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アニメな日々、漫画な月日

アニメ、漫画の感想・考察

ライバルとの再戦をマンネリ化させない工夫に溢れた青葉城西と陵南に関する考察

【漫画】週刊少年ジャンプ 漫画

この記事は

ハイキュー!!」中心に「SLAM DUNK」にも触れています。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

アニメ「ハイキュー!!」がやはり面白い。
動画枚数が他作品と比べて格別に多いという訳では無いと思われるので、見せ方(コンテ?)が非常に巧いということなのでしょうか??
技術的な事はトーシロの僕には分からないのですけれど、兎も角として、圧倒的な迫力を毎回覚えています。

躍動感がある

という言葉が本当に本当にピッタリのアニメです。

そんな中、恐らく2期最後の試合である「青葉城西戦」が始まりました。
青城との戦いはこれで通算3度目。

誰が何といおうと烏野の宿敵チームです。
3度も合い見えている訳ですからね。

音駒、白鳥沢、伊達工業などライバルと呼べそうなチームは色々出て来てますが、その中でも筆頭と呼んで差支えないチームだと感じています。
そんな青城に注目してみました。

陵南の見せ方

同じチームとの試合を何度も繰り返すというのは、作劇上非常に難しいのではないかと想像致します。
敵も味方も同じ面子で、同じこと(今作で言えばバレーボールという球技)を繰り返すのですから、やればやるほど新鮮味に欠きます。
書き手も読み手もマンネリズムに陥りやすいんじゃないかなと。

だから、工夫が凝らされていますよね。

と、「ハイキュー!!」本編に触れる前に、やはり「SLAM DUNK」は語っておくべき存在です。
同じジャンプのスポーツ漫画という共通点もあると、どうしたって想起しちゃうんですよね。

湘北とのライバルという意味でも、青城とダブるのが陵南高校でしょう。
この2組のこれまでは非常に似通っております。

初戦が練習試合であること。
主人公チームと唯一複数回試合を組んでいること。(現時点において、かつ、音駒など東京合宿参加組は除く)

まあ、似てます。
練習試合でエースが遅れて登場しているのも相似点でしょうか。

陵南エースの仙台は、釣りをしていて遅刻。
途中からの参戦となりますが、その力を遺憾なく発揮。
湘北を追いつめます。
試合は陵南が1点差で湘北を下します。

もしも仙道がスターティングから居たならば…。
格上相手に善戦したという空気は無く、点差以上の差を感じたものです。
作中でも仙道は花道、流川に大きな影響を与えています。

物語は進み、湘北はレベルアップを果たします。
素人・花道の技術的な進歩もそうですが、なによりメンバーが揃いますからね。
りょーちんが戻り、ミッチーが差し歯を入れて…。
最強のスターター・問題児軍団が勢揃いします。

そんな中での神奈川県予選・決勝トーナメント。
陵南との二度目の試合が描かれています。

勝った方が全国。
分かり易い構図でのライバルチームとの最終決戦です。

ここでの工夫は2点あると思います。
1つは、王者・海南大附属高校を引き合いに出す事。
王者を追いつめたものの僅かに及ばなかった湘北。
問題児軍団を擁しても崩せなかった牙城に陵南が挑みます。
結果から言えば、陵南もまた海南の軍門に下りますが、この試合で陵南の「湘北との練習試合時とは比較にならない成長」が描かれているんですよね。
エース・仙道が絶対的大エース・牧の高みまで上り詰めたという点と新戦力の福田吉兆の加入。

主人公チームの成長は作中でいくらでも描けるのですが、ライバルチームの成長ってなかなか描きにくい。
でも、「強くなっている」と読者に見せないとダメなのが再戦させる上での最低限のルール。
主人公チームは当然強くなるわけですから、初戦と同じ強さのチームと再戦させても意味が無いですからね。
(主人公チームの成長を示す噛ませ犬としてなら兎も角として)
そこで「実力が主人公チームより上の(若しくは拮抗している)チームと試合をさせる」というのは、セオリーなのかもしれません。
海南VS陵南は、まさに「陵南の成長」がこれでもかと示されていた好ゲームでありました。

仙道をゲームメイクするポジションであるPGに配し、新戦力の福田でガンガン点を取りまくる。
攻撃力を圧倒的に増した布陣が引けるようになり、これで中盤まで海南を追いつめる。
終盤になると、その福田が下がって攻撃力が低下、更に大黒柱の魚住を欠いて形勢は逆転。
それでも仙道の個の力で食い下がって、延長まで食らいつく。

福田がどれ程までに強力な力を持っているのか。
仙道の凄さがどれだけとんでもないのか。
1試合の展開だけで見事なまでに描かれております。

と、2点目の工夫を既に書いてしまいましたが、それはやはり新戦力の存在でしょう。
福田吉兆

事前に花道との出会いを描き、両者の間のライバル関係も築くことで、2度目の試合に新しい見せ場まで用意。
その実力は、先の海南戦でしっかりと見せて読者への印象付けにも成功している。
「レベルアップした陵南」の分かり易いまでの旗印としての役割をしっかりと果たしています。

天才・及川を立たせた3試合

ハイキュー!!」での青城は、この陵南に似ている気がします。
然し、陵南とは違う。「SLAM DUNK」とは違うオリジナリティがいっぱい出ているんです。

初戦に於ける仙道よろしくエース・及川の「遅刻」。
怪我の為、終盤にちょろっと登場しただけにも関わらず、日向ら烏野に与えた衝撃は凄まじく。
烏野が勝ったにも関わらず、やはり一読者としては「勝った気がしない」と思わせてくれるには十分なインパクトがありました。

