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「恋のヒメヒメぺったんこ」合唱シーンが重要という「劇場版 弱虫ペダル」の見方 

この記事は

「劇場版 弱虫ペダル」の感想記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

「劇場版 弱虫ペダル」。
ググったらトップに「期待を上回る完成度!」で始まる見出しの記事が出てきました。
ぴあが行っている恒例の満足度調査を伝えるニュースで、僕の感想もこの見出しの通りでした。
まさしく「期待を上回る完成度!」。

長く熱かったインターハイ。
このレースをTVシリーズ41話掛けてじっくり描いていたからこその良さってあって、映画にだって同等のレースを期待しちゃうもの。
しかし、酷な事に映画にはそこまでの長尺はどうしたって無理。
バトル漫画(アニメ)の映画化同様、TVシリーズを超えるスケール感を出すのは難しいからという小さな考えで以て、期待感を低く見積もっていたのですけれど。
本当にごめんなさいですね。

素晴らしいレースだったし、TVシリーズに負けない熱いドラマがそこにはありました。
こういう切り口もあるんだ〜と思い知らされた次第です。

さてさて、この映画。
最大の見所は何と言っても「恋のヒメヒメぺったんこ」を総北メンバーで大合唱するシーン。
1期33話での田所とのデュエットも腹抱えながら見てましたけれど、破壊力倍増。
なんたって今回はフルメンバー6人で歌ってるんですからね。
声を殺して笑いっぱなし。
坂道(あとは鳴子もかな)の中の人は男性にしては声が高く、こういう歌を歌っても然程違和感無く聞けるんですけれど、今泉以下4人は低くカッチョイイ男声。
無理して裏声出してではなく、キャラの声のまま歌ってるから笑いの破壊力が半端無い。

いや〜笑った。
最高のシーンでした。
うん。最大の見せ場だと思うのですよ。
このシーンにこの映画のドラマの全てが詰まっていたと思うのです。

「恋のヒメヒメぺったんこ」が肝

レースを描くにしても、この映画での見せ方は原作とは異なっていました。
勝敗ではなく、「別れのドラマ」に焦点を持ってきていて、なるほどな〜と膝を打ちました。

普段通り勝ち負けを魅せるのであれば、そりゃ長い時間掛けた方がスケール感も出せます。
しかし、それを魅せるのではなく、キャラのドラマに主眼を置き、レースはそのドラマを盛り上げる材料に過ぎないとするならば、レース自体の描写は最小限で済むんですね。

「別れのドラマ」。
坂道と巻島の別れのドラマは、非常に見応えがありました。
僕は原作未読なので非常に頓珍漢なことを書いちゃうと思いますが、この映画、恐らく原作での巻島との別れ方とは別…ですよね。
わざわざ「映画オリジナル」を銘打っているのですから。

実を言えば、TVシリーズ放送時にwikipediaを見て、巻島が卒業を待たずに居なくなってしまう事だけは知っておりました。
ただ、そのことを映画に絡ませてくるのは、今日実際に映画を見るまで知らなかったのですが…。

原作でのエピソードを「完全オリジナル」である映画にも絡めて来て、原作者が今作のストーリー原案を担当されている。
ならば、原作は原作で別の物語なのではないかという想像をしました。
若しかしたら、2人には別れすら無かったのかもしれない。
そう想像すると、この映画はファンにとっても、当の坂道にとっても忘れられないエピソードになっていくんじゃないかなと。
それ程のドラマであったと原作未読の僕ですら感じたのですから。


別れと言っても、3年生である巻島と1年生である坂道には、長くても残り半年程しか一緒にいられる期間はありませんでした。
卒業式は等しく(留年さえしなければ)訪れるものですからね。
しかし、別れの日が定まっている分、時間はあります。
足りないかもしれない、短いかもしれない。
けれど、別れのその時まで時間は残されていて、心の準備も出来る猶予がある。
切り替えるだけの時間も最小限で済むかもしれません。

