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「SHIROBAKO」 第23話 感想

この記事は

「SHIROBAKO」第23話の感想記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

ブログって便利だな〜と最近思うようになってきました。
何かを見て、読んで、自分の中に抑えきれない感情が渦巻くことって誰しもが経験してるでしょう。
かくいう僕も良い感情の時も悪い感情の時も、いつまでも頭から離れずに悶々としちゃう事なんてしょっちゅうあります。

そういう時に、誰かに話したり、文字にしたりしてアウトプットするとスッキリするんですよね。
これまた多くの方が経験してると思われます。

だから、ブログって便利だなと。
誰にも気兼ねすることなく好きなだけ気持ちをアウトプット出来るんですから。

てなわけで、「SHIROBAKO」の第23話を視聴して生まれた僕の中で溢れそうな想いの丈を全てぶつけます。

5人のシンデレラ

僕は今作は1つの「シンデレラストーリー」として位置付けています。
働く女の子達が頑張って頑張って輝くまでを描いていると信じているんです。
そういう意味で今作のシンデレラは上山高校アニメーション同好会の5人。
描写量は差があるんですけれど、それぞれ悩み苦しみ、努力して頑張り、報われていく姿が描かれてきました。
1人1人簡単に振り返ってみます。

先ずは主人公のあおい。「みゃーもり」と以下書きます。
作品の主人公なだけに彼女の出世ストーリーは殊更丁寧でした。
「えくそだすっ!」から「第三飛行少女隊」へと制作がバトンタッチする過程で、みゃーもりが「出世させられた理由」にとっても説得力があったんです。

ムサニ唯一の制作デスクである本田さんの退職。
デスクの後継に成り得る制作の先輩である落合の移籍。
同じく先輩である矢野様の休職。
タローは元々居てもいなくても問題無いので(笑)、彼だけは残されて…。
作中で語られていたように適任者がみゃーもりしか居なくなってしまったんですよね。

3人がいっきに抜けると不自然なので、少しずつ居なくなる布石を打っておいて、「三女」制作時には3人とも居ない状態に持ってきていた。
唐突感も無いので、僕も自然な流れだなと受け入れられました。

制作時代よりも過酷な状況をそれでも乗り切っていけてるのは、彼女が今も楽しそうに仕事をしてる姿が証明してくれてます。
間違いなく成長の証が認識できます。


絵麻も良かったです。
流石に彼女の成長過程を丁寧に描きすぎるとそれはそれで専門的になり過ぎて難しいのでしょうけれど、そこは「素人でも共感出来る」レベルで苦悩を描けていたと思うのです。
7,8話の「猫でリテイク」編。
動物を"らしく"動かすのがどれだけ難しいのか…。
描いた事が無いから僕には分かりません。
だけれど、「自分でやりますと手を挙げた仕事が技術的に出来ない」とやっぱり落ち込みます。
悩みます。
どうして出来ないんだろうと只管葛藤するでしょうし、自棄を起こすかもしれません。
ただこうした「壁」を乗り越えると、グッと成長できるという事も理解出来るんです。

「えくそだすっ!」で作画マンとして成長し、「三女」では後輩の面倒を見る事で更に成長してるんだとも分かる。
他人に教えると自分自身のレベルアップ(復習になるので)に繋がるものですからね。
作画監督として推されたのも頷けるんです。
みゃーもりと同じように「人が少ないから(居ないから)」というのも、説得力を補強する要因になっていました。


みどりことりーちゃんも努力してました。
普段から脚本家になる為に、インプットを欠かさずにいたじゃないですか。
大して興味の無い事でも将来役に立つかもと手のを伸ばしていたって凄いですよ。
調べ物が好きとは言っても、なかなか出来る事じゃありません。

そういう努力が実り、アルバイトとして採用され、舞茸に頼み込んで彼に師事した。
平岡から何を言われようと負けないで頑張った。
「三女」最終話のシナリオ改訂版に一言とはいえ彼女の考えた台詞が採用されたというのは、小さいけれども大きな足跡です。


