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「続・劇場版 Wake Up Girls!-Beyond the Bottom-」 感想

この記事は

「続・劇場版 Wake Up Girls!-Beyond the Bottom-」の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

肉じゃがの入ったカレー…でしたっけ?
レコーディング時にそんな感じで評してましたけれども、これは「別の料理になってしまった」という絶望感からの言葉だったと解釈しています。

前編の感想から抜粋しました。
BDで前編を見直したんですが、肉じゃがなんて言ってないやん(>_<)
いや〜ヒドイ。ヒドイ間違いです。
本当に記憶力無いな、自分は。

さて。
後編感想です。

感想

一言で後編を表しますと、「表層だけをなぞった様な映画(お話)」。
ちょっと残念だったなというのが率直な感想です。
前編が良かっただけに尚更期待していたのですけれど。
勿論シリーズのファンを自認する僕は、つまらなかったとは言いません。
一定の満足感もあるのですが、しかし、ファンという目線を外して振り返ると「ちょっと残念」という言葉に収まっちゃいます。

全体的にあまりにも駆け足過ぎでした。
仙台に戻ってリスタートを切るところからアイドルの祭典までの1カ月弱を総集編的に矢継ぎ早に見せる手法は、前編と同じ構成だったのですが、尺的に物足りなさを大いに感じる部分だったのです。
前編では問題無く見れました。
大きく環境が変わり、忙しなく映りゆく東京を舞台にしてるということもあり、激しく動き回るWUGの心情と重なって総集編的な見せ方は非常にマッチしていました。
東京の波に飲まれ、沈みそうになるも、それでも再起を掛ける彼女達の姿にこちらも自然と盛り上がれたのです。

ただ、後編ではもう少し落ち着いてじっくりとドラマを見せて頂きたかったのですよね。
言うなれば、もっと焦点を絞って頂きたかった。
あれもやりたい、これもやりたい、全部やってしまおう感があり、それを短い時間にぎゅうぎゅうに押し込んでしまった印象が拭えませんでした。

象徴的なのが、菜々美脱退騒動。
予告でこの件を見た時は正直に言うと「このタイミングでやることなの?」と思いました。
アイドルの祭典というクライマックスが用意され、そこがメインになるかと思っていたので尚更に。
案の定言葉は悪いですが「取ってつけた感」がありました。

菜々美というキャラを振り返れば、当然描かれるべきドラマだったと思うのですよ。
このドラマをクライマックスである今回に持ってこられた点も色々と理解出来ます。
ただ、使うのであれば、それなりにスポットを当てて欲しかったです。
菜々美脱退から合流までを僅か5分あるかないかの時間で描き切るのは、いくらなんでも駆け足過ぎですよ。

作中では脱退から合流までそれなりの時間が経過していたようですから、寧ろそこをメインに据えても良かったんじゃないかなと。
例えばこんな感じで。

後編冒頭で菜々美を脱退させる。
彼女が抜けて6人となったWUG。ぽっかりと穴の開いたような寂寥感と共にそれでも前に進む6人の姿を描く。
菜々美の方は、脱退してそれでも尚夢とWUGの間で揺れ動く心境を描いていく。
祭典当日からの流れは本編のまま…

こうした方がより面白い!!
なんて言う気はさらさらありません。
ただ、ボロワゴンでの全国行脚の様子はバッサリと切って、こういう構成でじっくり描いてくれていたら「僕の思う"Wake Up Girls!らしさ"」をよりハッキリと味わえた気がするんです。

WUGらしさって何だろう?

WUGらしさって何だろう?
結局この問いに対する答えは明示されていなかったと思います。
藍里が菜々美に「自分なりのWUG」という感じで言ってましたけれど、最後の最後で真夢が「このステージで私たちらしさを見つけよう」的な事も言っていましたので、藍里の考えがグループの総意という訳では無いのでしょう。
あくまでも1つの答えであって、故に、このような結果となった以上は、「答えは見た人それぞれの中にある」という感じの纏め方で正しいと考えます。

この考えの元、では、僕の考えはというと一貫して"プロらしくない素人くさいアイドル"。
TVシリーズでもそうだったし、前編もそうだった。
WUGらしさってそういうものなんだと心底感じました。

なんだかんだ言いつつ、「ライブシーンを描き切らない姿勢」もコレに繋がっていると解釈しています。

(今のところ実質)最後のエピソード。
シリーズの集大成というべき作品のシリーズ最大のイベントでのライブ。
当然観客という立場で見れば、華やかで壮大なライブシーンを期待しちゃうんです。
イベント上映とはいえ映画ですし、大きなクライマックスを見たいという願望だってありました。
「七人のアイドル」と同じか、いや、ライブ中に社長らの芝居が挟まれていた事を考慮すればそれ以下か。
兎も角、1曲の1番だけしかライブシーンが無かったというのには肩透かしを食らったのは事実ですw
ですが、「らしい」という気持ちの方が大きいのですね。

