アニメな日々、漫画な月日

アニメ、漫画の感想・考察

RPG原作バトル漫画と呪文の関係 ドラクエ・ロトシリーズの"順番"を逆手に取った説得力

この記事は

ゲーム「DRAGON QUEST」を題材とした漫画に関する記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

「DRAGON QUEST-ダイの大冒険-」。
「DRAGON QUEST列伝 ロトの紋章」。
どちらもエニックス(現スクウェア・エニックス)の・日本を代表するRPG「DRAGON QUEST」を題材とした漫画作品です。

今回は2つを例に取って、ゲームの呪文とバトル漫画の関係について書いてみます。

呪文

RPGには呪文が付き物ですよね。
「ドラクエ」にも多くの呪文が出てきます。
こういう呪文は覚えちゃうんですよね。
「ドラクエ」の場合は、呪文の名前だけではなく、「どのような呪文なのか」まで覚えてしまってます。
例えば、メラと言えば「火炎系の呪文」とか。
この辺「ダイ大」で育った人にとっては特に馴染み深いんじゃないでしょうか。
また、ゲームには無かった詠唱呪文を覚えてる人もいるかもですね。
「黄昏よりも昏きもの
血の流れより紅きもの
時の流れに埋もれし
偉大なる汝の名において
我ここに 闇に誓わん
我等が前に立ち塞がりし
すべての愚かなるものに
我と汝が力もて
等しく滅びを与えんことを!」
とか。何故か覚えちゃいますしね。
(上の詠唱を林原めぐみさん声で脳内再生しちゃう人は多分同世代ですw)

そんな呪文の中には、ゲームを進めて行く為に必須とも言える体系の呪文が存在します。
命に纏わる呪文体系です。
これらは冒険では欠かせません。
主に2種類に分かれ、敵の命を即奪う死を司るものと仲間の命を復活させる蘇生系の呪文があります。

先ず死を司るザキ系とかメガンテとか。
当時ゲームをやっていて、敵モンスターにザラキを使われ、あっという間に全滅させられた…なんて苦い思い出を持つ人も多いんじゃないでしょうか。
まあ、僕等ファミコン世代にとっては「セーブデータ消滅」というセーブ機能の脆さに因る死の呪文の方が死活問題でしたけれど。

ただ、ここはゲームバランス的に良く出来ていて、成功率が低めに設定されたりします。
そりゃ必殺呪文にされちゃかないませんしね。
「ダイ大」でもザボエラがバダックに対してザラキを使用してましたが、バダックは死ぬ事は無く生き延びれました。
絶対即死するものであったら、漫画では使用できない可能性の高い呪文ですね。

同じく死を司る系にメガンテがありますけれど、こっちは「感動を促す」使われ方を多数見かける呪文です。
「ダイの大冒険」では、アバンがハドラーに対して放ち死亡(とずっと見做されていた)する原因になったり。
ポップがバランに対して使用したり。
作品が異なれば、例えば「DRAGON QUEST列伝 ロトの紋章」では、タルキン老がグノンに対して使用してましたね。
殆どの場合に於いて、味方キャラが敵を倒す為に使用し、しかし皆"失敗"=敵に止めをさせずに死亡してしまうというドラマに用いられています。
こちらはドラマを作りやすいという意味で、漫画でも使用される好例と言えるかもしれません。

このようにゲームではありでも、バトル漫画だとダメな理由としては、「簡単に死んでしまう」からですね。
メガンテのように、使用すると効果に見合った反動があるような場合ですとOKなのですけれど、そうじゃないと使いづらかったりします。
ザキ系は反動が無いものの、成功率が低いのでギリギリセーフという扱いなのでしょうね。
ただ、やっぱり漫画内では頻発されるような呪文ではありません。
バトル漫画の緊迫する戦闘が即死呪文一発で決着しちゃったら白けますもんね(汗
(ゲームでも、ボスには効かない等、そういう事がないよう設定されてますけれど。)

さて、即死がダメなら蘇生だってダメ。
ということでザオラル・ザオリク系も禁忌の呪文という事にしないといけません。
簡単にホイホイと生き返っているようでは、バトルに緊張感が無くなっちゃいますから。
当然同効果を齎すアイテム類もダメだったりします。
「ロトの紋章」では、世界樹が重要な役割を担っていて、とっくに枯れ果てたものとして登場。
唯一残っていた1枚の葉を使って、アルスを蘇生させていました。
大量にあるという設定にはしていないんですよね。
そうそう。当然教会で神父にゴールドを掴ませて祈りを捧げれば、生き返るなんて事もありませんw

という事で、蘇生呪文について、漫画ではどのような扱いになっているのか。
僕自身「ドラクエ」では「ロト紋」と「ダイ大」しか読んだ事が無いので、この2作品中心に振り返ってみます。
(「ドラゴンクエストモンスターズ+」も読んでますが、あの作品はここでは除きます。)

蘇生呪文の扱いをちょっと詳しく振り返る

最初に「ダイの大冒険」から。
上にも書いたポップ対バランについて振り返ってみます。
きっとこの場面が最も適しているので。

バランに記憶を奪われたダイの為に、ポップが捨て身でバランにメガンテを使うも失敗。
呪文の掛かりが弱く、バランは生き残りポップだけが絶命してしまいました。
ヒュンケルとかクロコダインとかアバンとかと違って、作中初めて明確に死が訪れた瞬間なんですよね。
完全に死んだわけではなかったようですけれど、心臓は完全に止まっており、ホイミ等の回復系呪文では意味を成さない状態になっていた訳です。

