アニメな日々、漫画な月日

アニメ、漫画の感想・考察

読み手の変化によって、見え方が様変わりする「よつばと!」という名作

この記事は

「よつばと!」の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

「よつばと!」の感想を巡っていてで漫画評論家(ブロガー)・紙屋高雪さんの感想に当たりました。
もう3年も前。2009年12月の記事なのですが。

紙谷研究所:「子どもの漫画であったという当たり前の事実 あずまきよひこ『よつばと!』9巻」

この記事は、以下のような感じで締められています。(原文ママ)

 子育て世代のなかで、というかぼくの保育園の父母の間では、この漫画はまったく知られていません(まあ、漫画自体読まない父母が多いのですが)。「子育て層が読む漫画」としてもっとそこに浸透してもいいと思うのになあと改めて思った今日この頃です。

 こうした「読み」自体はそれほど珍しいものではないかもしれません。アマゾンのカスタマーズレビューを拝見すると、この漫画を「子育て漫画」だというふうに受け取っている層は、一定数たしかに存在します。しかし、ぼくはつい最近までその視点でこの漫画を読めなかったのです。

 自分の「読み」が数年前、いや1年前とは大きく変わっていることを実感しました(ヒマな人は、下記のぼくのレビューと比べてみてください)。それはこの漫画の味わい深さかもしれませんが、同時に読み手の成長によって大きな変化をこうむる、一つの典型的なケースだということができるかもしれません。

この最後の一文「読み手の成長によって大きな変化をこうむる、一つの典型的なケース」にひどく共感しましたので、それについて書いてみます。

僕の中の「よつばと!」評の変化

「読み手の成長によって大きな変化をこうむる」。
これは、誰にでも経験があるんじゃないかなと思います。
作品に飽きたとかそういう事では無くて、読み手個人の趣味嗜好の変化によって、作品に対する感想が変わっていくというか。
僕にとっての「よつばと!」って、まさしくそういう作品だったりします。
ただし、「成長」というのとは違いますけれど。

僕がこの漫画に初めて出会ったのは、大学生時代でした。
当時行きつけだった古本屋でパラパラっと1巻を立ち読みしたのです。
既にその時「あずまんが大王」は好きでしたし、今作が世間的にヒットしてもいました。
どんなものかという興味で、手に取って見たのですが…。
正直面白いと思えなかったのです。

先ず、非常に非常にのんびりとした日常が描かれている事が一点。
何も起こらない平和な1日を何ページも掛けてじっくり描くという今作の特徴が理解出来なかったのです。
まだまだ分かりやすい派手なバトル漫画とかが好きな時期だったんですね。
日常系の作品や、癒し系の作品には、食指が動かなかったのです。

2点目はよつばそのものが…。
現実の子供を見ても「かわいい」とか思えないでいた当時の僕。
実に子供らしい子供として描かれているよつばにも同じように「かわいい」なんて感情は持てず。
彼女目線の物語にどうしても馴染めなかったのです。

「よつばと!」への僕の第一印象は、よろしくありませんでした。
世間的にヒットはしていても、自分の趣味には合わないなという結論に至ったのです。

さて。数年後。社会人になると、心が荒み始めました(笑
荒んだというのは大袈裟ですけれど、まあ、余裕が消えたのは事実ですね。
バトル漫画のような激しさよりも、まったりとした癒しを好むようになっていった。
ちょうど「ARIA」等に嵌っていったのもこの位の時期だったかな。(「ARIA」はギリギリ学生時代ですが)

だからか、のんびりとした空気を感じれる作品に多く手を伸ばしました。
その中に「よつばと!」が有った訳です。
よつばとの再会です。

初対面では、僕からごめんなさいしてしまったよつばに、「僕が間違ってました」と土下座をした瞬間でした。

もうね、この漫画の世界観が当時の気分にどんぴしゃ。
スローで優しく、まったりした空気にどっぷりと浸った訳です。
あっという間に既刊を買い集め、完全な掌返しですよ。
「この漫画、最高!!」とか思い始めたのですから。

でも、でもですね。
それでもまだ、よつばを可愛いとは思えていなかったのは事実。
「人によっては、よつばがウザく見えて、それだけで読むのを拒むんだろうな」とか考えちゃう位でした。

12巻の感想

12巻を読みました。
どうしたことか、よつばが可愛く見えるんです。
別に僕の環境が変化したとかそういう訳では無いです。
子供が出来た?はっは。恋人すらいませんよ。
心境だって特に変わってません。相変わらず現実の子供さんを見ても、何とも思わない。
それと、可愛いと言っても「子供や愛玩動物等を表する場合の可愛い」であって「異性として」では無いです。
念の為。

だから、何故急に可愛く見えるようになったのかは分からない。
分からないですが、一般的にはとっくに「お父さん」になってる年齢になったからかもしれません。
分かりませんけれど。

