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「SHIROBAKO」 19話 作品のテーマの答えが込められた重要回

この記事は

「SHIROBAKO」の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

「SHIROBAKO」が大好き過ぎて、もう本当に毎週毎週木曜日が楽しみで仕方無い日々を過ごしております。
久々にBDを買い続けている最中ですし、珍しくアキバでグッズを買ってみたり。
(基本BDやCD、本以外のグッズは買わない人間なんです)

それで久々にアニメの各話感想でも書いてみます。
先程見終わったばかりの第19話「釣れますか?」です。

前回ラストの「やっと矢野ちゃんキターーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」という興奮冷めやらぬ中、流石のナイスアドバイスから幕開けた19話。
サブタイの台詞も矢野ちゃんだし、久々に復帰した彼女をメインに据えた様で「ありがとうございます」という感じ。
若干平岡との関係に歯ぎしりしつつ(笑
くそう、どういう関係なんだ…。
そんな中いよいよあおいの将来についておぼろげに見えてきた、なんとも重要になりそうな回でした。

何故僕は仕事を題材にした作品を面白いと受け入れちゃってるんだろう?

大好きなアニメとはいえ。
そんな好きなアニメの制作現場を舞台にしているとはいえ。

何故僕は仕事を題材にした作品を面白いと受け入れちゃってるんだろう?

ふとそんな事を考えながら見ていた時期がありました。
1クール目。まだ3話とか4話くらいの頃だったと思います。

考えを巡らし、何度か見返して、すると、やっぱり楽しそうにしてるからだという事に気づきました。
特に主役であるあおいが本当に楽しそうに仕事に取り組んでいる。
楽しむというより「活き活きしている」とした方が正しいかな。
取り分け第3話が良かったんですよ。

あおいの百面相が、何とも愛らしくて。

小原さんの原画を見て、「可愛いなー」と見惚れている顔。
本田さんに追い込まれて、テンパってる時の表情の変化。(下の画像はその時の表情の一部。この回一番のお気に入りの表情)
送られてきた原画が足りなくて、配達のお兄さんに泣きそうな表情で縋りついた時。
木佐が電話に出てくれなくて、今にも頭を掻き毟りそうな仕草で苛立つ顔。

どれもこれも一般的に言う「可愛い表情」じゃない。(最初の原画に見惚れてる顔は素直に可愛いと言える表情ですが、それ以外は)
「萌え」という言葉で現されるような表情じゃないんですけれど、僕にはどれもこれもあおいというキャラを輝かせてくれる最高の表情に見えたんです。
正直前期も今期も一番カワイイキャラだと思うもの。

この19話での梅干し食べた時の表情もそうだし、11話とかもそう。
苦手な面接官(だった社長)に声を掛けられて、車内で1人テンパる姿とか。
もう表情も挙動も可愛すぎて何度も繰り返す見返しちゃいました。
そうそう、久乃木ちゃんも最近お気に入り。
17話での歯ブラシの作画について聞きに来たシーンも何度も何度も繰り返し見ちゃうほど、表情が豊かで楽しい。

僕は男なので、ついつい女の子ばかりに目が行っちゃうんですが、男キャラだって負けてない。
本田さんしかり、タローしかり、木下監督しかり。
皆表情豊かで喜怒哀楽をこれでもかと顔に出してる。
アニメだから誇張した感情表現になるのは当然なのでしょうけれど、それにしても皆表情が豊か。

確かBD1巻のコメンタリーだったと思うのですが、今作は水島監督の演出方針として「萌えっぽくしない」というのがあると知りました。
あおい役の木村さんもレコーディング時(オーディション時だったかな?)「萌え声を作らないで演じて欲しい」と指示されているとか。
だからなんでしょう。
萌え顔とでも言うのかな。
多くの人が「可愛い」と思える表情って少ない気がします。
「可愛い顔」ばかり描かなくて良いからなのか、その分表情の振り幅が大きいんですよね。
所謂「萌えアニメ」では見かけない様な顔を平気でするんですもの。
これもまた表情が豊かになっている要因だと考え、コメンタリーを聞いて妙に納得してしまったんです。

ちょいと話が逸れましたが、キャラの表情が豊かだからこそ、まるで実際に生きてるかのように思えてくる訳です。
あおいが活き活きとして見えてくる。

正直滅茶苦茶大変な日々を送ってる筈なんですよ。
それこそ笑えない毎日を。
てっぺん(午前0時)回っても、当たり前の様な顔して皆社内に居ますからね。
どうもムサニは出社時間が遅い訳でも無いのに…です。
朝から深夜遅くまで居る。
泊まり込んでいるスタッフだって平気で居る。
過酷な仕事には違いない。

変な話原作サイドの事情で、大きく出戻りを余儀なくされていたり、こういう事も決して絵空事ではないんでしょう。
この辺は元プログラマーとしては、「途中で平気な顔して仕様変更を強要してくる"お客様"」を思い出して、決して笑えないんですけれどもねw

兎も角、楽ではない。
どちらかといえば、間違いなく過酷なお仕事に就いている。
それでも、あおい達は前を向いて、時には挫けそうになりつつも、楽しそうに仕事に取り組んでいる。
活き活きと生きているように映るんです。

「えくそだすっ!」の最終回を上げた時の喜び。
「第三飛行少女隊」のPVを作り上げた時。

皆で喜びを分かち合い、苦しかった日々を労う。
そして、自分達で作り上げたアニメーションを見て、笑顔になる。
テレビの前でそんな彼女達を見つつ「あ〜楽しそうだな〜」って気分になってくるんです。

