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アニメの印象は色で決まる!?色彩に関する考察

この記事は

アニメの色彩に関する記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

最近「STEINS;GATE」のDVDをレンタルして視聴しています。
会話劇中心なので場面の移り変わりが少なく、ややもすると退屈になりがちなのですが、キャラの面白味もあってか非常に興味深く視聴しています。
まだまだ序盤なので、これからドンドン動きも激しくなるかと思うと楽しみで仕方ありません。

さて。
この作品、見ていて色彩が独特だな〜と感じました。
なんていうか、モノクロでは無いんですけれど、色が非常に薄い。
淡白というか…「色付いてるよね?」と目を凝らしてしまいそうなくらい、シーンによっては薄いことがある。
赤とか非常に目立つ濃色を配しているにも関わらず、それが薄く見えるくらいに色彩を抑えている。
更には、上から光源を当てているのか、なんなのか…。
画面上部が薄らと靄がかかったかのように白みがかっていて、この全体の"薄さ"を強調している。…ように見えるのです。

まだ3巻までしか見ていませんが、「STEINS;GATE」って間違っても「明るい」作品では無いですよね。
どちらかというと暗いイメージで、この色彩設定は非常にそのイメージに合っているように僕は感じます。

独特の色使いが作品のイメージを構築して、それと僕の中の作品に対するイメージがピッタリと一致するので、世界観により入り込めている。
そんな印象を受けております。

作品のイメージは何で決まるか?

これは色々な要素が複合している筈です。
脚本(作品のテーマ)、音楽、そして色。
作品のイメージは主にこれらから得られるんじゃないでしょうか?
脚本は、直接ホンを見れる訳では無く、声優さんの演技によって我々に届く事で有る為、聴覚情報。
音楽も言わずもがなで、色は視覚情報ですね。

一般的に聴覚と視覚では、どちらが人間のイメージ決定に優位かと言うと、聴覚の方が勝るようです。
この事を「聴覚優位」と言うそうで、視覚情報だけのイメージを覆す程の力があるそう。

「STEINS;GATE」に於いても、色彩はもとより、BGMがどこか重々しくシリアスな曲調が多い事も、作品全体に独特の暗さを齎している要因と言えそうです。
このように、視覚情報からのイメージと聴覚情報からのイメージが同じ場合、受ける印象が増幅される(「共鳴現象」)と、作品のイメージというモノは定着するのかもしれません。

色彩設計と言うお仕事

アニメの色を決める役職の一つに色彩設定(色彩設計)があります。
この役職について少し調べてみました。
すると、こんなコラムに巡り会えました。

色彩設計おぼえがき【辻田邦夫】 WEBアニメスタイル

多くの東映動画(東映アニメーション)作品に携わってきた辻田邦夫さんのコラムです。
元東映アニメーション所属(現在フリー)として、「劇場版DRAGON BALL Z」シリーズ等を担当。
最近では「輪るピングドラム」の色彩設計をされていた方です。

このコラム内で、色指定と色彩設計の仕事に関して触れられておりましたので、その部分だけを抜粋させて頂きます。

先ずは色指定。

[色指定]はそのお話のすべてのカット(原画・動画)について内容をチェックして、指定を入れていきます。
例えば「このキャラはこのカラーモデルで」とか「この岩の色はカラーチャートの○○番の色で」といった内容をひとつひとつシンプルに分かりやすく「指定」を入れていきます。
で、その時に、その指定を入れるための大元のカラーモデルや約束事が必要になります。それを作るのが[色彩設計]になるのです。

続いて色彩設計。

[色彩設計]の仕事は「キャラクターの基本の色を作る・決める」そして「その作品の色味の方向性を作る・決める」という仕事です。
キャラクターデザイナーが描いたキャラの線画に色をつけて行くわけですが、監督(演出)、キャラデザイナー、美術、プロデューサーらと意見交換・打ち合わせしてイメージを構築して、実際の色に置き換えていくわけです。
マンガとかの原作があるときは、まずその原作にある色味を参考にしていきます。

イメージから色に置き換えていく非常に重要な役職ですね。

そうそう。余談となりますが、アニメの色彩と言えば思い出すのが「DRAGON BALL」の亀仙流の道着の色。
原作では山吹色(橙)となっていますが、アニメでは「赤みがかったオレンジ」ですよね。
原作の色を再現出来なかった理由としては、当時原作通りの色をアニメで再現する事が難しかったかららしいです。
「DRAGON BALL 大全集」に書かれていた気がします。(他の関連書籍だったかも。ちと定かでは無いですが、なにかの本に書かれていたのは確実)
鳥山先生のイラストを忠実に再現したカードダス「ビジュアルアドベンチャー」シリーズでは、道着の色が再現されていますが、アニメとなると難しい事だったようです。

