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アニメな日々、漫画な月日

アニメ、漫画の感想・考察

「けいおん!」<「けいおん!!」<「たまこまーけっと」 拡大する世界観と比例しない話数

この記事は

「たまこまーけっと」の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

監督・山田尚子さん、キャラクターデザイン・堀口悠紀子さん、シリーズ構成・吉田玲子さん。
(正確には、堀口さんは「たまこ」ではキャラ原案も担当)
この女性3人が描いたオリジナルアニメ「たまこまーけっと」が終わってしまいました。
なんだかあっという間に終わってしまった印象の強い今作。

以前ツイッターでも呟いたことがあるのですが、1クールではじっくりと丹念に物事を描写するには時間が足らないと感じる事があります。
このアニメもまさしくそういうケースであったんじゃないかな。
最低限2クールは必要であったと感じます。

僕がそう感じた理由について、メインスタッフが同じ「けいおん!」シリーズと比較して書いていきます。

「けいおん!」を振り返る

2009年4月から2009年6月までTBSをはじめとするTBS系列28局中8局及び系列BSデジタル放送局BS-TBSにて、本編12話と番外編1話(全13話)が放送された。
DVD・Blu-ray Disc第7巻にはテレビ未放送の番外編(第14話)が収録された。

とまあ、簡単な紹介をwikipediaから頂きました。

このアニメの特徴は2点ですね。
1つ目は、少ない人物を限定された空間内を中心として描いた事。
主人公の平沢唯をはじめ、澪、律、紬、梓と軽音部のメンバー5人に焦点を徹底的に絞っていました。
その為、必然的に部室が舞台のメインステージに。

アニメ化する際良くあるのがオリジナルキャラを増やすという事。
これ良い面もあるのですが、悪い面も勿論あって。
悪い面は、下手するとメインキャラよりも目立ってしまう事…ですね。
折角作ったオリキャラに目が行きすぎて、焦点がぶれてしまい、描くべきメインキャラ達の掘り下げが不十分になってしまったり。
特に1クールだと陥りやすい点かなと思うのです。

が、「けいおん!」ではそれをしませんでした。
あくまでもメイン5人に的を絞っており、サブキャラである和や憂、純やさわ子の出番は最低限に抑えられていました。
これが功を奏したのか、たったの14話でしたが、メイン5人のキャラはとことん掘り下げられていたんですよね。

これって、アニメ「けいおん!」が成功した要因の一つだと思うんです。
うんと。
「けいおん!」は一般的には「日常アニメ」とか「部活アニメ」とか呼ばれるジャンルに属していて、ストーリー性よりもキャラクター描写に重きが置かれている作品であります。
勿論ストーリー性が蔑ろにされているという意味では無くて、どちらにより比重が割かれているかのお話です。

だから、キャラクターをとことんまで描く事に専念した「けいおん!」は、それだけで成功したようなもので。
そのキャラ達が多くの人に受け入れられた故の大ヒットだったのかなと思うのです。

話を戻して、特徴の2つ目は、作中の時間に関する事。
テレビ未放送まで含めて全14話で、2年という作中時間を網羅。
2年間をたったの14話で描く為、そりゃ濃密になりますよね。

部活を中心とした学校イベントを2年分です。
特徴の1にも繋がる事ですが、メインキャラ以外を描く余裕も無かったと思われます。
実際TV放送された本編12話を振り返ると、

話数 出来事
1話 入部
2話 ギー太購入
3話 中間試験&特訓
4話 夏合宿
5話 顧問探し
6話 学園祭
7話 クリスマスパーティー
8話 新歓
9話 梓入部
10話 夏合宿
11話 学園祭
12話 学園祭

となり、1年半を12回で駆け足で描いている事が分かります。
(残り2話で学園祭後〜3学期までを描いている)
部活関連行事が目白押しですよね。
メインキャラ=軽音部以外の活躍を描く事は時間的にも厳しかったという推測が立ちます。
唯一7話がメインキャラ以外に時間を割けそうな感じであり、実際憂や和、さわ子が多めに出演していたかな。


以上2点より、「けいおん!」では1クールという短い話数を考慮し、かつ、2年分(本編は1年半分)を描くという事もあり、メインキャラを描く事に絞って展開していました。
結果、唯達メインキャラの個性が強く打ち出たアニメとなっておりました。

「けいおん!!」を振り返る

同様にwikipediaより抜粋。

2010年4月より2010年9月まで、テレビアニメ第2期シリーズ『けいおん!!』がTBS系列全28局にて、2クールに渡って本編24話と番外編2話(全26話)が放送された。
DVD・Blu-ray Disc第9巻には未放送の新作番外編(第27話)が収録された。

「けいおん!」の2つの特徴に照らし合わせて「けいおん!!」も見てみます。

先ず1つ目のキャラ描写に関して。
第1期では、メインキャラに絞っていましたが、2期では焦点を大きく取っていました。
オリキャラであるクラスメイトを大量に投入したり、1期では出番の少なかった憂達にも当番回が周って来たり。
第5話「お留守番!」は1期時点では絶対に出来なかったエピソードであったと思います。