第78話「よつばとあおいろ」から第79話「よつばとヘルメット」で、初めてかな。
可愛いと思えたのは。

ちょっと時系列から整理。
明確な描写が無いので何とも言えない事ですが、第77話「よつばととらこ」から第79話は同じ1日なのかもしれません。
もしも、この3話が同一日として作品を見てみると、よつばのこの日のタイムスケジュールは大体こんな感じになるかと思われます。

話数 時間帯 行動
77 午前中 綾瀬家でお留守番。とらに時計の読み方とりぼんの結び方を教わる
78 午後 青ペンキで家のテーブルを塗り替えちゃう。手や床がペンキだらけ
79 夕方 夕食の買い物。ヘルメットを買ってもらい、ペンキを剥がす

それぞれ別の日を描いているのかもしれませんが、そうだとしても連日3日間を描いているとした方がすんなりします。

さて、78話でペンキで悪戯(本人にその自覚が無い為、悪戯とは呼べませんが)をしてしまったよつば。
流石に悪い事をしてしまったと思ったのか、青ざめながら
「よつばはいまからおこられますか?」
と、とーちゃんに問います。
とーちゃんは怒りこそしませんでしたが、「手に付いたペンキはもう一生取れない」と嘘を吐いてお仕置きします。
これにショックを受けて涙目になるよつば。

可愛いです。
子供にとって、親を怒らせることって何にも代えがたい恐怖ですよね。
少なくとも僕はそうでした。
怖くて怖くて仕方なかった。
よつばもこれ以上"罪を重ねない様に"と、つま先立ちなどして、床にペンキが付かないよう健気な姿勢を見せます。
そういうのがフラッシュバックする程、よつばに感情移入出来たシーンでした。

さてと本編に戻り。
本当にショックだったのでしょう。
続く79話でも、手が青い事を指摘される度に落ち込んだり、怒ったり。
大きなリアクションを取って感情を表現します。
手を洗っても落ちないと再度落ち込んだりします。

これを見る限り本人は相当悪い事をして、天罰を喰らったくらいに思っていたはずです。
実際ペンキが落ちると「よつばは…やりなおせる!!」と、刑務を終えた元囚人の様な気勢を上げます。

そんな状態にも関わらず、ヘルメットを買ってもらえると知った時の第一声が

これですよ?
悪い事をした証拠を手の中に握っているくせに、どうしてこんな言葉が出て来るのか。
驚愕です。
可愛いです。

こういう思考こそ「子供らしさ」の由縁なのでしょうね。
僕は子供を育てたことも、親戚縁者にも…居るけれど、殆ど会ってないのでやっぱり実際の所は分からない。
けれど、よつばを最も子供らしいと思える一面だと個人的には思えてなりません。

79話が締めとなります。
ここでは、なんだろう。
よつばの言動というより、とーちゃんの機転に惚れました。

エタノールで、青ペンキを落とすとーちゃん。
よつばが作ってしまった青い足跡を消していきます。
その中で一つだけ消さないで残すんですよね。
記念に。

途轍もなく愛おしくなりました。
よつばの成長の記録を残したかったんでしょうね。
悪戯をただの悪戯にしないとーちゃんは素敵です。

この3話のよつばが、何故か唐突に可愛く思えました。
何故かは分かりませんが、僕の中で何らかの変化が起こったのでしょうね。
だって、よつばがこの3話で行った事は、これまでの日々と全く違いが無く、彼女らしい日常をいつも通りに過ごしていただけだから。

まとめ

ある一つの作品に向ける感想が、読み手の年齢によって変化していくなんてことは、何も珍しい事ではありません。
少年漫画は少年が最も面白いと感じられるように作られているし、少女漫画も青年漫画も然り。
それぞれの漫画の主ターゲットとなる年齢層に最も響くよう描かれている事が殆どだから、ターゲット層から外れてしまうと、とたんに興味を失くしてしまう事もあります。

でも、そうじゃない漫画もあるんですね。
人間は、年齢によって好みが変わっていきます。
色々な要因があるのでしょうけれど、経験や出会いを通して「自分の中に無かった知識や思考」を蓄積する事で変わる事もまた事実ではないかなと考えます。

僕が出会って来た多くの人。
当然の如く結婚したり、子供が出来たりというのも珍しくなくなってきて。
それまで結婚のけの字も考えた事の無かった僕ですが、ちょっと焦り始めて来ましたw
こういった心境の微妙な変化も関係しているのかな?
若しかしたら心のどっか奥底で、子供が欲しいとか思っている‥のだろうか?
分からないですが、12巻で初めてよつばを可愛いと思えたのは事実。

読み手の変化によって、感じ方が変わってくる漫画。
そういう作品は確かに存在していると思う。
その代表作が僕にとっては、「よつばと!」なのです。

よつばと! 12 (電撃コミックス)

よつばと! 12 (電撃コミックス)

結婚か…。
まあ、先ずは恋人探しからしないといけない訳ですけれどもw
うん。無理ゲー過ぎる。