Mangaism

アニメ、漫画の感想や考察を書いてます

「男でも読める少女漫画」とは具体的にはどういうことなのか? 「俺物語!!」に見た1つの持論

この記事は

「俺物語!!」を西尾維新先生の「物語」シリーズだと勘違いしていたリアル友人に捧げます。
(ブログ運営は秘密にしてるので、彼はこのブログの事知らないですがwww)

はじめに

時間が掛かってしまいましたが、ようやくアニメ「俺物語!!」を完走しました。
猛男の格好良さがヤバい。
これは惚れる(笑

そう。
この作品、男よりも異性であるヒロインの凛子に感情移入しまくりなんです。
何故猛男を好きになったのか。
その気持ちが分かりまくる。

こういうのを「男でも読める少女漫画」と言うんだろうな〜と。

「男でも読める少女漫画」ってどういう意味だろうか

「女でも読める少年漫画」ってフレーズは聞いたことがありません。
勿論ググれば出てきます。
出てくるんですけれど、検索結果を子細に見ていくと、きちんとこの話題に触れているページが然程多く無い事に気づきます。
個々人の好みこそありますが、女性が少年漫画を読む際のハードルというのは、男が少年漫画を読む事に比べればグッと低いのでしょう。

思えば僕が小学生時代。
「ジャンプ」等少年漫画を読んでいるクラスメートの女子は然程珍しくも無く話題に上らないのに対して、逆に少女漫画を読んでる男子というのはからかいの対象になっていたりもしました。
お母さんが漫画好き。
若しくは女性の兄妹がいる。
そういう環境で無い限り、小学生くらいの男子が少女漫画に積極的に手を出す事って稀なのかもしれません。

「女の読むものなんて恥ずかしくて読めない」
それ位の年ごろは特にこういう今思えば酷い差別的な考え方に過敏な時期ですしね。

女の子は、そういうこと気にする空気は無いのでしょう。
抵抗なく、周りの目を意識することなく、少年漫画だろうと読みたいと思えば抵抗なくスッと入っていけるのでしょうね。

さてさて、(比較的)漫画好きの母に育てられ、妹の居る僕は、割と小さい頃から少女漫画に触れていたりします。
「ちゃお」とか「りぼん」なんかをちらっとですが読んでました。
妹が買っていたので。

当時読んでいた漫画は、流石にほぼ忘れてしまったのですが、「魔法騎士レイアース」とか「美少女戦士セーラームーン」とか。
若しくは、ギャグ漫画かな。
「あさりちゃん」、「赤ずきんチャチャ」など。
覚えてる範囲では。

少年漫画のような漫画。
つまりは、バトル要素のある漫画。
あとは単純に笑える漫画を選んで読んでいましたね。

意図的に恋愛漫画は避けていたのです。
「あずきちゃん」とか読んでましたし、アニメでは「姫ちゃんのりぼん」とか見ていました。
恋愛が軸の作品に全く触れて来なかった訳では無いんですけれどね。
僕も十分クソガキでしたからねwww
周りと同様「女の読む者なんか」という矮小な考えを持ち、恥ずかしいという気持ちを持ちつつも、興味本位には勝てずに読んでいた。
でも、恋愛漫画はよく分からなかったので、分かり易い「少年漫画に近い」ジャンルの作品を選んでいた…と。
こうなるともう読む作品は限られてきます。

やはり恋愛漫画は少女漫画としては王道のジャンルですし、作品数も多い。
僕のような考え方だと、自然と読める作品は絞られてしまいます。

少々遠回りしましたが、小さい頃からのこのような男女間の考え方の差が、「女でも読める〜」というのが少ない理由なのかなと。
と、同時に「男でも読める少女漫画」というフレーズそのものをメジャーたらしめているのではないでしょうか。

猛男に惚れる

では、「男では読めない・読みにくい少女漫画」って何なんでしょう。
よく挙げられている作品の「逆」を探せば見つかるのかな。

あくまでも僕個人の考えですが、やはり恋愛漫画が挙げられることが多い気がしますね。
先述したように、恋愛漫画の数が単純に多いから当たり前なんでしょうけれど。
そういうのを抜きにしても、「少女漫画の恋愛漫画」は読みにくい部類に入ってしまうと思います。

理由は1つ。
主人公の感情の推移が理解しにくいからです。

少女漫画の良さってにべも無く、キャラクターの心情表現の丁寧さにあります。
心の機微をしっかりと掘り下げて、静かに読者に語りかける筆致。
メインである少女の心に訴えかけて、グッと作品世界に・キャラクターの心の内側に気持ちを引き込む力。
内面からキャラクターの魅力を作っていく作風は、少女漫画の基本と言っても言い過ぎではないんじゃないかな。