これが出来た背景としては、メイン5人のキャラクター性を1期で紹介し終えていたからというのがあるんではないでしょうか。

視聴者的にもメイン5人がどういうキャラなのか完全に掴めていて、だからこそ、それ以外のキャラ達の描写が増えてもすんなりと受け入れられた。
僕なんかはそんな感じでした。
これは当然1期も視聴済みという前提こそありますが、1期の強みを活用した点とも言えそうです。
オリキャラ投入の悪い面を出すことなく、良い面だけ作品に抽出した感じですね。

こうして世界観も1期より少しだけ広くなりました。
部室からクラス。憂や純を考慮すれば学校全体と見做してもいいかもしれない。
兎に角、少しだけ作品世界観が広がりましたが、問題無くキャラは描けていたという個人的な印象が強いです。

特徴2つ目の時間に関して。
こちらは1期とは逆。
たったの1年間の出来事を27話に亘って描かなければいけなくなりました。
使える話数が増えた上に、描ける時間が減ったのです。
1期の事を考えれば、余裕でまくりですよね。
これもオリキャラや憂達を描ける事に繋がっていたのだと推測します。
逆に言えば、メイン5人だけでは流石に持たなかったのかもしれません。


1期でメイン5人を描き切ったからこそ出来たキャラクターの増加。
1年の出来事を2クール掛けてじっくりと描けたという点もあり、ストーリー性を入れ込む事にも成功。
「けいおん!」というシリーズにより厚みを持たせる事が出来たアニメであったと思います。

「たまこまーけっと」

「けいおん!」、「けいおん!!」と同様の観点からこの作品を振り返ってみます。
1つ目のキャラ描写。
オリジナルアニメという事で、キャラクターに関する前知識ゼロの状態であるにも関わらず、今作は実に多くのキャラクターが登場していました。
それもそのはず、作品のメイン舞台が商店街になっていたからですね。
これは、「けいおん!!」の学校よりも"大きな"舞台です。

延べ人数こそ学校の方が多いかもしれませんが、出演させなければならない最低限の人数は商店街の方が多めになるんじゃないかな。
"近所の住人"ではなく"商店街の住人"です。
商店街にあるような店を複数出さないと商店街に見えないし、そうなるとその店に勤める人物が登場する事は必然。
南の国という海外まで登場させてしまい、本当に多くのキャラが出て来る事に。

結果どうなったかといえば、これだけ多くのキャラを描写するには12話は少なすぎたと感じました。
一通りどういうキャラなのかの紹介こそ出来ていて、その点凄すぎの一言ですが、それでも描写量に差が出ていたかなと。
たまことかデラとか、極一部のメインキャラはそれなりに掘り下げてありましたけれど、その他のキャラが弱かったかな。

例えば、ユズキ君。
彼の事をもう少し描いていれば、あんことのエピソードもより深まっていたと思うし。
例えば、富雄(アフロの豆腐屋主人)とさゆり(「うさ湯」の看板娘)。
この2人の事ももっともっと描いていれば、富雄の失恋やその後の彼の決意がより感動的な物になっていたと思うし。

まあ、彼らは皆脇役なので、そこまでの描写はいらなかったとも思いますけれど、たまこの友人3人(みどり、かんな、史織)はもう少しだけ深く突っ込んで描いて欲しかったかな。
少々メインとサブの境目が曖昧に感じたので。

この作品もどちらかといえばキャラクター描写に重きを置くべきジャンルに属する作品だったかと思います。
商店街を舞台にしてしまった以上、キャラクターが増えてしまうのは自然の流れで…。
それにしては1クールは全然足りなかったな〜という感じでしょうか。

2つ目の時間に関しては、12話で1年。
「けいおん!」より余裕があって、「けいおん!!」よりかは無い感じでしょうか。
ただ、商店街(餅屋)のイベントは学校よりも少なく出来るので、1年で12話というのは適切と言えるのかもしれません。
キャラクター描写に割ける余裕は作れそうです。
1年という長い期間にするのではなく、一つの季節に絞ってイベントを少なくし、その分をキャラ描写に振っても良かったのかな〜…と少し感じますね。

終わりに

最終回、たまこが「商店街」とそこに住む人々をどれだけ愛しているのかが分かる、とってもほっこりするエピソードとなっていました。
僅か12話で、キャラ描写も"浅く広く"しか出来なかったと思っていたのに、しっかりと「良い話だな〜」と思えたのは、それでもキャラクターが描けていた証左とも言えそうです。

ただ、やっぱりもっともっと時間を掛けた上で、この最終回を観たかったとも思えました。
たまこが母親の事をどれだけ愛していたのか。
その死にどれ程悲しみ、その悲しみを商店街の皆が温かく包んであげたのか。
キャラを描写すればするだけ、今回の最終回は素晴らしい回になっていたんじゃないかと思ったのです。

「けいおん!」は少ないキャラで、舞台も小さかったからこそ1クールで事足りた。
「けいおん!!」は、1期でメインを描き切ったからこそ、キャラを多く、舞台を大きく出来た。
「たまこ」もまた、キャラを多く、舞台を「けいおん!!」より大きくしたのですから、話数もそれに比例した分だけ必要だったのではないでしょうか…。
昨今の深夜アニメでは3クール以上は難しいみたいなので、せめて2クールは欲しかったなと。

まあ、言っても仕方ない事ですが…。
デラも帰らずに残った事ですし、近い将来に2期をやって欲しい作品には違いないですね。