Mangaism

アニメ、漫画の感想や考察を書いてます

新古書店と作家の間に燻る問題について今更の意見

この記事は

新古書店と作家の間に燻る問題に関する記事です。
久々に時間を掛けて書いた「これはヒドイ」駄文(笑

初めに

今更ながら、ブックオフ等新古書店と作家陣の間に横たわる問題について一消費者の観点で考えてみました。
決して他人事では無いですので。
また、このブログの方針上漫画に限定してのお話とさせて頂きます。

最初にお断りしておきますが、僕は著作権法など関係するあらゆる法律に関する知識を持ち合わせておりません。
なので、法律関連の部分は全て調べたことをそのまま書き写しているレベルです。
咀嚼し、自らの知識とし、己の言葉で書いている訳では無い事を先に提示させて頂きます。

「問題」を簡潔に

どういう問題なのかを最初に纏めておきますね。

作家さんは原稿料と印税で生活しています。
印税には2種類あり、書籍が印刷された時点で発生する「発行印税」と実際に販売された時点で発生する「売上印税」があります。
前者は、印刷されるだけで印税が発生するので、出版社にとっては不利です。
後者は、発行部数に関係なく実売部数にしか印税が発生しないので、こちらは「発行印税」で暮らしていた作家さんにしてみれば、収入が確実に減るんですから不利です。
(発行部数>実売部数は言うまでも無いので)
この両者が共存する事は当然なくて、最近では「発行印税」から「売上印税」にシフトしつつあるという記述もみられましたが、ソースが見当たらなかったので不明です。

原稿料はといえば、日本の漫画の多くは原則出版社が発行する雑誌で連載をしています。
その際に「ページ単位で支払われるお金」が発生し、このお金の事を指します。
雑誌に掲載された原稿が溜まると1冊の書籍(コミックス)に纏められますが、コミックス関連の原稿に関しては原稿料は発生しません。
特例はあるかもしれませんけれど、通常は何も支払われないようです。
なので、カバー描き下ろしや付録ページ、描き直しや描き下ろしまで含めて全て作家さんからのファンサービスですね。

この原稿料は、雀の涙ほどというのも良く見かけるお話。
なので、収入源の殆どが印税であることは事実だと結論付けます。
出版社と作家の間に交わされる契約によって印税率が決まり、「定価×発行部数(又は実売部数)×印税率」によって算出された金額が出版社から作家に支払われます。

つまり、新刊書店に出回って初めて作家は収入を得られるという訳です。

新古書店は「一度新刊書店で販売された書籍」を扱っている為、ここで売れた分に関して作家へのペイバックは当然発生しません。
古本が何千、何万と売れても、一銭もその書籍を描いた人には入らない訳です。
消費者としては安い方に飛びつくのは火を見るよりも明らかであるからして、

新古書店が台頭する⇒新刊が売れない⇒収入が入らない

となり、作家業をやっていけなくなるという論法で、問題定義をしています。
新古書店側に「著作権」を持ち出し、著作権料を支払うようにしろという訴えですね。

「著作権」は、

自らの思想・感情を創作的に表現した著作物を排他的に支配する財産的な権利

であり、書籍にも当然適用されています。
書籍で言えば印税がこの中に入っているという解釈でいいのかな。
「著作権」という大きな枠組みの中に印税があり、書籍で言えばこれのみが著作権料にあたる。

長くなりましたが、このような経緯なはずですが、間違っていたら御免なさい。
細かい部分では全然違うかもしれない事も付け足しておきます。(言い訳多い)

三者の立場から見た「問題」

ブックオフが出て来る前から古本屋というものはあり、この問題はその頃から有ったんではないかと推測できますが、では、何故ここ10数年で急激に盛り上がってきたかと言えば、新古書店の台頭が目覚ましいからなんでしょうね。
作家が看過できないレベルにまで、新古書店が驚異的に成長してきたからこそ、大きな問題として上がってきたのではないか。
これ位の事は僕にだって推測できること。

ただ、一方的な立場にたって問題を取り上げても、正直意味がありません。
それぞれの立場から見てみないとですよね。
ちょいと古いようですが纏めて下さっているサイトさんがありましたので、一部引用と紹介をさせて頂きます。
ここでは敢えて元来の古書店の立場は無視させてもらいます。

「BOOKSぢゅくちょう」さんの個人サイト。
サイトオーナーさんは新刊書店に勤務されていたようですね。
このサイトからは「出版社・作家」と「新刊書店」の立場の意見を分けて引用します。
引用元記事:ブックオフに関する問題

