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「とある科学の超電磁砲S」 13話:3つの視点移動で深まるドラマ

この記事は

「とある科学の超電磁砲S」13話の感想記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

前回から次第に視点が美琴から上条さんに変わっていこうとしています。
つまりは、「禁書目録」サイドで描かれた事を再び描いている所です。
これ「超電磁砲」の原作漫画には無い部分。
原作では上条さんの動きって殆ど描写がありません。
2、3コマ位。
「美琴視点の物語」だから、原作でのこの対応は正しいと思います。
そんな中、アニメではわざわざ上条さん視点を入れ込んでいる。
これは丁寧な作りだな〜と感じざるを得ません。

「主人公交代」が綺麗

どうやら「超電磁砲」のみのファンってそれなりの数存在するみたいですね。
「禁書目録」を知らない人(読んだことも見たことも無い人)が居るみたいで。
そういう人にとっては、原作コミックのままだと呑み込めない部分が出て来るんじゃないかなと思う。
大切なクライマックスで、主人公である美琴では無くて、上条さんが前面に出て来る事になるので。

しかし、アニメではそれは無くなってました。
無くなっていたと思います。
上条さんの動きが最低限ではありますが、しっかりと描かれていたので。
本当に丁寧にアニメ化している今作ですが、こういう部分でも丁寧さを感じますね。

何ていうか、キャラの立ち位置の変化も綺麗になっていますしね。
主人公だった美琴が、いつの間にかヒロイン(助けられるお姫様ポジション)に移って、この作品では脇役の筈だった上条さんが、主人公の位置にどっかと座って。

で、また、こういう上条さんの視点を入れる事で、よりこの作品の面白さが浮かび上がりますね。

3つの視点移動が楽しい

「超電磁砲」って、原作「禁書目録」で描いた事件を別の角度から描いて、物語に奥行を与えようというのがコンセプトの一つにあるんじゃないかな〜と思ってます。
無いにしても、実際そういう一面があります。

この「欠陥電気編」も、美琴の苦しみ・絶望が描かれている部分が物語全体をより良いものへ昇華してくれてます。
上条さんの正義により高いカタルシスが生まれているから。
上条さんの「悲劇のヒロインである美琴と無暗に殺されていく妹達を救う絶対的なヒーロー」としての側面を強めているんです。
一方通行は、絶対的な悪として君臨しているという事ですね。
上条さんの視点ではこういう解釈になります。
分かりやすい言葉にすれば、「勧善懲悪」という形式が成り立っていた。

だけれど、そう単純なお話では無いよという面も描いている。
一方通行の視点で。

彼は当初「喧嘩」の延長線上という認識位にしか思ってなかったんでしょうね。
喧嘩で妹達を倒していけば、誰も自分に挑んでこない…無駄な争いをしないですむ生活が待っている…。
でもそうではなくて、殺戮だったと知った時。
実際に自分の能力で妹達の死を見た時の彼は、どんな心境だったんでしょうね。
一方通行の視点では、彼は単純な悪では無くて、彼なりの思惑・事情があるんだと分かります。

さて。
上条さんの視点を加えると、事件のメインとなる3つの視点が揃う訳です。
被害者(美琴)視点。
加害者(一方通行)視点。
目撃者(上条さん)視点。

ここで、改めて一方通行に焦点を当ててみますと…。
「禁書目録」の上条さん視点では本当に単なる悪人でした。
だけれど、一方通行自身の視点で、そうじゃない事が分かってきます。
本当の正真正銘の悪は、別の所にあるんだとも分かってくる。

では「超電磁砲」に於ける美琴視点ではどうか?
美琴は、実行犯である一方通行を決して許してはいないはず。
憎んではいるけれど、それ以上に彼のバックに居る者の存在を憎み、そして自分自身を憎んでいます。
上で「被害者視点」としたけれど、彼女自身は自分の事を被害者だとは思ってないでしょうね。

こうした想いと一方通行との圧倒的な力量差から、今回とある決断をしたのですが…。
それは次回で語られる部分なので触れちゃダメですね。

兎も角、こういう美琴視点で一方通行を見ると、また面白い。
倒したい悪である事は間違いないと思うけれど、そうじゃない面も大いにあるのかなと。
美琴の目的は、一方通行を倒す事ではなくて、実験を終わらせる事ですからね。
これは「上条さん視点」だけでは見えてこなかった面でしょうか。

視点を移動すれば、見えなかった事が見えてくる。
当たり前の事ですけれど、それを大いに楽しむ事が出来るような回だった気がします。

終わりに

一つの出来事を多角的に見れば見るほど、事件の奥深さが浮き彫りになってきます。
アイテムの麦野の言う「学園都市の闇の底」が少し見えてくる。

上条さん視点で「正義が悪をぶっ飛ばす爽快感」を味わうもよし。
一方通行視点を取り入れて、本当の悪とは何なのかとかそういう哲学染みた事?を考えてみるもよし。
色々な楽しみ方が出来るようになっています。

まあ、でも、一番の楽しみ方は、やっぱり美琴視点でしょうかね。
どん底にまで落とされ、自暴自棄になり。
そんな中、絶望の淵からどう助け出されるのか。
そういったカタルシスを楽しむ。

美琴視点で見ると、本当に泣ける物語になります。
次回、間違いなく僕は号泣しますw