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「ハナヤマタ」原作・アニメ演出比較(1) なるの心境を強調していた小さな改変

この記事は

「ハナヤマタ」考察記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

TVアニメ「ハナヤマタ」。
今期の中では「ばからもん」と並んで個人的お気にのアニメです。
今回は、このアニメを取り上げて、原作とアニメの比較記事を書いてみます。
というのも、原作を全巻大人買い(と言う程巻数多く無かったですが)したからです。

ハナヤマタ (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

ハナヤマタ (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

第1回目では、主人公なるとハナの邂逅シーンをクローズアップして考察。
記事名に「(1)」と入れましたが、続く保証はありません(笑
悪しからず。

「なるの心の動き」に着目

「どこにでも居そうな普通の子」と自虐する女子中学生・関谷なる。
原作第1話〜第4話を描いていたアニメ版第1話では、彼女が勇気を振り絞って一歩を踏み出す事が第1話の大きな見所となっておりました。
物語は、このなるの心境が大切な要素になってくるので、原作とアニメの違いを浮き彫りにする為にもここに踏み込んでみます。

古今東西、昔も今も思春期の悩みの1つと言えば、将来の事ではないでしょうか。
将来何がしたいのか。
何になりたいのか。
明確なビジョンを持って、それに向かって努力してる人は、やっぱり輝いて見えます。
なるの周りでは、そこまで大層な夢に向かって邁進している子は出て来てません(西御門多美がそういう子かもしれませんが、2話現在描写不足なので割愛)けれど、「今やりたい事を精一杯やる輝いた子」として"ハナ"や"ヤヤ"が出て来ていました。

なるは、そういう「輝いている子」に憧れを持つ、けれども、勇気が出せずに今までと変わらずに毎日をなんとなしに過ごしている少女。
この辺りの事は、中学入学当初に文芸部に入ろうと試みただけで終わってしまったという回想部分で十二分に伝わってきました。

原作もアニメも、なるが勇気を出してハナの誘いを受けるまでの「なるの心の動き」が丹念に描かれていて、大きな違いは殆どありませんでした。
唯一大きな違いと言えば、アニメAパートにあったヤヤのバンドシーンを追加した点でしょうか。
ここはアニメオリジナルパートだったようです。
原作には「オーディションに近々参加する」という情報があるだけで、なるがヤヤ達バンドの演奏を聴くというシチュエーションはありません。
この追加によって、より鮮明に「輝いてるヤヤ」と「ヤヤとは違うなる」の対比が色濃くなっていたかなと思います。
何かに打ち込んで輝いてる子になりたいという羨望を持つなるの気持ちが強調されていたかなと。


で、もう1つ。
些細な。
けれど、とっても大きな意味を持つ変更がアニメではありました。
原作にはあったとあるシーンが省略されていたんですよね。

なるとハナの再会は偶然か、必然か、それが問題だ

原作から画像を拝借させて頂きましょう。
「物語のヒロインのような不思議な出会い」を求めていたなるが、夜道で出会ったのがハナ。
ハナの美しさと幻想さに見惚れたなるは、ついついハナを「妖精さん」と呼んでしまい、驚いたハナは逃走。
「違う世界」に行ってみたいなるは、ハナを追いかけてしまう。
お話の流れ的にはこんな感じ。
では、3点ほど画像を拝借します。

【画像1】ハナを大声で呼び止めるなる

【画像2】なるの「連れてって」の言葉に応えるハナ

【画像3】一緒に踊るも、やっぱり出来ないと帰ろうとするなるに向けてハナが渾身の一言

原作もアニメも基本的な流れは同じと書きました。
このシーンも同様であり、アニメでは上記画像の順番通りの流れ。
この後、ハナの「迎えに行くから」の言葉通り2人は学校で再会する訳ですけれど、この再会を視聴者はどのように捉えられるでしょうか。

頭を働かせれば
「転校先の制服を着たなるを見て、学校で出会えると踏んだハナが、核心を持って再会の約束をした」
と推理出来るかもしれません。
けれど、画面の・台詞の情報だけを頼りにすれば、2人の出会いは「偶然」に映るのではないでしょうか。

原作ではちょっと違います。
2人の出会いは必然として描かれ、上にも書いた
「転校先の制服を着たなるを見て、学校で出会えると踏んだハナが、核心を持って再会の約束をした」
が、事実として読者に分かるようになっていました。

【画像4】なるの制服に気づいたハナ

画像4は画像1と2の間にあります。
ハナは、なるが「自分の転校先の学生」だと理解したから誘ったという解釈も出来ます。
故に学校での再会は必然であったと分かるし、ハナの誘いの言葉も確信を持ったものであったと見做せます。

原作とアニメでのこの違いはどのような意味を持つのでしょう。
個人的な解釈を。

アニメでは「偶然の積み重ね」を作ることで、より「物語のヒロインのような不思議な出会い」というなるの憧れが強調されていたのかなと。

先にも書きましたが、原作の学校での再会は必然の出来事でした。
夜道での邂逅こそ偶然ですけれど、再会はハナがなるの通う学校を知っていた為に必然となった。
(クラスメイトになった事自体は原作もアニメも偶然。この事は問題では無いので無視します)
アニメではどうか。
画像4のような気づきのシーンが無かった為、画面上の情報だけを汲み取れば再会もまた偶然でした。

偶然が重なれば、それはもう運命です。
ハナのよさこいの誘いに乗るのは「「物語のヒロイン」としては自然の流れだし、2度も偶然が起こった事で「不思議な出会い」がより強調されていました。


好意的な解釈と云われてしまうとそれまでですが、僕はこれらの変更によってより「なるの心境の変化」というドラマが映えるような演出になったのかなと感じました。

終わりに

後発メディアのメリットとしては、「原作の先の展開を知っている事」にあります。
物語を再構築して見せる事が出来るという点ですね。

「ハナヤマタ」では、西御門多美と常盤真智の登場。
メインキャラである2人は、原作1巻時点未登場でした。
なるがお使いに出された西御門家ですが、原作では西御門家でのシーンはありませんでした。
つまり、多美とのシーンはアニメオリジナル。
当然学校でハナに追いかけまわされている時に、その場を多美と真智に見られるというのもオリジナルシーン。
1話でメインキャラ全員の顔見せがされていたのは、「ハナヤマタ初心者」の僕には優しい設計でした。

この先もまだまだ違いが出てきそうですので、違いに面白さが見出せたらまた書いてみます。