●出版社・作家
 印税(著作権料)は書籍が売れることによって発生します。
 けれど、中古販売(2次販売)では印税(著作権料)が入って来ないのです(この辺「中古ゲーム訴訟」でも争点になっていました)。
 この問題はマンガ喫茶での「タダ読ませ」と並び、著作権の権益を損なうものとして危機感を持たれています。
 ちなみに、マンガ喫茶の経営者の中には仕入れを古書店で行なうという人も多い様ですが、こうなると印税は1銭も発生して無いんですよね…(「仕入れ値はできる限り安く」というのは商売の基本なんですけど)。

 また、最近増えているのが書店からの返品の本の中に「古本」が混じっているという問題。
 本来、返品は店で売れ残った商品をそのまま返す…はずなのに、明らかに読みこんだと思われるような本や、ひどいものになるとマンガ喫茶の店名印が入った本が返品されてくるそうです。
 本は再版制度というもののおかげで、定価販売を厳守するかわり、返品が認められています(その分原価率は非常に高い。70〜80%にもなる)。
 それを利用した悪質な手口で、先頃大手出版社が取次に注意を促すということもありました(うちの店にもお達しが回ってきた)。

新古書店のみならず漫画喫茶(インターネットカフェ)、図書館も含まれるようですけれど、出版社・作家としては「二次販売されても著作権料が入って来ない」事を問題視しているという事。
元記事は10年程前みたいですが、今も変わらずというのが現状です。

ところで、返本の中に明らかな古本が混じっていることがあったというのは驚き。
今では是正されている可能性が高そうですが、こちらの方が問題なんでは(汗

●新刊書店
 ブックオフが扱うのは「新しい」「きれい」な本です(その査定はかなり厳しいらしい)。
 そういう本が書店よりも安価な値段で売られているとなれば、当然客はそちらへ流れます。
 また、「本を売る」という行為が気軽なものとなった結果、万引きした本をそのまま古書店へ持ちこむという事例が急増しました。
 当然それら全てがブックオフだけの責任ではありませんし、怪しい客(新しい、同じ本を大量に持ちこむ客)からは1冊しか買取をしない(全部拒否しちゃうと客を疑っている…ということになっちゃうので。難しいね)等の対応もしているようですが、無視できない件数になりつつあるのもまた事実です。

 それと最近新聞で知ったのですが、ブックオフって図書券が使えるんですよね。
 本来図書券は日本図書普及(株)が管理する、全国の加盟書店で利用できるギフト券です。
 発行された図書券は日本図書普及(株)→取次(本の問屋)→書店→利用者→書店→取次→日本図書普及(株)という流れで流通していきます。
 さて、当然ながらブックオフは新刊書店ではないので、加盟店舗ではありません。
ですから店舗で利用された図書券は換金できないのです。
 では回収した図書券をどうやって換金しているのか。
 答えは「金券ショップ等の買い取り業者に流すことによって換金を行なう」です。
 そうして流された図書券は再び売買され、市場に流通することになります。
 基本的に図書券は使用後領収印を押し、再利用できないようにします。
 それを金券ショップや古書店の流通に乗せられてしまうと何度でも利用できることになり、新刊書店で図書券が売れない、利用されないという事態が発生するのです。
 現在はまだわずかな割合ですが、このまま事態が推移すれば大きな問題になるのは間違いないでしょう。

新刊書店の立場としては、安くて綺麗な書籍が売られている方に客を取られるので、売上が減っちゃうよねという悩み。
再販制度がある為自由価格での売買が禁じられている故に、こういう構図が出来上がっているというもの。
稀に定価以下で販売されている事もありますが、あれらは「買取商品」なんでしょうね。
書店側が出版社から書籍を買っている商品なので、売れ残ったら定価以下で販売出来る。
なので、一般の書籍は出版社から「借りている」と定義しても大きく外した解釈ではないのかもしれません。

補足となりますが、ブックオフによる図書券の使用は合法と2002年1月に判決が出ているようです。
同年12月には訴訟を起こした「日本図書普及」との間で和解が成立した模様。


最後に、新古書店側の立場。
これについては、問題となっている論点を抽出します。

1.著作権は有効か否か
2.著作権料は幾らに設定するべきか

1.に関しては、答えが簡単に出てます。
著作権の中に譲渡権というものがあり、これは「適法に譲渡された物に関しては失われる」と定められているようです。
(参考:著作権テキスト
「適法に譲渡された物」とは、新刊書店にて販売された商品もあたりますので、二次販売は合法という訳です。
リサイクル品として、古書店で売買を行っても問題が無いという事。
従って、作者さん達が唱えている「新古書店での販売分にも著作権料を支払って欲しい」というのは、法律上不可能だという事になります。
新古書店で扱っている商品は、著作権自体が消失しているので。

2は1がクリアされて初めて議題に上ることですが、仮に「著作権を根拠とせずに新古書店側から作家側に一定の金銭を譲渡する」となった場合、幾らが適切なんでしょうね。
2008年にはブックオフ側から