美沙は他の子に比べればやや運に恵まれていたかな。
描写量的には一番少ない分、若干「努力の跡」が見えにくい子。
でも立石社長から直々に成長してると(みーちゃんの直接の上司の評価とはいえ)言われているのは注目すべき点です。

クリエイターの仕事って本人の才能は元より努力しないと絶対に成長出来ないと思うから。
日々淡々とノルマを熟す人間では、少なくとも1年間で「良くなった」と上司に言わせるのは難しいんじゃないかな。
将来に不安を抱きつつも、今やってる仕事に疑問を持ちつつも、それでも上手くなるよう努力した成果があの短いセリフに込められていたと信じます。
向上心が無いと成長しないのは、どの業種にも言える事ですけれども。
みゃーもりに転職先を紹介してもらい、「三女」の制作に参加できるようになったのは、もう運が良かったとしか言えませんけれども、とはいえ参加できたのは偏に彼女の「アニメ本編では描かれなかった部分での努力の成果」であると言い切れるかと。


こうして4人は、一定の努力の末の成功が描かれてきました。
まだまだ夢の途上ではあるものの、報われているんですよね。

ただ1人、ずかちゃんだけを除いては。
しずかだけは、努力しか無かった。
努力して努力して、挫けそうになっても歯を食いしばって前を向く。
ただ1人報われない姿が誰よりも誰よりも多くの時間割かれていた。

自然と「報われて欲しい」と思っていた。
その気配がする度に「今でしょ」と某先生並に叫んでは、報われない顛末に悲しんだ。
もう彼女が報われるシーンは無いんじゃないか…。
最終回も間近にせまり、僕はそう考えるようにもなっていました。

坂木しずか「強みって何かな」

ちょっとアニメとは脱線して、ノベライズの話になります。
小説版を読まれて無い方はネタバレがありますので、このセクションはすっ飛ばしてください。

SHIROBAKO イントロダクション (JUMP j BOOKS)

SHIROBAKO イントロダクション (JUMP j BOOKS)

先日本屋さんでノベライズを見つけました。
恥ずかしながら存在自体その時初めて知ったんです。
何故に「ジャンプjブックス」からの発刊だったのかは未だ謎ですけれど、これを購入し読了いたしました。

内容はというと、アニメの前日譚。
上山高校アニメーション同好会1人1人にスポットを当てて、彼女達がアニメ業界に携わる"最初の頃"が描かれた短編集です。
4人の作家さんが5人を主役にした短編を描き下されています。

このノベライズの何が良いって、そりゃ5人の努力の日々がアニメ本編に確実に繋がっている事が見て取れる事ですね。
みゃーもりは制作としてのいろはを教わり、りーちゃんは脚本家とは何かを学ぶ。
絵麻は動画担当から作画担当になる為の試験(P.A.WORKSでも年4回実際にこういう試験が導入されてるようですね)で悩んで、みーちゃんは専門学校時代の「初めての仕事」での優秀さと頑張りが見て取れる。
皆、今の「成長」に繋がる「努力」がありました。


で、ずかちゃんですよ。
声優養成所時代のエピソード。
声優になりたいという本気度が気持ちの面でも努力の面でも、目一杯描かれていました。
壁にぶつかり、スランプに陥って、どうしようもない状態に追い込まれて、みゃーもりについ泣きじゃくりながら弱音を吐露してしまう。
みゃーもりも何も言わずに一晩中ずかちゃんの泣きごとに付き合っている。

2人の関係性っていうのかな。
ただ単に同じ高校で同じ同好会で苦労を分かち合った仲間じゃないんだよというのが伝わってきたんですよね。
アニメだけでも吸い取れる点ですが、自分のことのように痛みを分かち合って、喜びを共有できる間柄なんだと再確認出来たんです。

