Mangaism

アニメ、漫画の感想や考察を書いてます

本当の家族の絆を超えた家族の物語 「THE IDOLM@STER」という名作

この記事は

「THE IDOLM@STER」の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

先日まで「THE IDOLM@STER」をレンタルDVDで見ていました。
凄い好き。
もう「THE IDOLM@STER」の虜です。
そんな折ニコニコ動画で偶然見つけたのが、次の動画。
最近のアイドルが出て来るアニメのオープニングを集めたものでした。

こうして見てみると、当然ですけれど女児向けアニメが多いですね。
アイドルと言えば、少年少女や大人にとっては「格好良いor可愛い(綺麗)異性」であり「応援する対象となる芸能人」であるのに対して、特に小学生以下の少女にとっては純粋に「憧れの対象」です。

魔法少女ものと対を成す女児向け2大コンテンツというと、ちょっと考えが古いかな。
でも今も昔も、変身願望を持つ小さな女の子達にとっては憧れの存在である事は変わらないのではないかな。
だから昔っから女児向けのアイドルアニメは多い。

さて、この動画には多くの深夜アニメも混じっていました。
同じアイドルが出るアニメでも、朝に放送されているアニメとは方向性が違うんでしょうね。
前述した通り、朝(や夕方等)に放送されているアニメは女児をメインターゲットとしているのに対し、深夜アニメは「好きなアイドルを応援しているような世代」に向けられている。
放送時間から考えても当然の帰結ですね。

だから僕はこの手のアニメを避けていました。

アイドルアニメを避けていた理由

僕は所謂日常アニメが大好きです。
少女たちのキャッキャウフフな安穏な日々を描いた何気ない風景を見ていると和むから。
自然とその手の作品に積極的に触れます。

ところで、日常アニメの登場人物である少女達の共通点と言えば何か。
色々あるかもですけれど、僕としては「何処にでも居そうな普通の少女達」なんです。
普通に学校に通って、普通に部活動に勤しんで、普通に友達と遊んで、普通にバイトなんかしてみて。
普通の少女の日常を主眼としているから和むんです。

だから僕はアイドルの出るアニメを避けていました。

アイドルはそれだけで「普通では無い存在」です。
大勢の人の前に立ち、大勢の人を魅了し、大勢の人から崇拝にも似た感情を集めている。
深夜に放送している以上、深夜アニメファンである大きなお兄さん・お姉さんを魅了するようなアイドルが活躍するアニメとなる。
ちょっと苦手としていました。

そもそもが「THE IDOLM@STER」等を「日常アニメ」の括りに入れていいものかという定義自体に疑問を挟むべきかもしれません。
この辺は「複数人の美少女がメインで活躍する作品」という広義的な意味合いで一緒くたにしてみたりして。

このような勝手なイメージで作り上げた「深夜のアイドルアニメ像」を理由として、僕は「THE IDOLM@STER」を本放送では見ていませんでした。
大いに反省すべきところです。

なんてことはない。
「THE IDOLM@STER」は立派な「普通の少女達の活躍」を描いたアニメでした。

アニマスのシリーズ構成

アニメ「THE IDOLM@STER」のテーマは「家族」にあると思っております。
これについて持論を書いていきます。

今作の全体の構成について考えてみます。
2通りの見方が出来ますね。

1つは、分かりやすく前期(1クール目1〜13話)と後期(2クール目14〜25話)に分けた見方。(26話は特別編の為、考慮外とします)
前期でアイドルの卵達の日常を描写し、後期でアイドルとして売れ出した彼女達の仕事と日常を描いていた。

もう1つは、3人のアイドルに焦点を当てつつも、家族としての765オールスターズの日常を描いていたというモノ。
今回は、この2つ目の見方についてです。

3人のアイドル。
星井美希。
如月千早。
天海春香。
この3人をメインとしつつ、物語を展開させていたという解釈です。
wikipediaのアニマス項に於けるストーリー解説は、この考えから書かれているんじゃないかな。
ここの編者と僕の考えは似てるのかもしれません。
(ただ単に公式の見解なのかもしれないですがw)

星井美希編

最初は美希が主人公でした。
第6話。
「竜宮小町」が結成されると、このユニットはいっきにブレイク。
今まで仕事の少なかった彼女達に、はっきりと差が生まれてしまった瞬間でした。

アイドルとして脚光を浴び、キラキラした仕事を熟す「竜宮小町」に憧れを抱いた美希は、「竜宮小町」に加入すべく今まで以上に仕事に邁進し始めました。
結局これが叶わないと知ると、アイドルを辞めようとしちゃうんですけれども。