作中でどれだけ「大事だ!!」「優勝だ!!」「勝つんだ!!」とキャラに言わせたところで、スタッフが描きたいとこはそこじゃないんだと。
ライブシーンを描く気も無ければ、そこで盛り上げる気も無い。
WUGが日本一のアイドルになりましたということを描く為の物語では無い。


菜々美に対して敢えて嫌味な書き方をしますが、夢を追ってWUGを辞めるというのは「目標に対して結束してる時期に水を差す行為」であったことは一面に於ける事実です。
菜々美が6人の心情を慮って悩んでいたとしても、そこは変わりありません。
夢だったとはいえ、我儘を通しての脱退だったのですから、普通であればそこで縁は完全に切れるのが現実なんじゃないかな?
場合によっては罵倒された上で一方的な絶縁を言い渡されていたとしても不思議じゃない状況。

でも、そうはならなかった。
それどころか菜々美の心情をちゃんと理解してあげて、優しく皆で背中を押してあげていた。
寂しくて嫌だけれど、夢ならば仕方ないよね。
頑張ってね。
光塚に合格してねと送り出す。

凄く良かったのは、ここでの実波の行動。
菜々美に大事なお守りを手渡すシーン。
TVシリーズ第3話で磯川のお婆ちゃんからWUGオーディション時に貰ったと実波が述懐してます。
3話と言えば、実波がライブよりも磯川のお婆ちゃんの見舞いを優先させてしまったエピソードで、この時も実波は"不問"。
「プロらしからぬ行動」を"許されて"います。
お守りは、実波と磯川のお婆ちゃんの絆の象徴であり、このエピソードの象徴にもなっていました。
それが菜々美に渡される。
「歴史は繰り返される」。
そう思うには十分なアイテムを出してくれたのは、とても良かったです。

そういえば、悩む菜々美に最初に気づいて、話を聞いて上げたのは「唯一脱退しかけた」藍里でした。
真摯に向き合い、悩みを打ち明けることで救われた経験があるからこその役回り。
また、彼女は早坂から「プロとしての自覚が薄い」と称された経緯もあります。
メンバーはそれでも藍里が必要と早坂を説得して、彼女を「復帰」させています。

「プロらしからぬ行動」を取った実波と「プロとしての自覚が薄い」と言われた藍里。
2人ともWUGにとって欠かせないメンバーであり、それが「WUGらしさ」になっていると感じるのです。
これに倣い菜々美も「プロであることを捨てた」にも関わらず、WUGは戻ってきた菜々美を優しく迎え入れた。

菜々美の衣装を松田が持ってきてたことも同じように解釈。
メンバーはおろか、事務所全体で本来であれば「復帰なんてありえない」菜々美を当たり前のように戻している。
こういう「プロらしからぬこと」を当たり前のようにするのが「WUGらしさ」なんじゃないかな。

菜々美脱退のエピソード自体、僕の思うWUGらしい要素がしっかりと練り込まれていて、大変好きな流れではあるのです。
それ故に。
「僕的なWUGらしさを象徴するシークエンス」だからこそ、もっと象徴的に描いて欲しかったです。
とはいえ、そうなったらなったで「答えは見た人それぞれの中にある」なんて言えなくなりますね。
自分の想う「答え」が全面に出てなかったというただの我儘ですね、これは。


真摯であること、正直であること、一生懸命であること。
藍里の考えるWUGらしさ。
公式ででっかく書いてるから、やっぱりこれが「答え」なのかもしれませんね。

終わりに

前編では貰えなかった入場者特典。
初日に行って来れたので、後編では難なく入手出来ました。

タップ穴が空いてて、大興奮。
モノホン原画やったああああああ。
しかも菜々美。
大当たりすぎる。

色々書きましたが、菜々美好きです。
中の人含めて良いですよね。
結局のところ、それだけにもっとしっかりと彼女のドラマを見たかっただけなのかもしれません。

ちょっと残念だった。
時間が足りないと感じた。
押し込め過ぎていた。

けれど、僕の感じる「WUGらしさ」はしっかりと味わえた。
その分だけ満足感がありました。

まだ足りない。物足りない。
ここで終わって欲しくない。
もう少し。もう1シリーズ。
TVシリーズでも、長編映画でも。
何らかの形で続きを見たいな。