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「ULTRAMAN」 遠藤刑事の重要性

この記事は

「ULTRAMAN」の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

下口×清水コンビ(敬称略)による「ULTRAMAN」。

ULTRAMAN 1 (ヒーローズコミックス)

ULTRAMAN 1 (ヒーローズコミックス)

今までにない斬新なウルトラマン像を見せてくれてますね。
このマンガについて〜。

ウルトラマンの特徴

等身大のスーツを着たウルトラマンというのは、是非が分かれる部分なんじゃないかな。
この手の漫画では「従来の原作ファン」を取り込む事って想定されて然るべきことだし、そんなファンから一斉にそっぽを向かれる危険性を大いに孕んでいる点に思えます。
やっぱりイメージ的にウルトラマンと言えば巨大な光の巨人ですよね。

ちょっと話を逸らしますが、特撮界の永遠のライバルである「仮面ライダー」。
その企画経緯には先行していた「ウルトラマン」を意識していたかのようなものがありました。
巨大ヒーローである「ウルトラマン」と差別化を図るべく、等身大を重視し企画されたのが「仮面ライダー」であると聞いたことがあります。*1
確か「アギト」放送時だったと思うんですが、当時のTVインタビューの中でライダー俳優3人が「どんなライダーになりたいか」的な事を訊かれ友井雄亮さん(仮面ライダーギルス役)だったと記憶しているのですが…。
要さん(仮面ライダーG3役)の方だったかな‥。
ちょっとどちらだったか記憶が定かではありませんが「巨大化したい」と答えた所、他の2人から「それ違うヒーローだから」とツッコまれていたのを覚えております。

デカいかどうかはそれ程僕らに染みついた2大ヒーローの違いなんですよね。
でも、これは「必ずしもそうである必要性」は無い事。
つまりは
「仮面ライダーは等身大ヒーローで無ければならない」
「ウルトラマンは巨大ヒーローである必要性を満たさねばならない」
というのは、僕等が勝手に押し付けてしまっている「縛り」でしかありません。
事実「仮面ライダーJ」にて「巨大化も出来る仮面ライダー」は公式で作られております。

当たり前の事ですけれど、ついつい忘れがちになる事なんですよね。
少なくとも僕自身にとっては。
此処は大事だよな〜と。
大事なんだけれど、どうしても簡単に捨てきれない事でもあるんだよな〜とw
スーツ着て大きくない人間がウルトラマンを名乗る事に抵抗感を持つファンは決して少なくないんじゃないかな。

遠藤刑事の重要性

力を持った者が苦悩するというドラマは、特撮に限らず多くの作品に流れている要素。
主人公である進次郎も「異星人をも斃せる力」に苦悩し、ウルトラマンになる期待と策謀に晒されながら成長して行く姿を描いている最中です。
この一連のドラマが、凄く「ファンの抵抗感」とマッチしてるんですよね。

最初から進次郎が意気揚々とウルトラマンを名乗って、派手な立ち回りをして、見え張ってたら。
ただでさえ異色のスタイルをしてるのに、それを初めから肯定してたらファン心理の火に油を注ぐというか。
良く想わないファンにとっては、否定から入って欲しいというのは、あるんじゃないかな。

で、そういうファンの声を代弁してるのが刑事の遠藤。
ウルトラマンが大好きで、娘のレナにまで語って聞かせていた位のファン。
そんな遠藤が進次郎を「ウルトラマンなどでは無い」と完全否定します。
解体したはずの科特隊に仕事を邪魔され、そんな科特隊のマークを付けたスーツを着た進次郎をウルトラマンだとは認めたくないという感情論が先立っているのか。
それとも、彼なりの「ウルトラマン像」があり、それと照らし合わせて違和感しかないから否定しているのか。
4巻収録分では本意までは分かってませんけれど、進次郎を真っ向から否定する存在が作中に居るだけで、グッと否定派も読み易くなってる気がしてなりません。

ただの脇役とは言えない程濃密に大事に描かれている感のある遠藤。
彼の存在というのは、今作の序盤に於いてはとっても重要なのかもしれませんね。

ところで僕は、この漫画の肯定派。
だって面白いじゃないですか。
僕にも違和感はあったのは事実なんですけれどね。
でも、それも最初だけ。1話を読んでる時点で氷解しちゃいました。
多分「HYBRID INSECTOR」を読んでいたからというのが大きい。
「仮面ライダー」を題材にした同作者が自分達のHPで連載していた同人漫画。
今は読めませんけれど、まだ読めていた時期にこの漫画を読んでました。

正直言って好きじゃ無かったんですw
あまりにも僕の中の「ライダー像」とかけ離れていたから。
人類の敵として立ちはだかる7人ライダーなんて見たくないし、受け入れがたかった。
ただ、話が進むうちに徐々に「僕のライダー像」…人類の自由を守る自然の使者としての側面が浮かび上がって来て、「あれ?面白いかも」と思い始めた頃に連載終了。
ようは「一見固定概念をぶち壊してるようで、大事な部分はしっかりと継承してくれる」という信頼感が出来たんですよね。
この方達は間違いなく自分の好きなヒーローを同じような理由から好きなんだなと伝わってくるというか。
「仮面ライダー」が好きだと分かったし、だから「ウルトラマン」も原典に愛情を持って描かれている筈という信頼。

原典を好きな人が愛情込めて描かれている作品は、信じて良いと思うんです。
島本和彦先生にしろ村枝賢一先生にしろ、熱い血肉を持ったヒーロー達の物語を描かれているように、下口×清水両先生も「ウルトラマン」愛に溢れている筈だから。

終わりに

偉そうな物言いになってしまい申し訳ありませんが、石森プロにしても円谷プロにしても長くシリーズを発表し続けられている背景には「固定概念を打ち破るチャレンジ精神」があるからだと思ってます。
「ウルトラ怪獣擬人化計画」とか「ウルトラマン妹」とか「セブンきゅ〜ぶ」とか。
これらは本編の「ウルトラマン」シリーズでは無いけれど、その派生プロジェクトとして手広く手がけられています。
「光の巨人の活躍を描いた特撮シリーズ」という概念にだけ固執していたら、決して生まれなかったであろう企画の数々を発表したり公認したりしていますよね。
今作にしても同じ。
円谷プロが否定派と同じ立場にいたら、絶対に生まれなかった漫画。
誰よりも作品を愛して、誰よりも作品を知ってる原作側が認めたものを否定しちゃうのは勿体ない。
そう考えつつ、これからドンドン面白くなっていくであろう今作も楽しんでいきたいです。

*1:石森プロが等身大である点に拘っていたようです