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「VS感」の可否を左右する負けの理由付けを提示する重要性 「ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE」

この記事は

「ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE」を取り上げた記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

予告編見て高揚した

「ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE」の公式サイトが更新され、いよいよ公開も間近なんだなという気配が強まって参りました。
いや〜楽しみです。
予告編を見たら、更に楽しみになってきました。
超面白そう。
凄いワクワクさせてくれる予告ですね!!!(予告って大概そういうものですがw)

やっぱり相性が良いですよね、この2作品は。
「ルパン」はアクション主体の作品。そこに謎解きを盛り込んだアドベンチャー要素がふんだんに盛り込まれてますよね。
「コナン」はミステリだけれど、アクションも出来る作品です。特に劇場版ともなると、アクション面はパワーアップします。
どちらも、ミステリ面とアクション面を併せ持っていて、それぞれの比率が異なるだけ。
それだけに融和性が高く、キャラデザのギャップさえ埋められれば1つの作品内で違和感無く共演出来るのかなって。

そんな2作のコラボも今回で2回目。
予告でも公式サイトでも強調されているのは「VS感」ですね。
ここが強調されているだけにより楽しみなんです。

今回は、この「VS感」について書かせて頂きます。

「金田一耕助vs明智小五郎」の「VS感」

そういえば昨日非常に興味深いドラマが放送されていました。
フジテレビドラマ「金田一耕助vs明智小五郎」(芦辺拓原作『明智小五郎対金田一耕助』より)。

この作品、日本人ならば誰もが知る2人の名探偵を競わせていました。
で、どちらも非常に人気の高い探偵です。
そんなキャラ同士を戦わせ、勝敗をつけてしまうと、やや具合が悪い。
負けてしまった方のファンが納得しないからですね。
更にはこの場合、原作者への配慮も必要となります。
江戸川乱歩先生も横溝正史先生も作品制作に関与しておらず、第三者である芦辺拓先生のオリジナルプロットだからです。

さて僕はこの作品を今回のドラマ版でしか知らないので、ドラマ版のみについて書かせて頂くと、凄く巧い落とし所だったなと感じたのです。
結論から言えば、2人の名探偵の決着は明智小五郎の圧倒的勝利という形でした。

これでは金田一サイドが納得いかないのではと勘繰ってしまいますが、多分大丈夫なんじゃないかなと。
というのも、きっちりと「金田一が負けてしまう理由」があったからですね。

ドラマの時代を金田一が探偵としてまだまだ駆け出しの頃に設定。
原典的にも、その時代には既に明智小五郎は名声を得ていた誰もが知る「名探偵」だった為*1、もうこの時点で明智>金田一という構図を作っていました。
更には、金田一自身に明智を慕わせるという念の入れよう。
探偵として数え切れない経験を積んだ明智とまだまだ無名の金田一の比較では、どちらも探偵としての才覚を互角とすれば、経験値の差で明智に分があると思える設定です。
単純に明智勝利という事にはせずに、最低限金田一に花を持たせていた点も金田一サイドから反発が出難いのではと考えた一因。

このようにこのドラマ版はきちんと「VS感」を出し、1つの決着を描いていました。

話を少し戻しまして、「名探偵コナン」に出て来る怪盗キッドの立ち位置について言及してみます。

怪盗キッドの立ち位置

「ルパン三世vs名探偵コナン」や「金田一耕助vs明智小五郎」の共通点は、互いの作品の作者が異なる点ですね。
だから、より両サイドへの配慮が必要となります。
なかなかに対決感を出せないし、勝敗を描き辛い。

では、作者が同じならばどうか?
この時も、対決させる両作各々のファンへの配慮こそ必要ですが、勝敗は付けやすいですよね。
それこそ作者の自由ですから、どっちを勝たせても問題無い訳です。
作者が描いた事こそが「事実」となり、全てのファンはそれを受け入れるしかなくなるから。

という事で、「名探偵コナン」の江戸川コナンと「まじっく快斗」の怪盗キッドが「コナン」の中で幾度となく戦っています。
時には協力したりもしてますけれどね。
ところで「名探偵コナン」の中での怪盗キッドはどのようなポジションにいるのかといえば、僕は"もう1人の主人公"だと思っております。
「まじっく快斗」を代表して、「コナン」の主人公・江戸川コナンと激しく争っている。
主人公同士の戦いだから、どちらも勝ったり負けたりを繰り返しています。
勿論これはキッドが登場するエピソード限定でのお話です。
「コナン」という作品全体の第2の主人公がキッドであるとかそういう話ではありません。

持論を纏めますと、怪盗キッドは彼が登場するエピソードでのみ「名探偵コナン」という作品のもう1人の主人公になるという事です。
そんなキッドですが、「ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE」に登場するみたいですね。
この作品では、キッドはどういう立ち位置なのでしょう。
本編を見てみない事には分かりませんけれども、まあ、作品の趣旨からいえばゲストキャラ。脇役ですよね。きっと。
主人公はあくまでもルパン三世とコナンであって、キッドはゲスト。
対決には深く関わって来ないだろうし、何よりキッドとコナンやルパンとの勝敗どうこうは「物語で描かれるべき要素」では無いはずです。

「VS感」を語る上で最低限必要な要素だと考えましたので、この事を一先ず記しておきます。

負けの理由付けが重要ではないか

2人の出会いはテレビスペシャルでした。
当時、「サンデー」の特報で第一報を見かけた時は本当に驚きました。
(実際の「第一報」は、ネットでの早売りネタバレ画像でしたけれどもw)

