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「俺の妹がこんなに可愛いわけがない。」 最終章総括:6番目の告白者のカットを有りにした第13話の意図

この記事は

「俺の妹がこんなに可愛いわけがない。」第14話〜第16話の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

各話短感

ネットでの最終第3話を視聴し終えました。
1話毎の感想を手短に書きます。

14話。2つの告白が描かれていた回。
前半の黒猫への告白はやっぱり切ない。アニメになっても変わらずですね。

付き合っている時代の物って、よく「女はきっぱり捨てられて、男はいつまでも捨てられない」と云われています。
京介と黒猫の恋人時代を象徴する物は、黒猫のノートですね。
黒猫が認めた「2人が恋人に成ったらしたい事」が綴られたノート。
それを黒猫が破り捨て、京介がその行為を嘆く様子は、遠目から見てる分には、上の言葉通りにも見える。
けれど、黒猫の表情や声から感じ取れる感情には、言い知れぬ悲しみが現れていて、非常に切ない気分にさせられました。
小説ではこの辺が地の文で語られており、同様の感情を喚起させてくれましたが、アニメではアニメにしか出来ない演出で表現されており、また違った趣がありました。

後半は、もうね、最後のカットが全てですね。
あの桐乃の表情が一番の見せ場でした。
欲を言えば、もっと正面から描いて欲しかったのですが、「はい」という短い一言に込められた演技が、自分の想像以上に良かったので、大変満足でした。


15話。
冒頭が巧いな〜と。
14話ラストと15話アバンの感動的な桐乃の返事。
それを台無しにするような土下座説教をアニメならではのインターバルを使って、落差を表現されていたなと。

原作でも、ここら辺章を区切る事で、ギャップを生んでいました。
桐乃が遂にデレたんです。
京介に陥落した訳ですよ。
普通なら甘々なデレデレの桐乃が描かれるんじゃないかと思ってしまう部分です。
実際僕は原作を読んでいて、そう思っていましたし、原作作中でも京介がこの点に触れています。

そりゃあもう、ラブラブであまあまな雰囲気になっているに違いない―って、そう思うだろう?

と。
誰もが思うだろう展開とは違い、いつもと変わらないツンな部分を魅せる桐乃。
これって、告白から土下座までにある程度の間隔を空ける事で、初めて成立する「ギャップによる笑い」かと思うんです。
少なくとも読者(視聴者)が「ラブラブであまあまな雰囲気になっているに違いない」と考える時間が必要。
原作では、章を跨ぎ、更に間に2ページ程地の文を挿入する事で、間隔を取っていた。
アニメでは、14話ENDと15話OPで、その時間を稼いでいた…ように思えた。

この時間が、原作のギャグを巧い事再現していたと感じました。


16話。本当の最終回。
アニメや漫画では良くある「消える傷」。
瞬間的に出来たばかりの傷や痣が、一瞬で消えるのは、良く見かけます。
この最終回でも殴り合いの喧嘩をした桐乃と麻奈実、ついでに言えば京介の痣が消えてました。

リアリティを主張するのであれば、消える事自体に異を唱えるべきなのかもですが、ここは本当に消えてくれて良かったと思うのです。
麻奈実の必死の告白。
京介と桐乃の「結婚式」。
大事な大事な2つのシーンを傷ついたボロボロの顔で描かれるのは可哀相。
ここは消えてくれて良かったと思えた部分ですね。

締め方については、これは原作の感想にも書いたかもしれませんけれど…。
桐乃の「子供時代の夢」を「子供の内」に全て終わらせたという点に意味があるんでしょうね。

中学を卒業すれば、女性は結婚できる歳となります。
結婚出来る=大人という等式も乱暴かもしれませんが、女性にとっては一つの区切りであることは違いないかなと。
桐乃としては、「中学生までが子供」という認識らしい事も彼女の台詞の端々から感じ取れますし、故にこの結末は寂しさや切なさもありますが、綺麗な締め方であったと思うんですね。


さて、京介は沢山の女性に愛されました。
彼が振っていった順に列記しますと
あやせ、黒猫、加奈子、麻奈実。
振った訳では無いですが、ここに桐乃を加えても良い。

5人もの女性に愛されたわけですが、原作には6人目が存在します。
6人目の女性=櫻井秋美。
彼女の存在自体がアニメではカットされた件は、非常に悲しい。
彼女のキャラ自体がお気に入りだからというのもありますが、作品の根幹に関わっているキャラクターだからです。

ただ、最終回まで見終えて、第13話の存在を改めて考えることで納得しちゃった部分がある為、それについて記しておきます。

第13話が秋美のカットを「アリ」にしていた

高坂兄妹の冷戦には、京介自身の性格の変遷が関わっていました。
熱血兄貴が、いつの間にか冷めた兄貴に変わってしまい、桐乃がそれを受け入れずに兄妹の仲が拗れて行った訳で。

この性格改変に関与したのが麻奈実であって、だからこそ、彼女がラスボスたる由縁の一端を担っていたのですけれど。
ただ、性格改変の切欠になったのが秋美なので、秋美無くしてこの部分を語れないんですよね。

さて。
この性格改変に纏わる事実のあれこれは、京介と麻奈実しか知らない事。
桐乃は知らないんです。(正確には「知らなかった」)

原作では、あくまで京介目線で描かれているから重要な点ですが、桐乃目線から見れば然程重要な点では無くなるのかなと。
桐乃にとっては、京介の性格が変わってしまった事が重要であって、何故変わったのかという原因は二の次になるのでしょうから。
第2期第13話。TVシリーズ最終回となった回です。
原作者の伏見先生が脚本に参加されたこの回は、秋美を登場させる必要を失くした回だったのかもしれないと思い始めました。

第13話のサブタイトルからも分かる通り、この回は桐乃視点で描かれた回でした。
桐乃の視点で、「何故冷戦が起こったのか」が描かれていた。
だから改めて、京介視点での「冷戦が起こった原因」を描く必要性を失ったのかなと。

物語を描く視点を切り替えることで、尺が足りないという問題を解決されていたように思えました。
僕はずっと「16話では足りない」と思っていました。
実際今でも足りなかったと思います。
もし2クールあれば、秋美だって登場させる事が可能だったでしょうし、他にもカットされたエピソードを盛り込めたはず。
より完璧な形でアニメ「俺妹」の完結を表現できたと思うのです。
が、「原作は原作、アニメはアニメ」という真理に照らし、フラットな目で見れば…。
最終3話はゆったりとしたペースで最後の山場を描いて下さっていましたし、16話という枠内で完結させるという点に於いては、これ以上無い構成だったのかもしれないなとも感じました。

終わりに

最終3話は過不足なく描かれていたな〜という印象を持ちました。
これを以て、遂に「俺妹」は終わってしまいましたが、まだまだBDの発売も控えています。
それが終わっても、僕の手元には半永久的に残る作品となりましたので、今後も忘れずにこの作品と向き合っていきたいですね。

伏見先生を始め、全てのスタッフ・キャストの皆々様。
面白い作品を最後までありがとうございました。