Mangaism

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「東京卍リベンジャーズ」 流行を取り入れてヤンキー漫画を復活させた鮮やかな手法

この記事は

「東京卍リベンジャーズ」の感想です。
ネタバレは特にしてないつもりです。

はじめに

昨年友人に薦められて「東京卍リベンジャーズ」を購入しました。
ヤンキー漫画でコミックスまで買ったのは初めての体験。
どうなんだろう、面白いと思えるんだろうかと不安だったものの、今も最新刊を買い続けるくらいにはお気に入りになりました。

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©和久井健
今回はこの作品を取り上げてみます。
構成が鮮やかだよね。

見かけなくなったヤンキー漫画

ヤンキー漫画が絶滅の危機に瀕しています。
というとやや大袈裟でしょうか。
ただ、少なくとも90年代に比べればグッと本数が減ってるのは事実。

少年誌でも必ず1本以上は有名な作品が載ってましたもの。
一例を挙げれば、「週刊少年ジャンプ」では「ろくでなしBLUES」や「HARELUYAⅡ BOY」。
もう少し年代を遡れば、「男一匹ガキ大将」、「魁!!男塾」などがありました。
最も対象年齢層の低いイメージの「週刊少年サンデー」ですら、昨年TVドラマ化で話題となった「今日から俺は!!」を連載していました。

それが今ではヤンキー漫画と言えば「週刊少年チャンピオン」の独壇場と言っても過言じゃないです。

どうしてこんなに下火になってしまったのかは不明です。
ただ、漫画も世相を映す鏡です。
「時代にそぐわない」等と言った理由で、取り上げられる機会が少なくなったのかもしれません。

そんな中、「チャンピオン」以外では久々のデカい当たりが出ました。
「週刊少年マガジン」連載の「東京卍リベンジャーズ」ですね。
「週マガ」でも久々のヤンキー漫画でのヒットだったと思うのです。
1990年の「カメレオン」、「湘南純愛組!」。
1991年の「疾風伝説 特攻の拓」。
この辺が「週マガ」のヤンキー漫画最盛期でしたね。
ヒット作としても、(ヒットの基準をどこに置くかにもよりますが)ここまで遡ります。
だから、本当に久々。

何故こんなにも受けたのか。
単純に面白いというのもあるんですが、近年流行のジャンルとミックスさせたことが成功を奏したのかなと。

掛け合せの妙

ゲームの「STEINS;GATE」の影響か。
はたまた全然別の作品なのか。
奔流を作った作品は分からないんですが、タイムリープものが増えてますよね。
(日本のタイムリープ物の原典という意味では「時をかける少女」?)

絶望的な現実や未来を過去に戻って改変する事で、主人公の望む世界を掴むというのが、多くの作品に共通するプロット。
今作でも中学時代の彼女の死を無かったことにする為に、過去と現在を行き来する主人公・花垣タケミチの奮戦が描かれています。

この「タイムリープ」という設定が、今や昔のヤンキー漫画を「現代的に」成り立たせているんですよね。
タケミチの現在は、バイトに明け暮れる極々一般的な青年。
それがかつての彼女の死を切欠に、中学時代に戻ってヤンキーとして成りあがっていくことになるのですが…。

「ヤンキー」が出てくるのが、作中でも過去だけなんですよ。
12年前の世界で幅を利かせているヤンキーという設定が「ああ、なるほどな~」ってなりました。

多分現代を舞台にしたヤンキー漫画だったら、今ほど売れて無かった気がします。
企画自体「週マガ」では通らなかった可能性もあるんじゃないかな?
それほど「チャンピオン」以外ではヤンキー漫画を見かけないので。
現代を舞台にしたら「時代にそぐわない」としても、まだまだジャンルとして活況だった頃を作中のメイン舞台に設定したから、アリとなった。
のかも。


個人的には、非常に巧い組み合わせだなと思ったのですよ。
100人を超えてるようなヤンキー(しかも中学生から高校生の若者)の集団を絵で見ても「イマドキ居るんだろうか?」と言う疑問の方が大きかったんですが、「昔だから」の一言だけで「有り得るかも」と納得出来ちゃうというか。
時代設定1つで妙な説得力があったんですよね。

終わりに

タイムリープ物ならではのサスペンス要素が「この先どうなるんだろう」という期待を煽って、先を読み進めたい衝動に駆られるというのもあるのですが、正統派のヤンキー漫画ならではの面白さも楽しめます。
意外な組み合わせが、相性の良さを発揮した素晴らしい発明。
ヤンキー漫画を復活させた手法が鮮やかだなと思ったのです。