「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」「日本文芸家協会」などの著作者団体に対して、1億円の支払いを申し入れた

ようですが、これについても「額の根拠が不明」として実際に譲渡される事は無かったようです。
「ラブひな」、「魔法先生ネギま!」でお馴染みの赤松先生がTwitterで顛末を報告されていました。

簡単に答えの出せる問題では無い事が窺えます。


なんにしても現状は新古書店側としては、作家側からの意見は「はい、そうですか」と受け入れる必要性が無さそうです。
それこそ法改正がされれば別ですが、恐らく書籍だけ特別視しての法改正というのはあり得ないでしょうね。

ただ、新古書店が価格競争で優位に立てているのは、再販制度があるからというのも忘れてはならないポイント。
もし再販制度が無く、書籍が全て買取商品になった場合、新刊書店でも自由価格が解禁となり、売れ残った書籍を定価以下で販売できることになる訳です。
価格の優位性が弱冠失われますよね。
流石にどんなに売れないからと云っても、ブックオフのように100円で売るという事はなかなか困難かと思いますけれど。

ぼくの かんがえた もんだいの かいけつさく

ここからは消費者視点(というか僕の個人的視点)で書いていきます。
一番我儘言い放題出来るポジションですねw

ところで僕は、コミックスは新刊でしか買わない方針です。
他人が読んだ本は嫌だからなのですが、それでも子供の頃は買っていました。
お金が無かったですし、当時は古本に対する抵抗感もありませんでしたので。
また、今でも泣く泣く愛読書を手放す事があり、その際は新古書店等に売ってしまいます。
今も昔も新古書店のお世話になっていて、故に新古書店を批判できるような立場に無いって事です。

なので、消費者としての新古書店のメリットは
1.安価で書籍を購入できる
2.読み終わった書籍を換金できる(少額ですけれど)
3.絶版・希少本を手に入れられる
の3点。

お金の無い人。
手元に書籍を置く習性が無い人。
古書でも気にしない人。
そういう人達にとっては必要な商売。

僕個人的には3つ目が重要。
絶版してしまった書籍は買う事もあります。
5年程前「ブックオフオンライン」で「ちょっとだけかえってきたDr.スランプ」を見つけた時は速攻で買いましたね。
あれは感動しました。

さて、新古書店のメリットとしてよく挙げられるのが「ココから作品を知ってもらう切欠にもなる」という点。
図書館にしろネットカフェにしろ同じことなのですけれど、「作者の利益にならない方法」で作品を読んで嵌り、新品を買い始める…
なんていうのは多くの方に経験がある事ではないでしょうか。
実際僕はあります。ネットカフェで読んで気に入って、新品を買い揃えた経験が。
また、新古書店で最初の数巻だけ買って、気に入ったので以降は新品購入に切り替えたケースとか。
だから、メリットと呼べちゃうかもしれない。

けれど、そう簡単な話では無いとも思うんです。
新品購入に至る前にネカフェ等で読んだ時点で満足しちゃうケースだってあるでしょうし、そもそも新古書店で一度購入した書籍を改めて新品で買い揃える事もそうそう多くないでしょう。
どちらのケースが多いのかなんて誰にも分からない事なので、何とも言えない部分なんですよね。
「作品を知ってもらえる機会が増えるんだから良いじゃん」とは一概には言えないかなと。

僕の個人的な意見としては、新古書店は必要であると思うんです。
ただ、1つ止めて貰いたい事もあります。
全体にではなく、あくまでも一部店舗に向けてなのですけれど。

立ち読みOKな環境は無くしてもらいたいというのが正直なトコです。
ブックオフなんて半分「古本を買う」というより「漫画図書館」・「便利な暇潰し場所」になっちゃってますからね。

本というのは中身を知ってもらって初めて購入に至るというのは分かります。
その通りでしょう。
けれど、あれはやり過ぎ。
いくら買取時に綺麗な状態でも、購入時に立ち読みのせいで痛んでしまっていたら意味が無い。
立ち読み客ばかり(座ってる人だって少なくない)の環境で目当ての本を探すのは至難の業です。
「古本購入してないお前が言うな」と言われればそれまでですけれど。
けれど、立ち読み客しか得をしない「立ち読み自由」は、規制を入れて欲しい。
完全に無くすのではなく、一部の本しか読めなくする。
例えば、コミックスだけ一部商品又は一部店舗を残し基本的に立ち読み出来なくする。
そうするだけで随分と変わってくる気がします。

次に作者側ですね。
僕等にとって一番ダメージでかいのが、作者さんに断筆されちゃう事。
心情的にも理解出来る部分が多いですし。
著作権どうこうではなくて、自分が大変な思いをして描いた作品が(作者にとっては)無償で売買されている現状は我慢ならなくなってもおかしくないと思うんです。