この美希の章で面白いのは2点ですね。
1つは、美希がアイドルではなくて、「竜宮小町」に憧れを抱いてしまった件。
普通であれば、自分もアイドルとして売れれば良いという考えに到ります。
彼女が夢見る「キラキラ輝く」状態には、「竜宮小町」に入る必要は無く、同じアイドルで十分だから。
だけれど、美希は違った。
何故だか「竜宮小町」でないと、自分の夢は叶わないと思っていた。

この辺の考え方の違いとでもいうのかな。
勘違いをプロデューサーが指摘して、美希を復帰させるんですけれど、この美希の考え方は面白い。

勝手な解釈ですけれど、これは美希自身が765プロを家に、そこで働いている皆を家族に見立てていたからではないでしょうか。
世間に認められ活躍しだした大好きな家族(「竜宮」メンバー4人)と一緒に働きたいという感情からの想いだった気がするのです。
こう考えてみると、美希が春香の想いに共鳴した事に綺麗に繋がります。

2つ目は、家族の団結力を示した点。
第10話。芸能事務所対抗大運動会を舞台としたエピソードです。
「竜宮小町」率いる765プロとして参加した彼女達ですが、本来団結して頑張らないといけないところ、真と伊織が喧嘩を始めてしまいました。

5話までならば「同じ仲間同士の喧嘩」にしか見えなかったのに、この回の頃になると受ける印象はガラッと変わるものですね。
既に売れっ子と言っても問題無い「竜宮小町」と彼女らのおまけとしてしか見られていない真らとの「確執」というと大袈裟かな。
1つだった彼女達12人(律子除く)に差が生じ、その差がこういう団結をしないといけない場での喧嘩という形で以て表面化してしまった。

だけれど、やよいの件で一致団結。
彼女達は最後の全員リレーを完走。
見事優勝という結果を以て、まだまだホーム(事務所)に集う家族であることが強調されていたように思いました。

一部のアイドルが売れてしまっても、彼女達はまだまだ帰る場所が見えていた。


そうそう。
他にも家族を意識するお話は随所にありました。
7話のやよいのエピソードは分かりやすかったですね。
9話の亜美・真美回もそう。
伊織の家庭事情も同じですね。
実際の家族を絡めた「765プロを家族と見立てる」という意識づけは至る所に撒き散らされていました。

そんな実際の家族との絡みとしての極致が次の段階。
千早の出番ですね。

如月千早編

13話でのライブ成功後、売れ始めた彼女達。
「生っすか!?サンデー」。この番組は面白いですね。
プロデューサーさんの成長がこの回に凝縮していました。
再び6話に話を戻し、この回でのプロデューサーは、非常に空回っていました。
アイドルそれぞれに適した仕事を回せずに、彼女達の魅力を損ねていた点ですね。
これについては色々と意見もあります。
「仕事を選んでいる場合では無いんではないか」とか「好きな・適した仕事ばかりでは無いから仕方ないよね」とか。
一般的な考え方からすればこうなりますけれど、そこは横に置いといて、あくまでもプロデューサーの若さを示すものとして捉えます。

15話に戻します。
「生っすか!?サンデー」は、彼女達の個性を発揮した番組でした。
響の体を張ったチャレンジコーナー。
やよいの体操コーナー(?)。
双子のコントも実に双子らしい。
貴音の大食いを主眼に置いた食のコーナーは意外でしたけれど、彼女に適したコーナーであると26話などを見ると納得出来ます。
他のメンバーのコーナーも描かれなかっただけでちゃんとあるんでしょうね。
それぞれの魅力を引き出せる内容のコーナーが。

ここら辺プロデューサーの力量が上がったと素直に捉えられる点。
だけれど、ただ1人、浮かない表情で番組の収録に臨んでいた子が居て。
それが千早でした。
この「浮かない顔をしていた」理由が公になったのが19話。

961プロからの嫌がらせが続いていた中、最大のものが千早へのスキャンダルでした。
彼女の弟の死を嫌らしく報道した下劣な事件。
千早が何かを抱えていた事は、初期から幾度となく触れられていて、ここに来てついに彼女の抱える問題にスポットライトが当てられましたが、ここは本当に重かったですね。

ショックで歌えなくなった千早は塞ぎ込んでしまって、全てを拒絶。
それでも諦めずに手を差し伸べ続けた春香と仲間達。
想いは報われ、千早は再び立ち上がって、舞台に戻った。
歌を歌った。

千早が、仲間達との絆を実感したエピソードであり、これ以降の彼女は迷うことなく笑顔でアイドル業に従事していました。
実際の家族との絆と同等かそれ以上の絆を浮き彫りにした765プロのアイドル達。

