆を直接目論む革命軍。この軍のリーダーがルフィの父親でもあるモンキー・D・ドラゴン。
このドラゴンの部下であり、革命軍の幹部であるくまが、何故七武海に居るのかを考えると、自ずと七武海の重要性って見えてくると思うのです。

くまが、革命軍と袂を分かった訳では無い事は、ドラゴンの言葉からも推察出来ます。
恐らくドラゴンの勅命で、七武海に加盟したのでしょう。
しかして、革命軍のくまが政府公認であるところの七武海にすんなりと入れるはずも無く、素性を隠して実際に海賊行為をした後に、手を挙げるなどして七武海に加わったのでしょう。

わざわざ部下(くま)を海賊にしてまで、七武海に潜入させたのですから、絶対に大きな意味がある筈です。

それも、「敵を欺く為」とか「内部にスパイを潜り込ませる為」とかでは無いですね。
これらをするには、七武海は適さないから。
政府は七武海の事を、力は認めてはいても信用はしていない為、寝首をかかれるような場所にも置かないし、重要な情報も与えないでしょうから。
もし、そのような役割をさせたいのならば、海軍に入れた方が何倍も利口です。
まあ、実際そういう役目を担った革命軍の同士が海軍内部に居そうですが。

以前僕は、ベガパンクも革命軍のメンバーなのではという事を感想に書きました。
が、そうでは無かった場合。ベガパンクが純粋に政府側の人間だったら…。
例えば、ベガパンクの技術を盗む為という事も考えられそうです。
くまにベガパンクの改造素体に志願させ、自らの体を以て、ベガパンクの技術を"盗み出した"‥とか。

ドラゴンが、くまを七武海に潜り込ませた理由こそ不明ですが、「世界政府を倒すために七武海に仲間を潜り込ませておくことが必要だった」からそうしたのでしょう。

まとめ

グランドライン三大勢力。
海軍本部・四皇・王下七武海。

このうち、はっきりとルフィ達主人公チームに敗れたことが描かれたのは、七武海だけであって。
三大勢力と言いつつ、七武海は一番格下だな〜と思っていた嘗て。
でも、今はそんな事は無いんだという風に考えが変わってきました。
変わってきたというか、最近の展開によって変えさせられたという方が正確です。

この漫画、パワーインフレが抑えられているとは言っても、それでも初期に比べればインフレは起こっております。
ルフィらも分かりやすく強くなりました。
しかし、過度なインフレが起こらない様に配慮が行き届いているのですよね。
その配慮の一つが、七武海の描き方なのでしょうね。

バトル漫画の"常識"よろしく、一度倒しただけで雑魚化させずに、未だに"強大な敵"としての面子を保たせている。
その最大の貢献者がドフラミンゴであり、そして、"最初の指針"であるミホークもですね。
彼もまたどこか飄々としており、強さの底を見せない事も大きいかな。
「四皇」の一人であるシャンクスと互角に渡り合っているという事実もまた、彼の実力を高く推し量る材料となっていると思います。

嘗て「悪魔の実最強種」と作中で言われていたロギア。
固有の弱点を突かない限り、倒す事の出来なかった能力者たちも、覇気の登場で「最強」とは言えなくなり…。
その覇気も、まあ、何れ攻略されるんじゃないかなと思っています。

まるでジャンケンのように絶対的な強さを描かない作品のパワーバランスも絶妙ですが、この七武海の描き方もまた巧みであると思います。
ルフィが七武海の何人かを負かした時点で、格下扱いしてしまった僕。
それなのに、「欠員が出た七武海の後釜は誰か?」なんて考えさせられちゃうから凄いなぁと。
七武海に対して完全に興味が無くなってたら、誰が新メンバーになるのかなんてどうでも良くなっちゃうはずなのに、気にしてる時点で僕の負けかなってw