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推理もアクションも異次元の面白さ!! 「名探偵コナン 異次元の狙撃手」 感想

この記事は

「名探偵コナン 異次元の狙撃手」の感想記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

見て来た!!!

朝一で鑑賞して参りました映画最新作!!!!!!!!!
やっぱ凄いわこのシリーズ。
感想です。

作品としてのバランス

18作も作られていると、作品のバランスってどちらかの要素に寄りがちになると思うんです。
「どちらかの要素」というのは、「推理」と「アクション」ですね。
どちらも兼ね備えているのが、本作が劇場用として長く親しまれている要因の一つに違いなくて、然しながら作品によってその比重は意図的に変えてあります。
極端に…例えば推理9に対してアクション1というような事は無いですが、7:3あるいは6:4くらいのバランスを維持して作られているのかなと。
だから、毎作好みが分かれてくる訳です。

推理重視のファンは、推理に重きが置かれている作品を賞賛し。
アクションを見たいんだというファンは、派手なアクション満載の作品を推す。
ラブコメ要素は「名探偵コナン」の根底としてしっかりと根付いているから、ラブコメ度合いで判断というよりかは、「推理」と「アクション」のバランスが重要になってくるのではないかというのが僕の見解。

ネタバレ防止策のつまらない前口上はこのくらいにしまして、本作の感想。
ズバリ言えば、推理派・アクション派、どちらも大満足するに違いない大傑作というのが総括です。
ここまで両方のバランスを水平に保ちつつも、高いレベルで融合させた作品は近年に無かったんじゃないか。
18作目にしてこんな凄い作品を世に出せる作品としての懐の深さとスタッフ陣の技量には度肝を抜かれました。
という事で、推理とアクション。
それぞれの視点から感想を。

推理パート

今回のテーマは狙撃でした。
シリーズ初めてスナイパーによる連続狙撃殺人事件を扱っているんです。

狙撃というのは、いつ・どこから狙われるのか分からない類の事件です。
他の殺害方法はいずれにしろターゲットの身辺をガードしさえすれば大概防げますよね。
銃殺にしても、通常の拳銃ならば近・中距離からの狙撃に注意を払えばよくて、SPなどでターゲットの周りを固めたり周囲の警戒を強めれば済む。

狙撃は主に長距離。
ポイントは絞られるので阻止しやすいのかもしれませんけれど、それは狙撃される場所が特定出来ればの話。
スナイパーがどの場所を狙っているのかが分からなければ、阻止はほぼ不可能なんではないかな。
実際にその様子も作中で描かれていましたしね。
ターゲットの1人が狙撃場所から狙撃ポイントを特定。
更にその狙撃ポイントを狙撃するのに適した場所を見つけるも、それすら真犯人の掌の上でしたというシーンがありましたし。

要するに窓の無い場所にターゲットを軟禁する位しか方法は無くて…。
何が言いたいのかと言えば、ターゲットすら確定出来なければ、手の打ちようが無い事件という事。
だから、緊張感をピーンと張り詰めたまま物語を進行出来るんですよ。

今作も「犯人に狙われるかもしれない人物」の特定には至っていて、居場所の確認出来る人間は要警護対象として警察が守っていました。
しかし、唯一警察も居場所を割り出せてない人物が殺され、最重要容疑者まで殺されてしまうと、そりゃ後手後手に回るしかなくなります。
警護の手も自然と緩まってしまう。
その隙を突かれて、真犯人は次々とターゲットを呼び出して殺すという…。
犯人の狡猾さがしっかりと描かれた上で、破綻のないプロット。

物語の見せ方と狙撃事件特有の緊張感が上手い具合に絡みあっていて、故に中だるみを感じさせずに「推理パート」を見られました。
そうそう。
謎の見せ方も秀逸です。

今作もトリックがある訳ではないんですが、魅力ある謎がありました。
現場に置かれたダイスの意味ですね。
このダイスは何を意味するのか?
警察の推理を嘲笑うかの如く予想を外す展開のさせ方もさることながら、コメディ部分を利用した推理も良いです。
探偵団が何気なく作っていたあるモノが終盤でしっかりと活きてくるのは、実に古内さんらしい脚本です。
立体物をあのように見ないと気付けないという一種の必然性とでも言うのでしょうか。
こういう部分を僕は大好きなんですよ。
何気ない描写がクライマックスの伏線になっているというのは本当に見てて堪りません。
魅力ある謎を引き立たせる謎解きの見せ方でした。

もう1つ。
特異点は「犯人との対決」が無い事でしょうか。
探偵が真犯人と相対し、滔々と推理を語って聞かせるという意味での対決がありませんでした。
所謂推理ショーですね。これが無かった。
探偵役であるコナン君が今回なんと真犯人とは遥か離れた位置に居ましたから。