女性が読み易い少年漫画の条件には、「キャラクターの心情表現がしっかりと描かれていること」が挙げられているのも頷けますよね。
それが基本の漫画を読み続けてきたのですから、そこを同じくする漫画は読み易いのでしょう。
「るろうに剣心」が女性読者層にウケた理由がこれであったと記憶しております。

男にとって少女漫画のハードル上げになってるのが、この部分。
メイン読者層である少女諸氏にとっては安易に理解出来る感情推移も、男が理解するにはなかなかに難しいんです。
心情表現が大事な要素になっているからこそ、ここを理解出来難いと作品そのものを楽しみ難いという理屈。
単純に「友情・努力・勝利、考える前に動け、戦って勝て」という脳筋万歳なバトル漫画が多い少年漫画に男が慣れきってしまうからというのも大きそうですけれどもw

それはともかく。
ん、まあ、平たく言えば主人公の女の子がヒーローを何故好きになるのか。
どうしてそこで怒ったり、泣いたりするのか。
男…特に少年には分かり辛かったりするものなんです。

あああああああああ、長くなりました。
「俺物語!!」に戻ります。

凛子猛男に惚れるのは当然ですよ。
この作品、猛男の方が主人公なので、猛男の気持ちを理解出来る事が作品の面白さに直結する気もしますが、そこは少女漫画。
凛子目線で見るべきでしょうと。

そうなると、アニメラストエピソードですよ。
遂にというか、やっとと言いますか。
凛子を好きになる猛男のライバルが登場しました。
一之瀬光基。

イケメンパティシエ。
福山さんのナイスな演技もあって(個人的に声優としての福山さんが好きなので、補正掛かってしまってますが)、非常に濃ゆいキャラ。
男からしたらちょっとなと言う部分もありましたが、女性が惚れるには十分魅力的な男の登場です。

ライバルですよライバル。
この一之瀬が猛男の魅力をググッと引き出していて、「うわっ面白いな」と。

生まれて初めて彼女が出来ました。
初めて自分を好きだと言ってくれる子が現れました。
そんな彼女を愛おしく、誰にも渡したくありません。

そこへ、彼女を好きだ、お前から奪うという男が目の前に突然出てきました。

普通だったら喧嘩でしょう。
お前ふざけんなと。

でも、猛男は違いました。

好きだからこそ、相手の気持ちを第一に考えちゃう。
凛子が笑顔でいてくれるなら、傍にいるのが自分でなくても良いと。

とても優しい素晴らしい考え。
でも、待って。
素晴らしいけれど「君の気持ちはその程度なの?」ともガッカリする考えでもある。
ちょっとカッコワルイな。

しかし漢の中の漢である猛男はココで終わりません。
凛子は決して譲らないとしっかりと一之瀬に宣戦布告。

その上で自分の気持ちよりも凛子の笑顔を大事にするから、それ以上の事はしない。
見守る事だけに徹する。
というより、恋敵をサポートしちゃうからビックリ。
一之瀬の告白を邪魔するどころか手助けしちゃう。
彼が店に忘れた道具を全力で大会会場に届けちゃう。
そんで心から応援しちゃう。

凄いよね。
でっかいよ。

「お前のことはオレが守る」ってヒロインを抱きしめて誓っちゃうのが男らしいと言えるのかもしれません。
俺が幸せにするからどこにもいくなと。
でも、猛男の考え方の方が好きなんです。同じ男として凄いと思っちゃうんです。

「お前のことはオレが守る」という気持ちをしっかりと持ちつつも、ヒロインに「幸せになる選択肢」を与えてる。
一之瀬の事を「凛子を幸せに出来る男」と認めたからこその決断。
凛子がより幸せになってくれる方が一番だという思い遣り。
だけど、出来るならば自分を選んでほしいというエゴも持って、凛子への気持ちが誰よりも強いことを示してもいる。

自分の気持ちよりも好きな人の幸せを誰よりも尊ぶ優しさと、好きな人を守りたい・独占したいというエゴ。

1人の女性を巡る恋敵との「戦い」には、およそ共存出来そうもない相反する考えを持ちつも、その2つを巧い事消化する感情の処理能力の高さ。

一之瀬の気持ちに気づいてなかった凛子としては、猛男の葛藤なぞ知る由もなく、究極の漢らしい考えが見えてなかったのですけれど、その一部始終を魅せられた僕としては「猛男マジ惚れる」となる訳ですよ。

猛男を好きになる凛子の気持ちが分かると。

異性の気持ちに共感出来る。
ああ、この作品は間違いなく「男でも読める少女漫画」でありますね。

終わりに

とはいえ「俺物語!!」は少女漫画なんです。
主人公である猛男の感情の機微がしっかりと描かれている。
めちゃめちゃ丁寧に。

少女漫画の条件(というと語弊がありますが)をしっかりと備えている。

その上で、男でも感情の推移が読み易い。

こういうのを「面白い作品」と呼ばないで、何をそう呼ぶのか。
とても楽しい作品でありました。