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「とある科学の超電磁砲S」 12話:ミサカ妹と黒猫を識別するゴーグル

この記事は

「とある科学の超電磁砲S」12話の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

印象的な上条さんとミサカ10032号の会話

印象的な上条さんとミサカ10032号の会話がありました。
捨てられた黒猫に餌を上げようとしている所に出くわした上条さん。
外していたゴーグルを付け直した10032号の行為を巡って、ちょっとした問答がありました。

何故ゴーグルを付けたのかと追求する上条さんに対して、2度にわたって説明を拒む10032号。

このシーン、原作コミックには有りませんでした。
原作(「禁書目録」)にはあるんでしょうか?
アニメ「禁書」には無かった気がします。
あの黒猫自体は、「禁書」に出てきた仔猫と同じ猫な筈ですが…。

ちょいと、このシーンのミサカ妹の感情に関して考えてみます。

黒猫からミサカ妹の真意を考える

このシリーズには、黒猫がよくよく出てきます。
最初に美琴と妹が出会った時も黒猫が出てきました。
2人での初めての共同作業が、樹上から下りられなくなった黒猫の救出でした。

2度目が、今回のミサカ10032号と上条さんの再会時。
ここから上条さんが、本格的に事件に関わっていく事となります。
このもう少し先でも、黒猫(2度目と同じ仔猫)がちょっぴり出てきます。

で、黒猫に限らず、人から見て同種の動物の個体を区別する事って、非常に難しいですよね。
体型・大きさ・性別・色等から判別する事は出来なくないですが、基本的には皆同じに見えちゃいます。
例えば、数匹の黒猫をきっちりと見分けられるかといえば、僕には出来ません。
みんな同じに見えちゃうから。

そう言った意味では、黒猫とミサカ妹って同じなんですよね。
ミサカ妹も、みんな同じに見える。

勿論、正確に言えば黒猫とミサカ妹は違うという事は分かっています。
同一のDNAから生まれたミサカ妹は、文字通り見た目に差異がありませんけれど、黒猫達には差異がありますよね。
人間の目では、その差異が見抜けにくいというだけであって。

それは分かった上で…ですが。
上条さんからしたら、僕の考えと同じような感じなんじゃないかなと思います。
上条さんにとっては、美琴とミサカ妹の見分けが付かない。
勿論黒猫の見分けだってつかないでしょうし。

ただそれは、ミサカ妹達にとっては、不本意ですよね。
個の尊厳を踏みにじられた位には思うんじゃないかなと。

上条さんの何気ない一言。
「お前、妹の方か。ゴーグル無いとホント見分け付かねぇな〜」
これを聞いたから、10032号はゴーグルをしたのかなと。

黒猫の世話を上条さんに任せるから、ゴーグルを付けたというのもあると思います。
でも、それならそれを口にする事を拒む理由にはならない。
10032号が「ゴーグルを付けた訳」を話さなかったのは、「お姉さまと私は違う」という無言の主張だったんじゃないかな。

こう考えてみると、これは良い傾向に思えてきます。
他人と自分は違うという「個」を「己」を主張する行為は、自分の命を大切にする行為に繋がりそうだから。

そもそも、上条さんの言葉に反応したのも、美琴が切欠なのかもしれない。
妹達にとっては「唯一認めて欲しい存在」である美琴に、存在を否定されたばかりだから。

前にも似たような事書きましたけれど、自分のクローンを見た時の反応ですね。
オリジナル体から「消えてくれ」とか存在を否定するような事を言われると、クローンの方の気持ちとしてはどうなんでしょう?
答えは一つでは無いでしょうけれど、酷く傷つく事もあるんじゃないでしょうか。
ミサカ妹にとっては、まさに「傷つく事」だったのかなと。
少なくとも認めて欲しかった美琴に、否定されちゃったミサカ妹。
そんな時だったから余計に上条さんの言葉に「ミサカ妹という存在を否定された気分」になったのかもしれない。

SOSを叫んでいる気がする

幼い頃の美琴の思い出。
寝てる間に助けてくれる母親もヒーローもいないという美琴のモノローグが悲しい。
完全に絶望しちゃってますよね。

美琴も心の奥底で、ヒーローの出現を願っている。
これは、ミサカ妹も同じなのかもしれないなとも感じました。

ここでも黒猫が関わってくる。
10032号が捨て猫の行く末を心配する事は、何となく自分の運命と重ねているからな気もするんです。
成り行きに任せたままだと殺されるという捨て猫と自分達の運命を。
上条さんに黒猫を拾う様強く進言(命じるという感じを強く受けた)したのも、自分達を救って欲しいという顕れにも思えます。

終わりに

原作からのシーンとオリジナル(?)シーンの相乗効果で、ミサカ妹の想いが浮かび上がる様になっていた気が致しました。

美琴から存在を否定され傷ついた妹。
上条さんの言葉からも同種の想いを感じてしまい、ゴーグルを付ける事で個を主張してみた。
黒猫と自分の運命を重ねて、心のどこかで助けを叫んでいる。

人間は黒猫の言葉を理解出来ません。
猫ちゃんが一生懸命助けを叫んでも、なかなか気づいてあげられない。
でも、ミサカ妹は違います。
言葉にこそしてませんけれど、ゴーグルを付けるという行為から、SOSを上げ始めたのかなと。

妹と黒猫とを分けるゴーグルというアイテムのお話。
ただ殺されるだけの今までとは違う、些細な変化が起きているのかもしれませんね。
そんな変化を浮き彫りにしたような回に思えました。