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「それでも町は廻っている」 時系列シャッフルの利点を考察

この記事は

「それでも町は廻っている」の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

時系列シャッフルの利点

「それ町」11巻買いました。
今巻のテーマは「恐怖それ町」という事で、ホラーというよりミステリという感じのお話がいくつか収録されてましたね。
これは、この作品の"顔"の一つですよね。ミステリは。
という訳で、第83話「闇に棲む声」が一番好みでした。
静姉ちゃんの最後のヒントが大きかったものの、自力で解決見る前に気づけたから…というのもありますけれど、なんだか実に石黒先生らしいミステリで。
歩鳥が言うように確かに顔とあだ名が違い過ぎて、でも、そこがきちんとトリックとして機能していて。
子供のあだ名って体格とか見た目や名前から付く事が多くて、前者が多いという先入観で何かがオカシイと思いつつ、素直に読み進めていたのが…。
こういうの上手いなぁと思いつつ。

誰にも悪気とか無かったのが、実に微笑ましかったですしね。
オチの怖さ含めて、11巻個人的No,1でした。

さてさて。
あとがきで、石黒先生自ら「シャッフル」について語られていましたね。
ここで、最終巻にタイムテーブルを付けてくれるかもというサプライズが。
いや、これ何気に超気になりますよね。

僕も以前ブログの記事用に途中まで纏めていた事があります。
2巻で挫折したのですがwww
ま、挫折した理由としては、結構大変だったというのもありますが、ググったら同じ記事がいっぱいあったからですね。
ファンは皆気にしているという事なんでしょうね。

という事で、今回はこの時系列シャッフルの利点を考えてみました。

巻毎に特定のテーマに則ったお話を収録できる

時系列シャッフル。
思いついた一つ目の利点は、巻毎に特定のテーマに則ったお話を収録できるという事でしょうか。
例えば、11巻で言えば「恐怖それ町」でした。
怖くない話も含めて、怖い話を中心に集めたと折り返しのコメント欄で石黒先生が語られております。

こういう事が自然にできるのが、シャッフルの利点かなと。

何故か。
もし時系列順にお話が描かれていたら、少しだけ、ほんの少しだけ不自然な事になるんですよね。
この漫画は、歩鳥の高校3年間に於ける出来事を描いています。
時系列順でしたら、その3年間の一時期が取り上げられます。

という事は、この11巻収録の8話が、仮に時系列順に描かれていたとしたら、一つの短い時期にたて続けにホラーでミステリな出来事にあったという事になります。
いくらなんでも不自然です。
金田一君やコナン君じゃないんですから。そんなしょっちゅうホラー(ミステリアス)な日は来ないですよね。

時系列順ですと、やや不自然になりがちな事ですが、シャッフルしているという事実で自然に見えるようになります。

分かる範囲で11巻収録分だけ時系列順に並べてみます。

第83話(高校1年5月下旬頃)
第86話(高校1年8月頃)
第82話(高校1年冬?紺先輩とタケルが仲良くなる前)
第84話(高校2年7月?1年次かも…少なくとも真田のミシンそばの件から高校2年9月より前)
第85話(高校2年7月下旬)
第87話(高校2年秋)
第88話(高校2年冬辺り)

こんな感じかな。
3年次のお話は無いですが、まあ1年半の間に起こったお話と考えれば、もっと短い期間にたて続けに起こったと考えるよりかは自然に思えます。
テーマによりけりで、今回はたまたま「中々日常で起こらない事をテーマにしていた」からこういう事も言えると思うのですけれどね。
(連載順(雑誌掲載順)で収録されている訳では無いので、あまり納得出来かねる妄想ですけれどね。)


複数の最終回を描けるという事

もう一つ思いついたのが、最終回を最低2回は出来るという事ですかね。

1つは、「時系列順に於ける最後のエピソード」。
普通に考えれば歩鳥の高校卒業がラストエピソードとなるのかな。
必ずしも卒業まで描く必要も無いので、もう少し前の時点で最終回とするのかもですけれど。
これは、最終巻を読むまで何とも言えないですかね。

もう1つは、作品そのものの最終回。
これは何になるんでしょう。
個人的には、紺先輩の卒業が作品の最終回になるんじゃないかなと考えています。

歩鳥が3年次のエピソードは、11巻までに6話程描かれてきたのかな。
6巻48話、8巻65話、9巻72話・73話、10巻76話・81話と。
このどれにも紺先輩は出て来ません。
唯一かな。73話で「第一志望に落ちた」という情報が出てましたけれど、それ位でしょうかね。
紺先輩が卒業して、どうしているのか情報が無いんですよね。

5巻38話で紺夫妻は先輩に「卒業したらイギリスに来るか、日本に残るか」選択肢を委ねていました。
その上で、「第一志望は落ちた」という情報だけがある。

歩鳥3年次、紺先輩はどうなっているんでしょう?
日本に居るのか。イギリスの両親のもとに行ってしまったのか。
もし日本に居るのならば、3年次に歩鳥と紺先輩が遊んでいる描写が有って然るべきなのに、その描写が今のところ無い。
だから、イギリス行っちゃったのかなとも思うのだけれど、その確証も無い。

ハッキリしない事で、これは、わざと暈していると考えます。

紺先輩が歩鳥に対して特別な感情(恋愛じゃないよ)を持っている事も描かれてますし、歩鳥と居たいが為に日本に残っているのかもしれないし、やむを得ずイギリスに行ってしまったかもしれない。
どっちとも取れるような描写だけを我々に与えて、そして最終回にその答えを提示する。

消化できない伏線が最後の最後で拾われる快感と共に、妙な感動が生まれそうで、最終回が来て欲しくないけれど、来て欲しい気もして。
「紺先輩の進路」は、今作最大にして最後の仕掛けな気がしますので、それを最終回に持ってくるのかなという妄想。

兎も角、最終回が複数あるってなんだかお得ですよね。
理屈では無くて、何となく得した気分になれる。
こういうのもシャッフルの利点と思いたいけれど、最終回が複数ある事に何とも感じなければ、利点とは言えない事でもありますね。

まとめ

時系列シャッフルの最大の利点は、タイムテーブルを公開して初めてその効果が表れるのかなと。

タイムテーブルを読んで、これまで考察してきた「マイ時系列」と答えあわせをしたり。
時系列順に全話を読み直したり。

様々な楽しみ方が出来そうですし、多くの発見もまたありそうです。

上にも書いたように、まだまだ読み続けていきたい今作。
ですが、最終回後の楽しみ方も約束してくれたような11巻のあとがきでした。

それでも町は廻っている 11 (ヤングキングコミックス)

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