Mangaism

アニメ、漫画の感想や考察を書いてます

変わらない事への安心感。「ひだまりスケッチ×ハニカム」

この記事は

「ひだまりスケッチ×ハニカム」の記事です。
ネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

第4期となる「ひだまりスケッチ×ハニカム」が遂に始まりました〜。
第1期放送から実に5年半。
そんな長期間、4コマ漫画である原作が連載し続けている事も凄い事ですが、アニメシリーズが4期目を迎えたという事実もまた凄い。

同一シリーズで、3期以上作られているアニメがどれだけ少ないか。
ざっと思い描くだけで、この凄さが推し測れるんではないでしょうか。

今回はそんな「ひだまり」アニメについて。

変わらない事の喜び

これは過去僕も何度か記事に書いてきたような気がしますので、似たような事をまた書いてしまうかもですが…。
日本人は良くマンネリを好む種族であると言われているようです。

漫画やアニメに、このマンネリの概念を当て込んでいくと、これが許されるジャンルとそうでないジャンルというのがあるかと思います。

基本的に漫画等創作物に対しては、マンネリは読者(視聴者)から忌み嫌われていますが、特にストーリーを魅せる事に特化した作品であればあるほど顕著になる傾向ではないでしょうか。
遅々として進展しなかったり、ループ感を覚えるだけだったりすると、作品の評価は際限なく下がってしまう。
そういう印象を強く持っています。

これらとは逆に「変わらないからこその良さ」…マンネリであって欲しいと思われているジャンルもあると考えていて、それが所謂「日常モノ」と呼称される作品群だと思っています。
「ひだまり」って、この定義にガッツリ当て嵌まる作品。そう僕は信じている訳です。

1期からリアルタイムで見ていて感じるのは、「変わらない事への安心感」なんですよね。
キャスト。
音楽。
演出の方向性。

これら「目に見える部分」が変わりなく、同じでいてくれる。
それに対する安堵が半端無い。

とはいえ、細かく見ていくと、実は変わっています。
キャストで言えば、養護教諭である桑原先生。
担当した声優さんが、シリーズを重ねる毎にやむを得ぬ事情で交代を繰り返し、現在の桑谷夏子さんで3代目。
BGMだって、毎回新規で作られている事でしょうし、キャラデザも細かく見てみると変わっている。
キャラデザに関しては、ドンドン原作絵に近づいていっている印象が強いです。

演出の方向性に関しては何とも言えないのですが、少なくとも大きく変わっている事は無さそうかな。
ここは良く分からんというのが正直な部分。

とまあ、全く一緒という事は出来ないけれど、それでも「変わっていない」と思えてしまう程振り幅が小さい事は僕の中では事実。
変わらない事に対する安心感は確かに存在するのです。

変わる時は終わる時という認識

このような感覚は何も僕だけでは無いんだなと実感した出来事が昨年末にありました。
僕はこの作品をアニメから入り、原作はコミックスで追っている身なのですが…。
現在発売中の最新6巻の内容では、ヒロと沙英が卒業を意識し、進路に思いを馳せるような内容が多くなっていました。
この新刊に収録されたお話が、雑誌で連載されていたのが去年の5月(6月号)まで。
昨年末というと、この「卒業」へ向けての雰囲気が更に強まっていた頃だと想像されます。(実際はまだ読めていないので不明です。)

そんな11月頃に流れたのが「まんがタイムきららカリノ」の創刊とそこに蒼樹うめ先生の新作漫画の掲載が発表されたニュースです。
この報は瞬く間にネット上で拡散され、様々な憶測が飛び出していました。

その中で出て来た憶測の一つが「ひだまりスケッチが終わってしまうんじゃないか」というものです。
これは、ただの憶測と軽く見て看過してはならない重要な憶測であると思っています。

何故このような憶測が出回ったのかを検討するべきではないかなと。

勿論「新作漫画連載」⇒「既存作は終了」という単純な図式から導き出されたものであるというのも、一つの事実であると思うのです。
けれど、それだけではなく、連載を追っていた「ひだまり」ファンが、終了の臭いを作中から嗅ぎ取っていたから…とも考えられるのではないでしょうか。

つまりは、「ヒロと沙英というレギュラーが抜ける事(卒業する事)で、連載自体も終わるのではないか」。
そう考えたファンが確実に居たんだと思うのですよ。

これってよくよく考えると不思議な思考。
主人公でも無いキャラクターが卒業したからといって、作品まで終わらせる道理があるのか?という疑問がどうしても生じるから。
この作品の主人公はゆのであり、彼女の学園生活を基盤として描かれている作品なのだから、彼女が卒業するまでは(打ち切り等々を考慮しなければ)終わらない。
そう考えるのがベターであると考えられ、故に上記のような思考経緯は疑問視されてもおかしくはない。

それなのにファンの一部の方は、終了を予測してしまった(と思われる)。
これって、「作品が変化する事」自体を「作品そのものの終わり」だと認識している何よりの証左ではないかな。
新入生2人・乃莉となずなの加入ですら一部からは疑問視されていた事もひっくるめて、多くの読者は「変わらないでいて欲しい」と願いつつ作品に触れていると推測できます。

作品としても、この読者側の思いは重々承知しているのか、乃莉、なずなの加入以外では、大きな変化を見せていません。
ゆったり・まったり流れる悠久にも似た時の中で、平和な日常を過ごす女子高生の生活を優しい筆致で描いている。
作品からも「変わらない日常」が読み取れる作風なのですね。

だからこそ、「作品が変わる時」。レギュラーキャラが卒業してしまう時、作品もまた終わってしまうと考えてしまった。
結果としては現在も連載中ですし、ファンの杞憂のまま終わった件ではありますが、確かにファンには「変わらない事」を求める層が確実に存在していそうです。

この作品には、「変化」は求められていないんですよ。
そう言った意味でも、全てに変化を付けないアニメの姿勢は、素晴らしいと思うのです。

変わらない音

変わらない事。
何よりも嬉しいのは、音に関してですね。
確かに新録のBGMというのは存在している筈。
でも、1期の頃から使い続けている曲もあり、それがいつも変わらず同じようなシーンで当たり前のように掛かっている。

それが「ひだまりスケッチ」を見ているんだなという実感を強めてくれる。

歌に関しても、変わらない事がとっても良い!!
いや、当然楽曲自体は変わってますけれど、歌っているアーティストは不変。
OPはメインキャスト4人(4期から6人)だし、ENDはmarble。

元気いっぱいで楽しげなOP曲と優しいメロディに乗せた耳心地の良い声でホッとなるEND。
方向性を変えない事で、変化を付けない構成には嬉しくなります。

そしてメインキャスト勢。
上にも挙げたように残念ながら桑原先生こそ変わってますが、他のキャストは一緒。
「ハニカム」出演が危ぶまれていたヒロ役の後藤さんも続投してますし(但し、1話のお声を聞いた限りだと、やはり無理をしていそうで何とも…。)、変わらない安心感はここからも得る事が出来てます。

人の印象と音はかなり密接な関係にあると個人的には思っていて。
これが変わらないだけで、同じ気持ちで見続ける事が出来る。
僕の中では重要な要素ですね。


「ひだまりスケッチ」。変わらないからこそ安心して見続けられるシリーズ。
常に変化が求められる現代社会に於いて、こういう作品が1つくらい今後もあって欲しいな。


そうそう。強いて変わった点と言えばたった一つかな。
蒼樹うめ先生の演技力。

だんだん上手くなっているのでw