これってパソコンでの彩色が主流となった現在では、再現可能なのでしょうかね。
若しかしたら既に「再現」されているのかもですが、なんだか気になります。

「名探偵コナン」の場合

以下、2作品ほど「僕のイメージと色彩のイメージが違った作品」を挙げてみます。

最近「名探偵コナン」の事を書く事が多いですけれど、今回も触れますね。
長期間放送されていますアニメ「コナン」ですが、こういう作品の例に漏れず、今作でも主要スタッフが度々入れ替わっております。

当然色彩を決定する権限を持っている色彩設計の方も変わっており、現在の海鋒重信さんは4代目です。
前述の通り色彩は、この役職のスタッフが独自に決めている訳では無く、監督などの意見が反映されているようです。
そうすると、3代目監督である佐藤真人さん後期では、僕の持つ「コナン」のイメージが大きく揺らいだ時期でした。

イメージとしては、上記の「STEINS;GATE」に近い配色だったんですね。
参考になるかどうかは分かりませんが、一応OP動画を張ってみます。

左(上)から順に
山本泰一郎監督時代(1998年-2003年) 第180話「赤い殺意の夜想曲(前編)」
佐藤真人監督終盤(2003年-2008年) 第491話「赤と黒のクラッシュ 発端」
於地監督時代(2008年-現在) 第510話「コナン VS W暗号ミステリー」(恐らく…)
のOPです。
ちなみに、上の山本監督時代のOPはまだセル画制作の時のものです。

OPだけだと良く分からないかもですが…。
佐藤監督期ラストエピソードとなった「赤と黒のクラッシュ」シリーズ(491-504話)と於地監督となった最初のエピソード「弁護士妃英理の証言」(505-506話)を見比べて下さると、違いがハッキリわかると思います。
(監督だけでは無くキャラデザなどメインスタッフが大きく変わった時期ですので、色以外にも全然違って見えると思いますが…)

この時期はどこか画面全体が淡く、なんだか非常に暗い作品に見えてしまっていたんですよね。
勿論ミステリ。殺人事件を多く扱った作品ですので、底抜けに明るい訳では無いですけれども、それでも「ラブコメ」要素も大きい作品なだけに、決して暗いアニメでは無い。
僕はそういうイメージを持っていただけに、この時期の色彩にはもどかしさを持っていました。

音楽が(基本的には)変わっていない為、そこでズレが生じたというのも大きいのかもしれません。
「コナン」のBGMは07年・佐藤監督時代に大きく変わっていますが、基本BGMはアレンジが加えられた程度の変更なので、然程影響は無かったと思います。
まぁ、音が変わっちゃったなぁくらいは思っていましたがw

ただ、色から受けるイメージと「自分の中のコナンに対するイメージ」がぴったり重なったファンからすれば、この佐藤監督後期は「良かった」と思えたんじゃないかな。
この辺の印象は個人個人で特に違う部分であると思っております。

「みなみけ〜おかわり〜」の場合

もう一つ、作品のイメージと色彩の持つイメージが(個人的に)合わないと感じた作品を。
「みなみけ〜おかわり〜」です。
これは暗かった。

オリキャラの冬木や1期と別人みたいに恐くなっちゃった春香等々。
脚本や演出からも作品を暗く重く見せようとする要素がてんこ盛りだったのですが、そのイメージに輪を掛けたのが、やはり色だったと思います。
主に冬のエピソードを多く描いていたからとはいえ、毎回天気がどんより薄暗かったり、モブの顔を黒で塗りつぶしていたり…。
(よく見るとちゃんとモブも顔が描かれていたのに、何故かその上から黒で塗りつぶして見え辛くしていました)

黒や灰色が画面を覆い尽くしているような感じで、僕が持っていた「みなみけ」に対するイメージとはかなりかけ離れた作品でした。

とはいえこれも、明るいイメージをこの作品視聴前に既に植え付けられていたから。
「みなみけ」という作品を原作や他のアニメシリーズ(1期、3期、OVA)を知らずに、この作品だけで見ていたらまた違ったと思います。
作品の内容や演出方針と色彩が首尾一貫していましたしね。
そういう意味では、作品に合った色彩だったと言える気がします。

まとめ

アニメのイメージを構成する要素の1つとして色彩があり、今回はそれについて分からないなりに書いてみました。
色というものには、それぞれイメージがあります。
コメディでは暖色系の色を中心に明るく見えるようにしていますし、ホラーなどでは画面全体を暗めにする為、黒系統や淡色で纏めている。
きちんとした意図があってアニメでは色が決められているのだと思います。

「みなみけ〜おかわり〜」等のように、作品に対するイメージと色彩から感じるイメージに齟齬が生じたならば、どうしてこういう色彩にしたのかを考えてみる。
するとスタッフがどういう作品にしたいのかが見える………のかもしれませんね。