不思議なもので、推理ショーが無いだけで事件が解かれたという感覚がイマイチ掴めない気分なんですけれど、でもこれはこれでアリですね。
アクションパートにも繋がる部分なんですけれど、それは後述するとして、真犯人の正体が途中で分かっちゃうから…ですね。
分かっちゃうというのは、僕が論理的に推理したから…という訳ではありません。
誰もがボーっと見ていても、コナンら作中の誰よりも早く分かってしまう。
堂々と犯人の顔が描かれているのでは無いんですけれど、声(+演技力)で…ね。

最後のターゲットに真犯人から呼び出しの電話が掛かってくるシーン。
思わず宇宙から掛けてきてるのかなと思いましたもの。
犯人の正体も動機も察してしまうから、わざわざ推理ショーを開く程の事も無いという理由ですね。

全編にわたって緊張感溢れる推理シーン。
緊張が緩みそうな度に狙撃事件が次々と発生する等シナリオとしての工夫も見られて、謎の魅力も高い。
真犯人の狡猾さ・頭の良さも描かれていて、敵としての格も高く、非常に見応えがありました。

アクションパート

もうね、コナン君の超人的な身体能力をどうこう言うのは野暮ってものですよ。
これは全力で楽しまなきゃ。

先ずはオープニングあけのスケボーシーンで、大興奮させてくれます。
静野監督はアクションが得意とよく聞きますけれど、もうね、凄いです。
大画面を活かした迫力があって疾走感のある映像で、これだけで今作は凄いと思えるほど。
3Dの車も年々手書きの映像に溶け込んでいて、だから車の大クラッシュも違和感を覚えること無く見れた点も個人的には良かった部分。
コナンのスケボーアクションは必見の価値アリです。

そしてクライマックス。
コナンが犯人と遠い位置に居なければならない理由も面白い。
テーマ的な意味合いとしたら、やはり狙撃ですね。
スナイパーにはスナイパーをという事で、もう書いちゃいますけれど赤井を活躍させる為ですよ。

コナンが現場に居たんでは、コナンが犯人を捕まえてしまい、赤井の見せ場が作りづらくなります。
これでも問題は無いんですけれど、コナンをどうにかして窮地に追い込まないといけないんですよね。
小学生のコナンを追いつめる理由作りは簡単ですし、過去(特に初期の頃は多かった)に何度もあったシチュエーション。
ですが新鮮味には欠けますし、超人的な身体能力を披露している近年では、なかなかどうして「コナンの"格"を落とすことなく追い込む」って難しい気がします。
こういった背景があったのかどうかは定かではないですし、多分僕の勝手な考え過ぎですけれど、赤井のテーマに絡めたアクションを魅せる為にコナンと犯人を遠ざけたのかなと。
推理ショーが無い理由の1つではないかと勝手に考えています。

ただこのままだとコナンの見せ場が無くなっちゃうんですよね。
推理ショーは無いわ、真犯人を頭と探偵道具を駆使して捕まえるアクションが無いわ…ですから。
赤井が良いとこ全て持っていくだと、過程がどんなに良くても締まりが悪い。

大丈夫でした。
しっかりと全てコナンが持って行きました。
ここも推理パートと一緒でコメディシーンを絡めてくるところが心憎い。
コナン自身が打ち上げの筒と化し、重力とベルトの応力を利用した大ジャンプからの強烈な一撃。
テーマ曲まで流すわ、花火を弾丸に見立てた描き方をするわ。
ここで興奮しなければどこでするのよと言わんばかりの演出で、赤井をサポート。
直接犯人を仕留めた訳ではないんですけれど、このコナンのアクションが無ければ事件が解決しなかったというシナリオ運びとリンクしていて、今作一番の見せ場をコナンに与えられていたなと。

んで、これは言及しなければなりません。
真犯人の凄さを。
この犯人だからこそ、今回のような推理とアクションの融合が出来ていたんですよね。

真犯人が凄い

そんじょそこらの一般人とは違い、鍛え上げられた肉体と射撃技術の確かな裏付け。

真犯人としてコナンや赤井と渡り合えるアクションを演じれたのは、こういうドラマがちゃんと描かれていたからですね。
説得力の高さが違いました。

パトカーを振り切るチェイサーもそうだし。
手榴弾なんて物騒なものを使える(持っている)理由もそうだし。
クライマックスでのベルツリータワーからの逃走方法もそう。
最後のやられ方まで含めて、1本しっかりと筋が通っていました。

頭の良さも特筆ものです。
相手の裏をかくやり口は、これも彼を支持していた「とある男」の助言もあるんでしょうけれど、戦場を生き抜いた経験も活きていたのかなと。
警察を、FBIを、コナンですら翻弄した犯行の運びっぷりは、劇場版の犯人として…コナンの敵として映えていました。

真犯人のレベルが高い事も、今作が面白かった理由の1つですね。

まとめ

毎回同じ事書いていて説得力無いというか…。
なんでも面白いんだと思われても仕方ないですけれど。
今回マジで最高でした。
前作までも面白かったけれど、今回は軽く凌駕していたなと。

冒頭から事件に入る為、コメディ(笑い)要素は薄かったですが、濃密な時間を堪能させて頂きました。
推理もアクションも大満足できる傑作に違いないと僕は思いました。