万全の状態で、最初から試合に居たら、どうなるか分からない選手。
仙道にも言えた及川のファーストインプレッション。

ただ、仙道と違うのは、試合に出ていた時間が全く違うという点。
これが大きい。
同じ「途中出場」でも、この差は後々の展開に大きく響いています。

わりと長い時間練習試合に出ていた仙道以上に「力を秘めた存在」として及川が描かれ、そして、その通りの結果が示されたのが2度目の試合でした。

烏野は、青城との初戦以上に強くなっていたんですよ。
エース・東峰と守護神・西谷の復帰で、分かり易く層が厚くなった。
コーチとして烏養繋心が就いたのもプラスですよね。
ちゃんとした指導者が合流したのは、とても大きい点です。

片や青城は、練習時代と変わらない面子。
及川がフル参戦しているという"だけ"の違い。
それなのに、結果は青城の勝ち。

初戦で「実力のほんの末端しか見せなかった及川」という布石が見事に活きていました。
最初から及川が居るチームと居ないチームのデカすぎる差。

及川がどれほど凄い選手なのかが浮き彫りになっていました。

エースの描き方1つで、大分違いますね。
ハイキュー!!」では、「エースの力」という見せ方で2試合を描き出しているんですよね。
敢えて練習試合で力の片鱗(本当に「実力の僅か」)だけを見せて、再戦時にしっかりと描く。
こうして「2度戦わせる意味合い」を持たせています。
2度目の試合で、始めて青葉城西戦は完成するという構図。


新戦力の捉え方も似てるようで、大分違います。
福田と対をなすのが、「狂犬ちゃん」こと京谷。

彼が投入されたのは、福田と同じ理由も含んでいる筈です。
なかなか描けなかったライバルチームの分かり易いレベルアップとしての役割ですね。

実際粗はあるものの、京谷によって攻撃力が増した青城は、烏野を翻弄します。
2度目の対戦時よりも個々のレベルを上げ強くなった烏野を、たった1人新キャラを加入させるだけで五分五分にまで引き上げている事に成功していると思うのです。

この京谷、面白いのがもう1つ役割を担っているのではないかということ。
アニメでいえば2期20話「払拭」で、京谷の登場に武田先生が面白い表現をしていました。

綺麗過ぎる程に噛み合っていた歯車を、自ら狂わせる。
途端それは、得体の知れないものとなる…

「綺麗過ぎる程に噛み合っていた歯車」というのは、青城のチーム全体を評した物であって、また、及川個人のカリスマ性を謳ったものでもあると踏んでいます。

及川というのは、どんなチームにも溶け込み、どんな選手の力をも発揮させるほどの選手。
セッターとして、スパイカーに気持ちよく打たせることが抜群に巧い選手。

バレーボールの性質上、セッターからのトスが直接攻撃に結び付くというのもあり、文字通り(攻撃面に於いては特に)及川を中心に周っていると。
つまりは、及川が綺麗過ぎるほどに歯車(及川以外の選手)を噛み合わせていると言えます。

京谷は、そんな及川には尻尾を振りません。
唯一従うのは、副キャプテンである岩泉のみ。
自分以外に挙げられたトスでも横取りしちゃう位飢えていて、反抗的。

まさしく「歯車を狂わせる」存在。

そんな異分子ですら、彼の個性を消すことなく、チームに活きるようにコントロールしちゃう及川。
どんだけ天才なんだと。
京谷でさえも及川という大王様の実力を示す為の踏み台(言い方は悪いけど)として機能しちゃってるんですよね。



同じゲームメーカーでもバスケとバレーボールでは、やはり違います。
仙道からパスを受けて、そのまま攻撃(シュート)というパターンこそありますが、多くはパスを受けてからの個人技となります。
ドリブルで相手を抜いたり、他の味方へパスを繋いだりと。
そういう選択肢の多さがバスケの醍醐味。
こういった競技の特性上、仙道がチームメイトを活かすのが上手いという面が描き辛いのもあり、仙道は「仙道自身が凄い」という面が強調されたエース像でした。

バレーボールは、セッターが上げたトスはそれ即ち攻撃(スパイク)なんですよね。
スパイク以外の選択肢ってほぼ無い。
だからこそ、及川のような「どんな選手でも実力を引き出す」という能力を存分に描けるし、それを京谷で見事に体現している。
3戦目にして、これまであまりスポットの当てられていなかった及川の特徴が如何なく発揮されていたなと。

競技の特性を活かしつつ、3戦目にして、1・2戦目には見られなかった切り口を見せて新鮮味を加えている。
2戦目の金田一相手でも影山と比較しつつ及川の特徴を描いてもいましたが、それ以上に京谷で強調されていたと感じます。
京谷が齎した2つ目の効果は、今作ならではのオリジナリティ溢れた工夫ですね。

おわりに

安西先生、不在。
湘北最大のピンチにどう立ち向かうのか。

湘北側に立って見ると、陵南との再戦の最大の見せ場はまさにこれでしょう。

あの海南に匹敵し、福田という新戦力も脅威。
過去に敗れ、チームとしても格上。

そんな相手にどう湘北は挑むのか。

SLAM DUNK」のライバルとの再戦は、こうしたドラマを盛り込んでいたのもあって、同じチームとの対戦でも非常に熱い気持ちで読み耽ったものです。


ハイキュー!!」は切り口を変えて、徹底的に及川にスポットを当てている印象が強いですね。
彼の強さを見せるというだけで2試合持たせていたし、3試合目も彼の天才性を引き立たせている。
バレーボールという競技の性質を巧みに組み込んだ構成で、こちらもまたグイグイと試合に引き込まれる魅力がありました。

どちらの作品もマンネリしない作りになっていて、改めてプロの物語構成力は凄いなと感じます。