キャラが活き活きとして、仕事に前向きに取り組んでるから。
僕はこのアニメが大好きなんだなと考えたんです。

さてさて、仕事を楽しく続けるとはいっても、そんな上っ面だけの言葉で続けられるほど仕事は楽しくありません。
基本どんな仕事だって辛い。
逃げ出したいし、投げ出したい。

けれど、多くの人がそうしないのは、続けなくてはならない理由があるからですよね。
では、あおい達が続けてる理由って何だろう?と。

なりたい自分。
やりたい事。

夢と将来。

高いモチベーションを持っているからですよね。

あおいのモチベーションと作品のテーマ

元・上山高校アニメーション同好会の5人を取り上げてみましょう。

絵麻はアニメーターになること。
夢を叶えてムサニで頑張ってるけれど、スランプに陥り一時は挫折しかけました。
周りに支えられ立ち直ってからは、久乃木ちゃんという妹分も得て、アニメーターとして成長してる姿が描かれています。
作画監督、キャラクターデザインと次第にステップアップしていくのかなと。

しずかは声優として自立すること。
まだまだオーディションに落ちてばかりだけれど、どんな仕事でも将来に繋がるかもしれないと切り替えて、毎日を懸命に生きている。
お願いだから最終回までに彼女を一声優として自立させてあげて欲しいです。

美沙は3Dクリエイター。
高校時代からアニメーター志望だったものの、絵麻の絵を見て進路を変更。
(この辺の下りはコミカライズ「上山高校アニメーション同好会」で描かれております)
タイヤばっか作らされていた事に悩み最初の会社を退社して、移籍。
憧れの3Dアニメを作れる様なクリエイターになるべく試行錯誤をしつつ頑張っています。

みどりは脚本家。
大学に通いつつ、現在はムサニで制作設定のアルバイトに励んでいる。
好奇心旺盛な性格が今のバイトに漕ぎ付けた最大の理由かもしれませんね。
脚本家になる方法が分からないと言っていましたが、ちゃんと脚本家へのレールに乗って頑張っている。

この4人は皆なりたい夢があって、けれど、そのビジョンが明確ではないから悩んで苦しんだりもしている。
美沙は分かり易く悩んでましたよね。
元々の夢であるアニメーターを早々に諦めている分、そういうポジションに置きやすいのかもしれませんね。

とはいえ、4人ともしっかりとした将来の希望を持っている。
強いモチベーションがあるから仕事を頑張れているんだという事が理解出来ます。
そんな中、あおいだけは将来自分がどうなりたいのか分からないでいます。
第10話でも「追われるだけの毎日を送っている」事を自覚し、将来どうしたいんだろうと述懐していました。
僕の好きなFIELD OF VIEWの「Believe myself」という歌に、このような詞があります。

追われるだけの毎日が続いている
食べる為だけに働いても虚しいだけ

まさにこの歌詞のような日々を送っているあおい。
彼女はどうして楽しく(僕から見てそう見える)仕事を出来ているんでしょう…。

第19話で、漸くその答えが出て来たのかなって。

丸川社長が言います。

「ただ我武者羅にひたすら前に進んでた。
やりたいことをやり続けていた。
そして、気が付くとこの歳になってた。
それだけさ」

大倉さんも言います。

「(40年間)目の前の面白そうな事、必死にやってただけだよ」
(中略)
「俺さ。自分の進む先が最初から見えてた訳じゃないんだ。気が付くと今ここにいる。それだけ」

社長から「今はどう思う」と問われたあおいは素直に言います。

「私、楽しいです」

と。

将来どうなりたいのか見えてないし、分からない。
仕事に追われるだけの毎日は変わらない。
目の前のトラブルだけの対処に奔放して、面白いアニメを作ろうとしてない気がする。

でも「食べる為だけ」に働いている訳では無いから「虚しい」事は無い。

今までのあおいの仕事が肯定されてるんですよね。
人は将来が見えなくて不安になりますし、あおいもそうでした。
けれど、将来が見えなくても不安なんて無いんだよと。
「今を精一杯頑張って・楽しく生きてれば大丈夫だよ」という勇気が出るメッセージにも思えてきます。

今の仕事が楽しかったから、なんとなく続けていたら、気づいたら40年経ってもこの業界に身を置いている。
大倉さんのようなそういう人生もアリなんだなって。

あおいは目の前のアニメーションを面白くすることを。
面白いアニメーションを作り続けることをモチベーションにして、仕事を楽しんでいる。
ここまでのお話でいっぱい、あおいが楽しそうにしてる顔を見て来ましたから凄い伝わってきます。
出来上がった「えくそだすっ!」や「第三飛行少女隊」を見て、達成感のある喜びを爆発させていましたから。
この答えにはとても納得出来るんです。

あおいの動機とでもいうのかな。
仕事を何故続けられるのかという問に対する答え。
そして、将来に対する不安まで払拭していた。
そういう大事な部分が語られていた大切な回だったんだと僕は思います。

まとめ

BD1巻からP.A.WORKSの堀川社長のインタビューを抜粋。

実は全体のテーマの答えというのはきちんと決めていないんです。
(中略)
「この作品を通して最終話までに答えに行きつければいいんだ」という考え方なんです。
『SHIROBAKO』なら「なぜこの人たちはこんなに大変な思いをしながら、アニメーションを作り続けているんだろうか」というのがテーマなんです。

もう1つテーマがあると社長は語られていますが、一先ず19話にして作品のテーマの答えが出て来たのかなと。

矢野ちゃんと平岡の野郎が昔付き合っていたのかばかりに注目しがちですが、滅茶苦茶重要なメッセージが込められていた大事なお話だったんじゃないかな。