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エンディング映像に全ての答えがある 「境界の彼方」の"境界"に関する考察

この記事は

「境界の彼方」の考察記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

2日連続で「境界の彼方」記事です。
タイトルの「境界」って何のことなのか。
その境界の「彼方」とは何か。
ENDムービーから推測してみます。

手を差し伸べる意味を考えてみる

このアニメのEND凄い好きなんですよね。
youtubeで動画が有ったので張っておきます。
(著作権侵害に当たる場合は、リンクを削除します。)

歌が僕的に琴線に触れまくりな上に、映像もシンプルなんだけれど、幻想的な雰囲気が作風や歌とマッチしていて。
そんなENDですけれど、終始未来が手を伸ばしているカットが続きます。

そこで、「手を伸ばす」という行為について考えてみます。
意味を辞書で引くと

1 ある方向に向けてのばして出す。「釣りざおを―・べる」
2 力を貸す。援助する。「救いの手を―・べる」

とあります。

ここでの未来はどういう意図で手を差し伸べているんでしょう?
1番の意味合いとしては合ってますけれど、ただそれだけでしょうか?
意味も無く手を前に伸ばしている訳では無いと思ってます。

では、2でしょうか?
これは間違いなく違うと考えております。
未来の方から「力を貸す」という意味合いは無いと断言。

ちょっと第6話の1カットを見て下さい。

美月が未来に向けて手を差し伸べているシーンですね。
一緒に協力して、くっさい妖夢を倒しましょうと云う意志を持っての行為です。

通常「誰かを助けたい場合」、「仲間になろうと手を差し出す場合」等、所謂2番目の意味合いで手を差し出す場合、画像のような手の形になります。
つまりは、掌が横方向、若しくは上部を向くような形になるんです。
相手が手を繋ぎやすい形、手を上から重ね易い形になるのが自然です。

ENDの未来のカットを見返してみます。

画像はEND冒頭からです。
掌は下を向き、"自分から誰かを助けたいという意志で手を差し伸べた形"になっていないことが窺えます。
敢えて言葉で表現するならば、"誰かが手を差し伸べてくれるのを、先に手を差し出して待っている"という感じでしょうか。

境界の彼方

進行方向について見てみます。
未来の上部を飛び回る鳩の位置からも一目瞭然なのですけれど、進行方向は右から左へと流れるようになっています。
秋人も美月も博臣も。
みんなみんな右から左へと歩いていっている。
ただ1人、未来だけがその場に立ち竦んでいるんです。

1人だけ、その場から前へ進めないでいる未来。
僕はココから、未来の眼前に"境界"が存在していると解釈しました。
皆が易々と超えていく"境界"。
鳩でさえ、その一線を越えて羽ばたいています。

では、具体的にこの"境界"が何なのかと言えば、本編の描写から類推します。
有り体に言えば「未来自身が他人と慣れ合いを拒む為に引いた"境界"」ですね。
過去に唯を"殺してしまった"と考える彼女自身が作った線であり、しかしながらその線を取っ払いたいという相反する気持ちをも抱いていた。
この"境界"を無視して、少しずつ境界線を超え、そして線の向こうからいっきに未来を引きずり込んだのが秋人でした。
ここまでが第4話までの出来事と解釈しています。

纏めます。
"境界"とは、未来が作った"他人と交わる事を拒んでいた線"であり、その境界の"彼方"とは、他人と協力し、寄り添いながら生きる普遍的な世界。
秋人が差し伸べられた未来の手を引っ張り、強引に引っ張り込んだ世界。
5話で未来が文芸部に入部した事が、この証左ですね。

かつての未来が唯に連れられて、幸せなひと時を過ごした世界ですね。
唯の死以来、自らそんな世界とは一線を引き過ごしてきた未来は、今度は秋人達と出会う事で、その世界へと再び戻っていく。
そういった物語を描いている作品なのではないかというのが僕の解釈。

終わりに

ENDのラストカット。
沢山の手が未来の手を掴もうと伸びている絵が断続的に差し込まれています。
秋人は勿論多くの人が、未来の手を掴もうとしている様子が描かれているんです。
物語のテーマを色濃く描き出した珠玉のENDだと思います。