この千早編も、やっぱり「家族」を意識させていました。
千早の実母が千早から逃げていた事も大きかったです。
改めて、彼女達の家は事務所であり、皆が家族であるという事が表現されていたように思えました。

天海春香編

いよいよ物語は終盤。
最後は春香ですね。

彼女の物語は第5話から始まります。
いや、実際はもっと前かもしれませんけれど、印象的だったのはここ。
wikipediaのストーリーの該当部分を抜粋します。

第5話では仕事もなく暇な12人は夏の海へと慰安旅行に赴くが、楽しい一日を終えた春香は、もしも皆が有名になってしまったら、こうした機会もなくなってしまうだろうという予感を抱く。
この予感は後の展開への布石となる。

常に春香は仲間を気に掛けています。
千早の時には「お節介かな」と悩んでしまう事もありましたけれど、周りはそんな事をこれっぽちも思っていない。
仕事で集まれないときでも、きちんと春香の呼び声に応えようとしてましたし、応えられないとなると「ゴメンね」と詫びる。
春香が他のアイドル達から慕われている事がこんなところからも窺えるんですけれど、でも…。

お話は22話になります。
正直言えば、ここでの春香の考えはおかしかったです。
美希が指摘していたように「我儘」だし「何がしたいのか」が分からなかった。
分からないというより、疑問でした。
何故?って。

芸能界って流行り廃りのサイクルが早いですよね。
トップになっても、その座をキープし続けることは難しいし、それどころか簡単に売れなくなってしまう事もある。
そんな業界でトップのアイドルを目指す彼女達からすれば、仕事で忙しくなることは喜ばしく歓迎する事であって、決して疎ましく思ったり、憂いたりする事では無い。
同じアイドル業であるライブイベントの為とはいえ、他の仕事を全てストップするという考えは、やっぱりオカシイです。
そんなことしたら、いっきに干されかねないでしょうしね。
何故春香はそんな危険を冒してまで、皆での合同練習を優先しようとしていたのか。

この辺の春香の不思議な考えは美希らに否定させつつも、しかし、春香の様子から美希は気づいて。
実際に春香に救われた千早が皆に掛け合って、春香を救い出す。
歴代のメインを張った千早と美希が先頭に立って最後のメインヒロインの春香を救い出す。

「THE IDOLM@STER」25話分の凝縮されたカタルシスがいっきに味わえた素晴らしいクライマックスでした。
そうそう。家と家族の定義は、ここで明言されていましたね。

「皆で纏めてトップアイドル」

美希もそうでしたけれど、春香もそう。
トップアイドルを目指しつつも、どうも世間一般で言うトップアイドル像とは違った物を見ている気がします。
美希は同じ事務所の「竜宮小町」に憧れてたし、春香は全員で居ることを何よりも大切にしていた。
なんていうか、同じ事務所の人間だろうと蹴落としてでも上り詰めようという野心というか、そういうものが感じられなかった。
これは黒井社長と対立している部分からも窺えます。

第1話でプロデューサーが言っていたように「皆で纏めてトップアイドル」を目指している。
一見すると無茶苦茶な事ですけれど「これは可能なんだよ」と示すべく家族を持ち出したのかなと。
団結しながらトップを目指していく事を描く為に、13人のアイドル達を家族に見做して、事務所を家に設定した。
家族同士ならば、内輪の醜い競争は無くてもおかしくないし、全員で団結してトップを目指しても違和感が少ない。

1話から全ての物語がここに帰結するよう計算され、3人のアイドルが「765プロを家族」に具象化する役目を担っていた。

こうすることで、「アイドル」に持つ「親近感の持ちにくさ」を緩和して、僕にとっては見やすくなっていたのかなと。
また、これって、大多数の「日常アニメ」の定義にも当て嵌められます。
アイドル業を部活と見做しても良いし(別のアニメになりますねw)、大家族のホームドラマとも見做せる。
「素人の手が届かない別世界に住むアイドル」を描いている訳では無くて、「何処にでも居そうな一般的な悩みを抱えた少女達」を描いていたというのが僕の見解です。

終わりに

アニメ「THE IDOLM@STER」。
すんばらしいアニメでした。

変にアイドルっぽくなくて、どこまでも普通の少女達の日常を描く事に主眼を置かれているようで。
僕の勝手なイメージを崩してくれたという意味でも見て良かったと思えた作品。

13人という大勢のキャラクターを無理なく活躍させ、しっかりとしたドラマが紡がれていた。
僕はアニマスが大好きです。