そんな「第1作」はVSと言いつつ、然程「VS感」はありませんでした。
というのも、2人の出会いが描かれたからですね。
1つの事件を通じて、大泥棒と名探偵が出逢い、解決に導く過程で互いの素性を知り、そしてラストで「次出会ったら」と互いに対決感を出して終わりました。

その「次」が此度の映画。
全面的に「VS感」を出しているのは必然と言えますし、両作者共にアピールしているのにも頷けます。
今回は本当にタイトル通りに対決してくれそうなので、より楽しみなんです。
何度も書きますが、2人のヒーローが戦ってくれそうなので、楽しみなんですよね。

1作目含めタイトルに「VS」を用いながら、実際は戦ってませんでしたという作品が多いですからね。
やっぱり「VS」を入れるのであれば、その通りの物語を期待しちゃうというモノです。

それでもまだ、疑ってもいたりします。
本当に対決してくれるんだろうか?と。
理由としては、上にも書きました「ファンへの配慮」と「作者への配慮」ですね。
これが付き纏っている限りは、やっぱり不安。
なので、これらについて思った事をつらつらと。

先ずは「作者への配慮」。
これは今回見事パス出来ている筈です!!きっと。
なんたって、モンキー・パンチ先生も青山剛昌先生も公認ですから。
どちらが勝っても負けても問題無いような下地は出来ている気がします。

で、問題は「ファンへの配慮」ですね。
全てのファンを納得させる事は出来ません。
それはどんな作品を提示されても、有り得ない事です。
でも、大多数のファンを納得させる事は出来ると思うんですね。
そこで重要なのが「ファンは負けることが悔しいんでは無い」のではないかという事です。

あくまで僕個人の事ですけれど、好きな作品の主人公が別作品の主人公に負かされるようなコラボ作品があっても、結果だけを見て判断する事はありません。
結果よりも経過。負けた理由を重視するからです。

同じ負けでも納得いく負けと納得できない負けってあるじゃないですか。なんにしても。
全力を出し「こりゃ負けても仕方ないな」と思える状況であれば、結果的に負けでも然程悔しくない。
現実のスポーツなんかだと悔しさの方が強いですけれど、アニメや漫画などの創作物が相手では納得しちゃうだけな気がします。
こういった考えは、多くの人が持っているものなんではないでしょうか。

そこで「金田一耕助vs明智小五郎」ですね。
この作品を「金田一ファンも納得するのではないか」としたのは、金田一が負ける理由をきっちりと提示していたからです。
納得出来ない理由なき敗北には、ファンはがっかりするだけです。
納得出来るか否かはファン次第なので、微妙な点ではありますけれど。

この作品で、どちらが勝つのかは分かりません。
けれど、しっかりと負けた理由を提示すれば問題は少ないと考えますし、そういうモノになっているんじゃないかなと思ったり。
ただ、この理由付けの際にやってはいけないのが「譲れない点」を侵害することだと考えます。

どんなキャラクターにしても「譲れない点」ってありますよね。
「ここだけは誰が何といおうと、どんなキャラよりも優れている」と誰もが思う様な点。

例えば。
変装技術でいえばルパン三世はキッドに負けてはいけないんです。
キッドはゲストなのだから、盗みのテクニックもルパンが上である必要性がある。
ルパンも頭脳明晰だけれど、刑事事件の謎解きという点に於いてはコナンの方が上じゃないとダメ。
射撃技術は(毛利)小五郎よりも次元の方が上である必要があるし、剣術の腕も(今回は出て来ないけれど)平次よりも五ェ門の方が達者でないといけない。

それぞれ「譲れない点」があって、そこを無視してしまうと、どんな理由を付けても台無しになっちゃうのではないかな。
小五郎が次元に射撃で勝っちゃったり、ルパンがコナンよりも先に事件の謎を解いちゃうのは駄目なんです。
ここら辺を回避して、それでいて理由がしっかりしている事が重要であり、そうすれば「VS感」をきっちりと出せるコラボ作品が描けるんじゃないでしょうか。
「金田一耕助vs明智小五郎」に「きっちりとしたVS感」を覚えた由縁ですね。

まとめ

「ルパコナ」でのメインはルパンとコナンの対決です。
ルパンとキッドやコナンやキッドの対決ではありません。
「快斗」のファンからすれば承服できかねる事かもしれませんけれど、そこはきっちりと線引きして見るべきな気がします。
と、自分に言い聞かせつつw

ルパンとコナンの対決はどうなるんでしょうね。
僕はどちらの作品も好きなので、どっちに勝って欲しいという強い要望が無いだけに、どうなるのか楽しみですね。
どっちが勝つんだろう。

それと、両作品を深く知る亀垣さんが続投。
キャラクターそれぞれの「譲れない点」を犯すことなく、きちっとした「VS感」溢れた作品を見せてくれることと信じております。
信じる理由は、他にもありまして、第1作がそれですね。
事件の全容を誰よりも早く掴んだのがコナンでした。
コナンの推理を聞き、ルパンも真相に気づくという流れにして、推理という点ではコナンに軍配という描き方がされていた。
ルパンの頭の良さをもしっかりと盛り込んだ、素晴らしい流れ。
コナンの「譲れない点」を守りつつも、ルパンをも立てる。

脚本の前川さんとのタッグで、前回同様キャラを立たせた、かつ、前回以上の対決感を前面に出した劇場版になるんじゃないかな。
12月。早くこいこい12月。

*1:両探偵を無理矢理同一世界観に押し込めた場合の時系列です