今回のケースはそうではなくて、あまりにも唐突に、何の前触れも無く訪れていました。
そりゃショックでしょうし、簡単に頭を切り替えられないでしょうね。
ただの先輩では無く、憧れの「日本一(世界一だったかもです…)カッコイイクライマー」の先輩が突然いなくなってしまったのですから。

坂道がどれほど巻島を憧憬の存在として見ているのか。
前半では見せつけられました。

物語の舞台は熊本に移り、いよいよレースが始まりました。
レースの描写自体、本当に迫力一杯のカメラアングルで、かつ、スピーディ。
絵的にも面白く見れたのですが、僕が着目したのは2つの「勝負」。
「結局レースの勝敗がメインなんじゃん」ってツッコまれそうですけれど、そうではなくて。

先ずは初日にスプリンター同士が競い合ったシーン。
言葉忘れてしまったんですが、区間賞的な山岳賞的な…。
定められたポイントを誰がトップで通過するかという点が今回のレース展開を見るにあたってのポイントになっていました。
総北の田所・鳴子VS箱学の新開・泉田戦。
鳴子と田所が、最初は「俺が俺が」的に個人で争いつつも、最後は鳴子が田所に譲ってチームプレイ。
箱学も最初からチーム戦に徹し、チームVSチームという図式で描かれていました。

2つ目は2日目。
これはゴールでしたね。
誰がゴールラインを最初に割るのかの勝負。
総北、箱学ともにクライマーが争いました。
坂道、巻島、東堂、真波。
ここは完全に個人戦。
個人戦にした展開が非常に興味深かった。
インターハイだと徹頭徹尾チーム戦で、「チームの誰か1人がジャージをゴールまで運べば良い」という共通の認識を持って戦っていました。
だから、インターハイのゴールを争った坂道と真波が巻島や東堂よりも「強い」訳では無いんですよね。

個人戦になれば、まだまだ後輩には負けない強さを先輩が見せていて、巻島の「先輩として背中を魅せる」大きさが見れました。
まだまだ坂道は巻島を越えてないんだなと分かった瞬間ですね。

最初に普段通りの団体戦を描きつつ、対比として個人戦を描く。
団体戦だと勝者が必ずしも一番では無いという事が浮き彫りになり、TVシリーズでの勝敗もフラットな目線で見れる。
つまりは、クライマー4人の力関係もフラットになり、後半の個人戦で「本当の4人の力量差」を描ける。
今回の「レースの役割」はチームとしての勝敗では無く、先輩の偉大さを魅せてくれていたのかなと。

そんな巻島がレース中、坂道に言うんですよ。
「(ロードレースを)楽しめよ」って。
偉大な強くて格好良い先輩からのアドバイス。
このアドバイスを坂道は守って行けるんだなと僕らが思えれば、それは坂道が巻島との別れを乗り越えて成長したという証左にもなるんじゃないでしょうか。

実際、僕は思えました。
ああ、坂道は大丈夫だな〜と。
ラストの笑顔もそうですが、なんていっても「恋のヒメヒメぺったんこ」を一緒に歌ってくれる仲間に出会えたのだから。

ギャグシーンとしても面白く見れるんですが、あの合唱シーンはやっぱり大事なんですよ。
モブの女の子が言っていたように「楽しそうなチーム」として映るから。
正直恥ずかしい。
その上、歌う意味が見出せない。
けれど、坂道に乗せられて、何故か大声で一緒になって歌ってしまう。
こういう楽しい仲間に囲まれてるんですから、つまらない訳がない。
坂道にとっては、ロードレースは楽しいモノなのだと分かります。

歌を覚えさせられていたという伏線までわざわざ張っていたのですから、ただのギャグシーンと見做すべきではない気がします。
笑えるシーンですが、この映画全体を通しても大事な大事なシーンに思えたのです。

終わりに

唐突に訪れた別れ。
然しこの映画で、短いながらもしっかりと別れを済ませる物語が描かれていました。

満足感の高い映画でありました。