ただ、前述したように現状では不可能な事。
新古書店から売上の一部を還元する事も殆ど夢物語な気がします。

もしもやるならこんな感じになるのでしょうか。
・日本全国の新古書店にPOSレジを導入させ、販売データを管理してもらう。
・販売データから作者毎の「売上金」を集計し、作者へ渡す。
これだけで良いのかすら分かりませんが、まあ、考えるだけで相当大変ですよね。
出版社や新古書店側がこれを出来るかと言えば、出来ない事は無いかもですが、しない。
もしやったら、新古書店に並んでる全ての商品が、中古なのに新品とほぼ同じ(かそれ以上の)値段になっちゃっても不思議じゃない。
ブックオフレベルの会社ならばいざ知れず、小さなチェーン店では出来ないでしょうね。
そういう事業を一括して行う第三者機関(音楽の著作権を管理しているJASRACのような会社)を設置するという考えもあるかもですが、どうなんでしょう。
色々な意味で赤字になりそう。

そこで…ですよ。
煩雑にはなる気もしますが、現状2つの印税方式もごっちゃになってるっぽいので、あまり大きく変わらないんじゃないかなって事を…。

新古書店のメリットの1つである価格。
これがメリット足り得ているのは、新刊書店が定価厳守販売を強いられているから。
理由は再販制度があるから…というのは、引用させて頂いた部分にもありました。

そこで、この再販制度を弛めてみる事って出来ないのでしょうか。

先ず作家さんと出版社間の契約時に、印税のタイプを選んでもらう。
「発行印税」を選んだ場合、再販制度は継続。
「売上印税」を選んだ場合、再販制度から外れ、書店買取商品となる。

前者の場合は、従来通りですね。
但し定価で売るしかないので、二次販売での売上に関しては認めてしまう。

後者は、書店側で価格設定が自由になるので、一部の書籍については収入が見込めるかもしれません。
ただし、価格が自由になるという事は、「売上印税」は一定では無いって事になりますが。
今までより印税が減ってしまう可能性だって孕んでいるし、完全なる「新古書店での売上」のカバーにはなり得ない。
少しだけ新古書店への流通を無くせるかもしれない程度。

どちらにせよ新古書店への流通を妨げる事にはなりませんし、いくら自由になったからといっても古本と張り合う訳にもいかないので然程値段は変わらないかもですが。
再販制度は書店にとって都合の良い面もあるはずですので、撤廃はしない方が良いと思うんです。
この制度があるから、書店で本が売られている…という事もありそうですし。
(売れる見込みのない本を「購入」してまで仕入れたいと思う書店は少ないはずです)
が、作家の意志で弛める程度は出来た方が良いのではないかなとか。
何も知らない素人考えですけれども。

まとめ

新刊書店も新古書店も同じ土俵に上げれれば問題の半分くらいは解決出来る…のかしら。
分からない。
それは分からないけれど、解決出来る気が少しだけします。

新品書籍の自由価格化。
商品陳列方法の均等化。(新古書店での原則立ち読み禁止)

作家がいないと新刊書店が成り立たない。
新刊書店がないと新古書店も成り立たない。

新古書店に於ける立ち読みというのは企業努力というか、サービスの一環なのかもしれないし、そこにとやかく言われる筋合いはないかもしれない。
少なくとも僕のような人間から言われる筋合いは無いw
でも、そこはちょっとだけ我慢して頂いて。
結局ピラミッドの頂上に作家さんがいるのだから(その更に上に出版社が居るのかもですが)、気持ちよく執筆活動をして頂く環境が整えば良いなというのが僕の想い。

いや、最近出版社が電子書籍を前面に出して頑張っているのは、この問題が少なからずあるんじゃないかと疑ってるんですよね。
コピーは可能ですけれど、市場がある訳では無い。(違法コピーが出回るけれど、紙の本も海賊版があるので…。)
紙の本より安い値段で提供出来る。
スマホの普及、電子書籍リーダーの進歩が背景にあるのは間違いないですけれど、新古書店に対抗し得るコンテンツとして力入れてるのかなと。

最後に。
「新古書店に本が流れるのは、側に置いておきたいと思える本を作家が書けてないから」という意見には反対。
一面では事実でしょうけれど、本を置かない理由ってそれだけじゃないですから。
コミックスでも1度読めば充分という人だっているし、泣く泣く手放さなければならない理由があってという場合もある。
どんなに愛おしい漫画(書籍)でも手元に残しておけない事情もあるんですよね。
「マンガがあればいーのだ。」のたかすぃさんのように。
参考:断腸の思いでマンガ約850冊+αを大放出しました!! (出品終了)

いや、本当に断腸の思いだったのではないかと思われます。
決して他人事では無いので、読んでて割と辛いエントリーだったんですよね…。