第23話「続・ちゃぶだい返し」

頭の片隅で「最終回ではずかちゃんのエピソードは入らないだろう」と考えていました。
彼女が作品の主人公であるならば最高の結末として最終回に用意されるべきシナリオですが、残念ながらそうじゃありません。
みゃーもりが主人公なのだから、彼女にスポットが当たるシナリオだろうと予想したから。

だから、この回でずかちゃんが報われないと、もう最後まで無いんじゃないかと。
そう考えながら始まった23話。
そういった意味では中盤までは絶望的な展開でしたよ。

野上先生…じゃなかった。
ノガメ先生に最終回の展開を全否定された監督がどうにかバッドエンドでは無い終わりにならないか苦闘するお話でしたから。

どう考えても、ここからずかちゃんにスポット当たらないだろ〜〜と。
割りと本気で絶望してました。
ああ、やっぱり彼女は報われないんだろうか。
諦めかけた瞬間、ノガメ神が「妹」なるフレーズを口にしたんです。

瞬間、頭の中で妄想劇が出来上がりました。

妹の新キャラ⇒ずかちゃんが抜擢⇒彼女が初めて役名付きのアフレコに参加する⇒努力が報われる

感極まってしまったんですよね。
涙がボロボロと落ちて来ちゃいまして。

画面では監督と先生が握手してる。
傍から見るとオッサン同士が分かり合ったシーンに感動してるオッサンというシュールな図。
違うんですと誰に釈明してるんだか分からないんですが…。

もうそっから最後まで号泣。
やっと。やっと報われたと。
「三女」オーディションで彼女が監督の目に留まるも、結局は落とされた時なんて「もっと粘れよおおおおおおお監督ううううう」とどんだけ叫びそうになったか。

ただ1人苦労だけを背負っていた子が、やっっっっっと報われたんですよ。
泣くに決まってますよ。


改めて2度、3度と録画した分を見返してるんですけれど、何回見ても泣けます。
で、気づいたんですけれど、個人的に「しずか本人の気持ち」をオミットしていたのが良かったなと。

恐らく事務所からだと思われるんですが、電話を受け取ったずかちゃんのシーン。
あそこで「三女」の出演を初めて知らされた筈です。
これまでを想えば、感激でむせび泣くか。
若しくは喜びを爆発させるか。
いずれにせよ何らかのリアクションがあの電話を切った直後…あるいは電話中にあったはずなんです。
冷静に「そうですか、ありがとうございます」で終わった訳は無い。

必ずあったと想像出来るずかちゃんが感情を吐露するシーンを敢えて削っている。
このシーンがあっても一緒になって泣けたと断言しますが、無い事で「僕の感動のクライマックスがアフレコシーンになった点」がとっても良かったです。

ずかちゃんのような売れない声優さんにとって一番の喜びって「仕事を貰えた瞬間」よりも「仕事をしてる時」だと思うんですね。
アフレコシーンの前に感動のクライマックスを迎えちゃうよりも、アフレコシーンで感極まりたかった。
まあ、ノガメ先生の「妹」台詞から感極まって泣きっぱなしだったんですが、一番涙が出たのはこのシーンだったんですよね。

それと、感情を爆発させたのがずかちゃん本人ではなくみゃーもりだというのも最高でしたね。
何も知らなかったみゃーもりが驚き、

「今、私。少しだけ夢に近付きました」

の台詞で感極まる。
僕のような涙腺緩い人間はさておき、みゃーもりと同じタイミングで泣けた人も多いんじゃないかな。
そういった人は、みゃーもり視点でずかちゃんを見れるという演出になっていて、本人に泣いてもらうよりも感動しやすいかなと。

ノベライズ読んでたから、余計に涙腺に来たというのもあります。
ずかちゃんの努力とそれが報われずに苦しんでいる様を多分作中の誰よりもみゃーもりは知っている。

知っているから、あれだけ泣いた。
人目も憚らず、隠れるように声を押し殺して泣いた。
非常に綺麗な涙でした。

終わりに

もうこの笑顔を見れた事だけで言う事ありません。