Mangaism

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「熱帯魚は雪に焦がれる」考察 タメ口に隠された心理

この記事は

「熱帯魚は雪に焦がれる」の感想記事です。
ネタバレあります。

はじめに

落ち込んでるから漫画読もう!!
ということで、第2弾です。

第1弾はこちら。
nuruta.hatenablog.com

今回は「熱帯魚は雪に焦がれる」を取り上げてみます。
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ちゅき。

僕はちょくちょく書店を覗いています。
何か面白そうな漫画、ライトノベル無いかなと探しつつ書店を周るのは、それだけで楽しいものです。
そんな日々を送っていた、2017年末。
書店で今作に出会いました。
良い雰囲気の絵だなというのが第一印象。
ただ、その時は購入しませんでした。
それからも色々な本屋で見かけるたびに、購入しようか迷い、購入までには至らずという日々を過ごしました。

そんな日々に終止符を打ってくれたのが、笹木さんのこの記事。
sasa-comic.hatenablog.com
記事を読んで、すぐ購入しました。
背中を押して頂いた事に感謝です。ありがとうございます!!

ただ、そこからが長かった。
ずっと積んでいて、やっと読んだのが2日前。
なにしてるんだか。

んで、感想としましては「好き」の一言ですね。
絵が凄く好みです。
可愛い。読み易い。線が丁寧。
好きな絵の条件・3拍子揃ってますね。

お話も好みストライクです。
丁寧に少女達の心情を描いていて、物語の世界観に浸れます。

買って良かった!!
本当に良かったです。


さてさて。
ここから少し考察めいたことを書いてみます。

何故タメ口なのか?

父親の海外転勤で、1人愛媛の海辺の町に引っ越してきた小夏。
寂しさを隠しながら、ふと立ち寄った高校で1人の「海よりも青く澄んだ」女の子と出会います。
女の子の名前は、帆波小雪。
優しい笑顔で、小夏に話しかけてくれました。

物語はこうして始まっています。

この時2人は初めて会話を交わすのですが、初見から小夏は小雪にタメ口です。
あとあと小雪の方が先輩だと判明しても、そのままタメ口のまま。
ここに少し引っ掛かりを覚えたのです。
何故タメ口なのだろう…と。
小夏の心理を考えてみました。


前職の時にも居たのですが、誰に対してもタメ口の子がいました。
だから、世の中には、年上だろうと敬語を使わない子がいることは理解しています。
ただ、僕の常識からすると、「初対面」であったり、「年上」の場合は敬語…丁寧語を用いるのが普通なのです。
タメ口は、よほど親しくならないと年下相手でも使いません。
そこから考えると、逸脱した小夏の小雪に対する態度。

じゃあ、小夏も敬語が出来ない子かというとそうじゃないみたいです。
ちゃんと相手によって使い分けできています。
小雪に対しては特別なんですよね。

「特別」と言っても、一目惚れした…とか言う訳ではないです。
最初から順を追って考えてみます。


小夏はやせ我慢するタイプの女の子。
素直な気持ちを押し隠して、無理しちゃう子。
多分父子家庭なのでしょう。
兄妹もいなさそうです。
たった1人の肉親である父と初めて(だろう)離れて暮らす事に、不安や寂しさが無い訳ありません。
まだ15歳の女の子なのです。
不安げな顔を無理矢理笑顔に変えて、1人で大丈夫と言い聞かせています。

まさに帯にあるように「強気系女子」ですね。

そんな「1人で大丈夫」と強がっていた時に、優しく声を掛けられたのです。
慌てて強がってしまったのでしょう。
「強がり」が「タメ口」という形で表出した感じです。

初対面だったのに、タメ口だったのはこういった理由からなのかなと推測しました。


お話は進み、小夏は小雪が先輩だと知ります。
その日の帰り道。
友達を作れず、落ち込む小夏。
浜辺に寄ると、小雪に偶然出会います。

この時も小夏は「1人で大丈夫」と強がっているんですよね。
やはりそんな心境がタメ口として、表に出てるのかなと。

ただ、少しだけ心境に変化が現れています。
小雪の表情に、自分を重ねたんです。
「大丈夫だから」と笑顔を取り繕う小雪と不安げな顔を無理矢理笑顔にした自分を重ねた。
気持ちを押し殺して、平静を装っている自分の影を小雪に見た。
親近感を覚えたのかなって。
"友達になりたい"。
"親しくなりたい"。
強がりのタメ口の中に、ほんのちょっぴりそういった親愛が込められた瞬間なのかなと感じました。


自分でも何故小雪に惹かれるのか分からない。
だけれど、少しずつ小雪に接する事で、段々と「自分と似ている」ことを意識して…。
独りぼっちの寂しさを。孤独の辛さを。
同じ独りぼっちの小雪と一緒にいることで和ませたい。
タメ口に込められた親愛の度合いが段々と増している気がします。

小夏の小雪に対するタメ口には、徐々にですが、家族に対する親愛と同じ感情が込められてきてるのかなって。
それが配偶者に対する愛情なのか。
両親や兄妹に向ける愛情なのか。
どちらなのかはまだ分かりません。

どちらなのか。
それは物語が進むとはっきりしてくるのかなと想像しています。

終わりに

「熱帯魚は雪に焦がれる」。
優しい筆致で描かれたガールズシップストーリーです。
友情なのか。愛情なのか。
揺れ動く感情を丁寧に掬い取った物語。
是非読んでみて下さい。