ここでレオナがザオラルを使用しています。
この呪文はバトル漫画的にはOKなんです。
理由としてはザキと一緒。成功率が100%では無いからです。
じゃあ、100%生き返れるザオリクはというと「使用者が存在しない伝説の呪文」扱い。
過去に存在した古の呪文という扱いであり、云わば無かった事にしてるんですよね。

続いて「ロト紋」。
確か、ザオリクやザオラルは存在自体登場しなかった気がします。
但し扱いとしては「ダイ大」と同じと解釈して問題が無いと思うんです。
何故そう解釈できるのかが、このエントリの本論になります。

えっと。
兎に角2作品とも。
いや、RPGを原作とするほぼ全てのバトル漫画に共通している事なのでしょうけれど、蘇生呪文に関しては作中で制約を設けています。
ザオラルのような生き返る保証の無い呪文は流用していても、ザオリクのような100%蘇生可能とするものは駄目とか。
メガザルのような使用者の命を懸けた場合はOKでしょうけれどね。
この辺の匙加減は、コミカライズ担当者次第でしょうけれど、バトルの緊迫感を薄れさせないよう調整されている部分です。

蘇生系の呪文は、バトル漫画に於いては登場させにくい系統の代表例と言えそうです。

ロトシリーズの特徴を説得力に変換する

このようなバトル漫画に登場させにくい呪文の漫画内での扱いに関して見てみます。
すると、上にも書いたように「過去には存在したが、今は使えない」設定とする作品にぶつかります。
この設定ですが、簡単に「昔は使えたんだけどね〜」とするでも問題は無いんですけれど、何故そうなったのかが説明されていると説得力が増しますよね。
この「何故」に関して、ロトシリーズを原作としていた場合には、原作ゲームからのアプローチが可能であると考えます。
その前に2つの作品の時代設定に関して振り返ってみます。

「ダイの大冒険」の時代設定は、一体いつなのだろうか?と。
何時もクソも「ゲームとの世界観及び物語ともに接点が無い」んですけれどね。
ただ、連載当時の事情としては「3」と「4」の間の企画ということもあり、ロトシリーズを彷彿とさせるシーンもありました。
アバンが「1」の主人公のような姿で描かれていたり、ハドラーが竜王然とした格好で登場したり。
ここから少なくとも「1」の後の世界の平行世界を舞台にしているのかもしれないと仮定します。

「ロト紋」はといえば、これは明確に「3」と「1」の間の事とされています。
最終回では竜王が「1」の姿になっていたりしてますしね。

「ダイ大」の方を強引にロトシリーズに結び付けてますが、こう仮定すると、ザオリクやザオラル等の呪文が作中に登場しない理由にも説得力が出て来るんですよね。

ロトシリーズと言えば、発表された順番と作中の歴史が違います。
リリース順は言うまでも無く「1」→「2」→「3」です。
が、作中の歴史的には「3」→「1」→「2」。
で、呪文の数はというと、これも当然なのですけれど、「3」>「2」>「1」ですよね。
後に発表された作品の方が、呪文数が多くて当たり前です。
ただこの現実の常識を無視して、呪文の数に関して作中の歴史から見直してみます。

ロトが活躍した「3」の時代に最も呪文は繁栄しており、ザオリク等高等呪文も使用されていた。
時が流れ、「1」の時代になると多くの呪文は伝承されておらず、過去のモノとなってしまった。
更に時代は変わり「2」の時代。ロトの時代の呪文が再び蘇って来ていて、当時の高等呪文を中心に使えるようにまで呪文文化は回復した。
研究がまだまだ未熟で各系統の初歩呪文の復活はまだまだなのか。
はたまた初歩の呪文は「使用する意味が無い」として、高度な呪文のみ復活・使用者を広めているのか。
この辺は色々と妄想出来る部分ですね。

兎も角として、呪文という文明が、ロトの活躍した時代から一度衰退してしまった。
滅びる寸前にまで追いやられたものの、「2」の時代には持ち直してきている…。
このような解釈も出来て、これを各漫画にも当て嵌めてみると面白かったり。

「ロト紋」の時代。ゾーマが敗れて100年後。
世界樹は枯れ、蘇生系呪文の伝承は途絶え、死んでも簡単には生き返れない時代になってしまった。
この続編である「ロトの紋章〜紋章を継ぐ者達へ〜」で呪文が消えてしまったのも、「1」へと繋がる設定と考えられなくもない。
(正直呪文の無いドラクエってどうなんだろうとは思いつつも…)

「ダイの大冒険」もロトシリーズのパラレルワールドとして似た歴史を辿っているのだとすれば、呪文の文明は徐々にではあるものの衰退していっているのかもしれません。
衰退の仕方は異なりますが、高度呪文が使えないという点では「3」の後の世界なので納得出来る。

原作であるロトシリーズに照らし合わせると、各漫画の「昔は使えた呪文なんだけどね」という「バトル漫画では使えない為の"言い訳"」(言い訳というと語弊があり、言葉も悪いですけれど)の回避にも成り得ると思うんです。

終わりに

そういえば「ドラクエ」の漫画はスクエニ中心に多く見かけますが、「FF」って見ない気がします…。
「ヤングガンガン」創刊時は、「紋継ぐ」と"2大看板"だった気がしないでも無いですが(汗
あっちは、世界観的に漫画化が難しいとか理由があるんでしょうかね?
ま、僕が漫画作品を知らないだけだとは思いますけれど。

RPGには呪文があって、けれど、それを漫画に持っていく事は全て出来る訳ではありません。
ゲーム進行の上では必要な呪文でも、漫画では「存在すると色々とマズイ」から。
「ドラクエ」では蘇生系呪文などがそれにあたり、これは「ドラクエ」の歴史と照らし合わせる事で説得力を生み、上手に回避されているなと思った次第です。